疫学調査

遺伝性ポルフィリン症に関する全国疫学調査(一次調査)結果報告

 

 

         研究分担者 川田 暁 近畿大学医学部皮膚科教授

         高村 昇 長崎大学医歯薬総合研究所教授

                 研究協力者 川原 繁 近畿大学医学部皮膚科准教授

 

 


A.研究目的

従来、わが国における遺伝性ポルフィリン症の疫学調査は行われたことがなく、患者数、臨床型、重症度、予後などについては不明であった。そこで、今回、我々は遺伝性ポルフィリン症の6疾患、すなわち急性ポルフィリン症(急性間欠性ポルフィリン症、異型ポルフィリン症、遺伝性コプロポルフィリン症)と皮膚光線過敏症を呈する皮膚ポルフィリン症(先天性赤芽球性(骨髄性)ポルフィリン症、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症)について、全国の患者数および患者状況の調査(一次調査)を行った。

 

B.研究方法

対象疾患は、目的で述べた6疾患とした。我が国の内科、皮膚科、および小児科を標榜する全病院の中から、「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル第2 版」(2006 8 月 厚生労働省難治性疾患克服研究事業 特定疾患の疫学に関する研究班)に示された方法によって抽出した医療機関に対して、200911日から20091231日までに診療を行った調査対象6疾患の診断基準(案)(遺伝性ポルフィリン症の全国疫学調査ならびに診断・治療法の開発に関する研究班作成)、および患者数を問う調査票を送付した。回答された調査票を元に、上記マニュアルによりわが国における遺伝性ポルフィリン症患者数を推定することとした。

(倫理面への配慮)

 疫学研究に関する倫理指針(文部科学省、厚生労働省)を遵守して実施した。一次調査票の回収には、個人情報保護シールを同封した。

 

C.結果

抽出された医療機関は、内科982、小児科846、皮膚科781であり、それぞれの一次調査票の回収率は内科37.1%、小児科55.0%、皮膚科51.5%であった。

調査票の集計の後、全国疫学マニュアルの計算方法に基づいて推定患者数を計算した結果、急性間欠性ポルフィリン症12.1人、異型ポルフィリン症7.1人、遺伝性コプロポルフィリン症2.8人、その他の急性ポルフィリン症が13.5人となり、急性ポルフィリン症の合計は35.5人であった(図1)。一方、先天性赤芽球性(骨髄性)ポルフィリン症1.3人、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症109.1人、晩発性皮膚ポルフィリン症62.1人となり、皮膚ポルフィリン症の合計は172.5人であった。したがって、ポルフィリン症全体では、208.0人であった。

 

 

 

 



図1 急性ポルフィリン症の推計患者数の内訳


 図2 皮膚ポルフィリン症の推計患者数の内訳

 

 

D.考察

 本研究により、昨年1年間に全国の医療機関を受診したポルフィリン症の推計患者数が明らかにされた。このような全国規模の疫学調査は過去に例がなく、わが国におけるポルフィリン症の実態を解明する上で、有意義な資料となると考えられる。

 今回の集計では、その他の急性ポルフィリン症と診断された症例が数例報告された。急性ポルフィリン症の主な3型は、類似した臨床像と検査所見を示すことがあり、正確な診断は、しばしば困難とされ、遺伝子検索が必要なことも珍しくない。今後、より簡便な診断方法の開発が必要と考えられた。

ポルフィリン症患者は、診断確定後継続的に医療機関を受診していないことがあり、今回の調査のように調査期間を1年間に区切った場合、得られた推計患者数は、必ずしもわが国におけるポルフィリン症の有病率を表すものではないと考えられる。わが国におけるポルフィリン症患者の実態をより正確に明らかにするためには、複数年度において疫学調査を繰り返し行うことが必要と考えられた。

さらに、今後に予定している二次調査を行うことにより、各ポルフィリン症患者のより詳細な実態、その病態、予後等が明らかになると考えられた。

E.結論

 今回の疫学調査により2009年の1年間に医療機関を受診したポルフィリン症の推計患者数が約208人であることを明らかにした。

 

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