診療

婦人科悪性腫瘍婦人科良性腫瘍不妊内分泌周産期女性のヘルスケア当科でおこなっている臨床試験診療実績

女性のヘルスケア

産婦人科学の4つ目の新しい柱として、女性医学(女性のヘルスケア)が注目されています。平成26年11月に正式にサブスペシャリティとして認定されました。
女性医学とは、「女性のQOL(生活の質)の向上を目的に、女性に特有な心身にまつわる疾患を、主として予防的観点から取り扱う産婦人科の専門領域」と定義されます。例えば、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群であった女性は将来、そうでなかった女性に比べて高頻度で2型糖尿病や高血圧症になることが知られており、出産後も将来に向けて生活習慣の見直しが必要となります。
女性の各ライフステージにわたる健康問題を扱うので、周閉経期から老年期にかけての心身の変化に対応する更年期医学だけでなく、初経から性成熟期にかけての諸問題を扱う思春期学や、骨盤臓器脱をはじめとする女性下部尿路症状、脂質異常症や骨粗鬆症の予防、性機能障害、感染症、月経に伴う諸症状などかなり幅広い分野をカバーしています。少子化・高齢化による疾病構成が変化し、治療から予防へ医療のパラダイムシフトが起こっていることからも、今後さらに女性医学のニーズが高まっていくものと考えられます。

腹腔鏡下仙骨腟固定術について

1.はじめに

当院では、患者さんへ最良の治療を提供するとともに、より良い治療を開発し、導入するための努力を行っています。今回ご提供する手術は、当院では主に良性疾患に対して積極的に行っている腹腔鏡手術を、子宮脱の患者さんに対しても施行するというものです。
腹腔鏡下仙骨腟固定術という手術ですが、まず子宮の上部を切断し、腟にメッシュを留置し、仙骨と固定する手術です。今回の手術の施行は、先進医療という形でしか行っていませんでしたので、「近畿大学医学部倫理委員会」で審査され承認を受けて行っておりましたが、平成28年4月より「腹腔鏡下仙骨腟固定術」という名称で保険収載されましたので、現在は保険診療で行っております。

腹腔鏡下手術とは

2.子宮脱の治療について

子宮脱の治療法は、従来腟式手術の腟式子宮全摘術、前後腟壁形成術を行っていましたが、術後再発することがたびたびありました。
そこで2004年にフランスで開発された再発率の少ない腟式におけるメッシュを用いた手術に変わってきていました。メッシュ手術は、2010年に日本でも保険適用となり、急速に普及してきました。しかし、腟式のメッシュ手術は大量出血、術後の尿管閉塞・膀胱あるいは直腸へのメッシュの迷入等の重篤な合併症の報告も多くみられ、現在米国において、その安全性についての注意が喚起されているようになりました。
一方、1950年頃に開発された開腹手術の仙骨腟固定術という手術があり、お腹からメッシュを挿入し、背骨の部分に釣り上げる手術で、再発の少ない優れた手術でありました。その後腹腔鏡の発展とともに1994年に腹腔鏡による仙骨腟固定術が開発されました。開腹手術と腹腔鏡手術の仙骨腟固定術を比較し、両者の成績(再発率や合併症など)に差がなかった事から、より低侵襲な術式として腹腔鏡下仙骨腟固定術が普及しはじめました。また、腟式によるメッシュ手術の注意喚起がされて以降、仙骨腟固定術がますます注目されるようになりました。日本においては、国内で4施設のみが高度先進医療として行っていましたが、その後平成28年4月より保険診療で行っております。

腹腔鏡下手術とは

3.腹腔鏡下仙骨腟固定術について

腹腔鏡下仙骨腟固定術の術式の特徴は、まず子宮上部切断術を行い、腟管を剥離し、メッシュの尾側端を留置・固定し、頭側端のメッシュを岬角前面の前縦靭帯に吊り上げ固定する手術です。腹腔鏡手術では、おへそや下腹部に5mmから1cm程度の小さな傷が計4個ほどできるだけです。個々の傷が非常に小さいため、傷の痛みは少なく、早期の体力回復、早期の社会復帰が望めます。術後癒着や術後の腸閉塞(イレウス)も開腹術に比べて少なく、体の負担は軽微です。今回行う腹腔鏡下仙骨腟固定術はフランスやアメリカでは非常に多数の手術が行われています。

腹腔鏡下手術とは

4.期待される治療効果および予測される副作用

腹腔鏡手術により、術後の創部の痛みが少ない、退院・社会復帰が早くなる、腸管運動の回復が早い、術後腸閉塞が少ない、免疫力の低下が少ない、手術創が小さく目立たないなどの利点が期待されます。また再発率も従来の手術と比べ低くなると予想しています。デメリットとしては、手術時間が長くなる、他臓器損傷(膀胱、尿管、腸管など)、不測の出血、深部静脈血栓症および塞栓症、縫合不全、術後ヘルニアなどが起こることがあります。これらは、腹腔鏡手術に特徴的なものもありますが、開腹手術、腟式手術でも同様に起こりうることがあります。この腹腔鏡手術をお受けにならない場合、従来の腟式手術や開腹による手術を受けていただくことができます。

5.臨床研究責任医師の氏名、職名、連絡先

近畿大学医学部産科婦人科学教室
大阪府大阪狭山市大野東377−2
電話番号 072-366-0221
教授 松村 謙臣、 医学部講師 小谷 泰史