絵 解 き
抗原提示からエフェクター細胞の活性化まで

 体表面(外表面=皮膚だけでなく、内腔の表面も)を覆う上皮のバリアを越えて異物が侵入すると、局所で炎症反応の引き金が引かれ、血管から異物侵入局所に向かって顆粒球や単球が遊走して来ます。「単球」の形態をとる細胞の中には、強力な抗原提示細胞である樹状細胞の前駆細胞も含まれています。
 組織に常在していたマクロファージや樹状細胞は、侵入した細菌やウイルス粒子、或いはウイルス感染によって破壊された細胞の死骸・断片などを取り込み、リンパ液の流れに沿って所属リンパ節に移動します。この間にマクロファージや樹状細胞は、細胞外から取り込んだタンパク質を分解処理し、その結果生じたペプチドをMHC分子の上に提示します。
 リンパ節に入ると、低い確率ですが、抗原提示細胞上のMHC +ペプチド複合体と強く相互作用することの出来るレセプター(TCR)を持ったナイーブな(まだ一度も活性化されたことのない)Tリンパ球と出会うことがあります。抗原提示細胞上のMHC +ペプチド複合体と強く結合出来たTリンパ球は細胞表面にCD40L分子を発現し、抗原提示細胞上のCD40分子を介してシグナルを伝えます。こうして活性化された抗原提示細胞はナイーブなTリンパ球の第1回目の活性化に必要な副刺激分子、CD80/CD86を細胞表面に発現するようになります。CD80/CD86はTリンパ球表面のCD28分子に結合します。
 TCRを介するシグナルとCD28を介する副刺激とを同時に受けたTリンパ球は初めて活性化し、分裂増殖してエフェクター細胞へと分化して行きます。

 抗原提示細胞により活性化されたTリンパ球は、TCRの特異性を保ったままで分裂・増殖して自らのクローンを増やします。CD8陽性T細胞はその過程で成熟し、細胞質内にパーフォリンやグランザイムなどを含んだ細胞傷害顆粒を持つエフェクター細胞になります。CD4陽性T細胞は、Th1またはTh2のパターンを示すサイトカイン産生細胞へと分化します。
 エフェクター細胞はリンパ節を離れ、輸出リンパ管から胸管を経て循環血液中へと流れ込み、血流に従って全身を巡ります。その過程で炎症の起こっている組織に近付くと、そこでは血管内皮細胞に接着分子発現の変化が起こっています。それを検知したエフェクターTリンパ球は血管の外に出て、局所のマクロファージなどによる抗原刺激を受けてサイトカインを産生したり(CD4陽性T細胞の場合)、ウイルスに感染した標的細胞を破壊したりします(CD8陽性T)細胞の場合。

 抗原提示細胞が局所リンパ節に移動し、そこで自らが提示している MHC +ペプチドの構造を認識出来るT細胞と出会い、このT細胞が分裂・増殖を繰り返してエフェクター細胞に分化するのには時間がかかります。また、活性化したエフェクター細胞が血流に乗って全身を巡り、異物侵入の局所に集まるのにも時間がかかります。これが、例えば同種移植片に対する拒絶反応が起こるのに1週間以上の時間がかかる理由です。

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