皮膚ポルフィリン症の予防と治療

皮膚ポルフィリン症の予防と治療

 

東京慈恵会医科大学附属第三病院皮膚科 上出良一

 

1)骨髄性プロトポルフィリン症

患者指導

 皮膚症状と肝障害の予防には遮光が最も重要である.光線過敏症状を示すポルフィリン症の作用波長は,ポルフィリン体の吸収スペクトラムである405nmをピークとしてUVA320-400nm)の長波長側から可視光線領域にまたがる(図1).現在市販されているサンスクリーン剤はUVBの遮断力は強いが,UVAの遮断力は十分ではなく,可視光線の遮断は全くできないためポルフィリン症における光線防御に余り有効ではない(図2).更にサンスクリーン剤を常用するとUVB遮断によりタンニングが得られなくなり,色白となってかえって光線感受性が高くなる.従って帽子,衣類(長袖・長ズボン),手袋などによる物理的遮光を中心とするのがよい(図3).屋外での水泳の際にはラッシュガードを着用する.

 光線防御の程度は普段の赤血球中プロトポルフィリン値を参考にする.2000μg/dlRBC以下の場合は,光線過敏症状はさほど強くないため,日常生活ではむしろサンスクリーン剤を常用せず,光線過敏の初期症状であるピリピリした灼熱感が生じたらすぐに日陰に入るという生活態度で過ごし,ある程度サンタンを得ておく方が,QOL上有利なことが多い.

赤血球プロトポルフィリン値が2000μg/dlRBC以上の高値のものでは,衣類による防御に加え,PA+++のサンスクリーン剤,あるいはカバーマークなど可視光線もある程度遮断できる遮蔽化粧品も併用して厳重な光線遮断を要する.日焼けサロンは絶対的に禁忌である.

幼児期は保護者が光線防御を実施するが,成長に伴い学校などでの屋外活動が増え,また友人とのつきあいなどで光線防御を嫌い,徹底しないことがある.過激な日光曝露だけは注意し,普段はあまりうるさく言わずに時期を待つことも必要となる.成人期以降は比較的自己判断での遮光が可能となる.

最も注意すべきことは不用意に急激大量,あるいは連日日光を浴びると,溶血した赤血球から大量のプロトポルフィリンが漏出し,肝臓に蓄積して急性肝不全を生じることがあり,3,000μg/dlRBC以上の重症例の場合,大量の日光曝露で急性肝不全となり,また慢性的には肝硬変となり死に至ることもあることを説明し,光線防御の重要性を認識してもらう.

 

治療

 発赤腫脹などの急性皮膚症状に対しては,直ちに冷水で冷やし,副腎皮質ステロイドホルモンで炎症を抑制する.

ポルフィリン体の光化学反応で発生する一重項酸素の消去と色素による光線防御を目的としてβカロテン(60-180mg/日)内服が古くより推奨されているが,食品添加物であり,薬剤として入手できない.βカロテンを多く含むニンジンなどの緑黄色野菜の大量摂取が晩発性皮膚ポルフィリン症に有効であったという報告があり,本症でも試みて良いと思われる.海苔はカロテン含有率が食品中最も高い.活性酸素種の消去のためビタミンC,ビタミンE,システイン内服が有効との報告がある.

皮膚のタンニングと表皮肥厚により光線防御能を高めるためPUVAnarrow band UVB(311nm)も有効とされる.

最近,角質を褐色に染めるジヒドロオキシアセトンが有用との報告があり,白斑用のダドレス®GRAFA LAB)や化粧品のセルフタンニングジェルなどの利用が考えられる.毎日塗布していると角層が着色してくるが,中止すれば2週間程度で角層とともに脱落する.

肝障害に対してはプロトポルフィリンの過剰産生抑制(洗浄赤血球輸血,ヘマチン投与),胆汁中排泄の促進(ウルソデスオキシコール酸),腸肝循環の抑制(コレスチラミン)などが行われる.高度の胆汁うっ滞で肝不全に到った場合は肝移植の適応となる.貧血に対する鉄剤の投与は急激な症状悪化をもたらすため禁忌である.貧血には輸血で対応する.

 

遺伝相談

遺伝相談に関しては無症候性キャリアが存在するため,家族の遺伝子解析が重要である.特に日本人はIVS3-48C を持つ頻度が高いので,無症候性キャリアが患児を得る確率は理論上欧米人より高いことになる.キャリアと配偶者の遺伝子変異やIVS3-48T/C多型の遺伝子型を調べておくことで,出生した児の遺伝子診断結果を見て早期に光線防御対策を始めることが可能になる.

 

社会的支援

患者会として,全国ポルフィリン代謝障害友の会「さくら友の会」がある(ホームページhttp://www.sakuratomonokai.com/).

 

2)晩発性皮膚ポルフィリン症

患者指導

光線過敏症状は骨髄性プロトポルフィリン症と比べ余り高度ではないが,慢性的な皮膚障害により皮膚は脆弱となり,軽度な外力で容易に皮膚剥離,びらん,水疱を形成し,後に瘢痕を残す.色素沈着,多毛も生じる.発症惹起または増悪因子としてアルコール,薬剤が挙げられているので,禁酒し,肝障害を招く薬剤摂取には十分注意するよう促す.

 

治療

肝臓への鉄の過剰蓄積はウロポルフィリンデカルボキシラーゼの活性を阻害するため,瀉血が有効である.1-2週毎に250-500mlの静脈血を除去し,Hb10-11g/dl,血清鉄50-60μg/dlに到るまで通常3-6カ月間施行する.効果は1年以上持続するが,再燃した場合再度瀉血を行う.

 腎不全で貧血を伴う例ではエリスロポイエチン投与が,またC型肝炎合併例ではインターフェロン療法が試みられているものの,結果は一定しない.

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