実習マニュアル

免疫学実習 1

赤血球凝集反応による抗体の検出

目的

 Rh式血液型抗原不適合における抗Rh抗体の検出、ABO式血液型の判定、あるいは感染症の血清学的診断法に血球凝集反応が用いられている。この実習ではハプテンであるTNP (Trinitrophenyl)基をヒツジ赤血球(SRBC)に結合させたものと抗TNP抗体を用いて、血球凝集反応の基礎を体験するとともに、ハプテンとキャリアーに関する知識を確認する。

原理

 SRBCの表面に化学的にTNPを結合させたものに、TNPに対する抗体(IgM)を結合させると血球凝集が起こる。また、TNPに対する抗体がIgGの場合は、さらに抗IgG抗体を加えることにより血球凝集が起こる。

準備

 各グループのテーブルに用意してあるもの:

マイクロピペット (25μlに設定できるもの) 1本
マイクロプレート (丸底、96穴) 2枚
マイクロピペット用チップ
抗TNPモノクローナル抗体 (マウス IgM ) 1本
上記の陰性対照抗体 (マウス IgM ) 1本
抗TNPモノクローナル抗体 (マウス IgG) 1
上記の陰性対照抗体 (マウス IgG ) 1本
抗マウスIgG抗体 (ウサギ IgG ) 1本
上記の陰性対照抗体 (ウサギ IgG ) 1本
抗体希釈液 1本
ヒツジ赤血球(SRBC)浮遊液 1本
TNP化ヒツジ赤血球(TNP-SRBC)浮遊液 1本
マジックペン 1本

手順 (図を参照のこと

  A. 抗TNP抗体(IgG)の希釈系列を作る

 1) 容量を0.025ml (25μl)に設定したマイクロピッペトの先端にチップを付け 、希釈液 25μlずつを、予め配布してある96穴マイクロプレートの 第1列から第8列までの64穴に入れる。

 2) 容量を 25μlに設定し先端にチップを付けたマイクロピッペトで、抗TNP抗体(IgG) 25μlを取り、第1行第1列(左上の端)の穴に入れる。そのままマイクロピペットでチップ内に液を数回出し入れして混和し(泡立てないように注意する!)、一旦チップ内の液を完全に出し切ってから、再度正確に 25μlを取り出す。この液を第2行第1列の穴に移し、同じように混和・希釈して、その 25μlを第3行第1列の穴に移す。以下同様にして第7行第1列の穴まで段階希釈を続ける。最後の第7行からの抗体希釈液 25μlは第8行へは入れず、流しに捨てる。これにより、第1行は抗体原液の2倍希釈液、第2行は4倍希釈液、以下8倍、16倍…と「2倍希釈系列」ができることになる。

 3) マイクロピペットのチップを交換し、第1行の第2列、第5列、第6列にも同じ抗体を 25μl入れて、2) と同様に段階希釈する。

 4) 2), 3)と同様に第3列、第4列、第7列、第8列に、抗TNP抗体に対する陰性対照抗体の希釈系列を作る。

  B. 抗TNP抗体 (IgG)をSRBCに結合させる

 5) 希釈系列の作製が終了したら、凝集反応の陰性対照となる(TNP化されていない)SRBCの浮遊液を、泡立てないように注意しつつ均一になるように混和し、第1列の8つの穴に 25μlずつ入れる。同様に奇数列(第3列、第5列、第7列にも、SRBC浮遊液を 25μlずつ入れる。

 6) 5)と同様にTNP化SRBC浮遊液を偶数列に 25μlずつ入れる。

 7) マイクロプレートをマイクロプレートミキサーで撹拌(教員の指示に従う)する。

  C. TNP化SRBCに結合した抗TNP抗体(IgG)を抗マウスIgG抗体で架橋する

 8) 血球液を加えてから20分経過したら、抗マウスIgGの陰性対照抗体液を第1列から第4列の32穴へ、抗マウスIgG抗体液を第5列から第8列の32穴へ 25μlずつ入れる。

 9) マイクロプレートを白い紙の上に静置し、陰性対照の血球が日の丸状に沈降したら、プレート全体について血球凝集の判定をする(血球液添加約1時間後)。

  D. 抗TNP抗体(IgM)の希釈系列を作る

 10) 2枚目のマイクロプレートを用意し、容量を25μlに設定したマイクロピッペトを用いて希釈液を第1列から第4列までの穴に入れる。

 11) 上の 2)と同様に、第1列と第2列に抗TNP抗体(IgM)の希釈系列を、第3列と第4列に陰性対照IgM抗体の希釈系列を作る。

  E. 抗TNP抗体(IgM)をSRBCに結合させる

 12) 5)と同様に奇数列にSRBC浮遊液を、偶数列にTNP化SRBC浮遊液をそれぞれ 25μlずつ入れる。

 13) 7)と同様にマイクロプレートを攪拌する。

 14) マイクロプレートを白い紙の上に静置し、陰性対照の赤血球が日の丸状に沈降したら(血球液添加約1時間後)プレート全体について血球凝集の判定をする。

マイクロプレートへの抗体及び赤血球の配置

プレート 1

二次抗体 抗マウスIgG 陰性対照二次抗体
一次抗体 抗TNP IgG 対照 IgG 抗TNP IgG 対照 IgG
希釈倍数 SRBC TNP-SRBC SRBC TNP-SRBC SRBC TNP-SRBC SRBC TNP-SRBC 第9列から第12列は使用しない
第1行 2
第2行 2
第3行 2
第4行 2
第5行 2
第6行 2
第7行 2
第8行(−)

注意: 第8行には抗体を入れず、赤血球のみの陰性対照とする!

プレート 2

一次抗体 抗TNP IgM 対照 IgM
希釈倍数 SRBC TNP-SRBC SRBC TNP-SRBC 第5列から第12列は使用しない
第1行 2
第2行 2
第3行 2
第4行 2
第5行 2
第6行 2
第7行 2
第8行(−)

注意: 第8行には抗体を入れず、赤血球のみの陰性対照とする!