Division of Hematology, Department of Internal Medicine,

Kinki University School of Medicine  

近畿大学医学部 血液・膠原病内科【TOPICS】  

G-CSFによる造血幹細胞の動員の機序

従来の説では、造血幹細胞を骨髄内に留めておく作用をしているのはSDF-1/CXCL-12であり、G-CSFが骨髄内の成熟好中球に作用して、蛋白分解酵素を骨髄内に放出させ、SDF-1/CXCL-12が減少することにより、骨髄から造血幹細胞が末梢血への動員が起こると理解されていた。しかし、これだけでは説明がつかない現象があり、以下の事実が判明した。すなわち、レプチンは造血抑制に働く因子として報告されているが、このレプチンの刺激伝導系である交感神経系について検討した結果、ドパミンをノルアドレナリンに変換する酵素はdopamin b-hydroxylase (Dbh)であり、このDbhノックアウトマウスではG-CSF投与にもかかわらず、造血幹細胞の末梢への動員が全く起こらないことがわかった。このことより、動員メカニズムにおけるG-CSFの作用の一部は交感神経の興奮によるカテコラミンの放出であることが明らかになった。すなわち、G-CSF投与により交感神経から放出されたカテコラミンが骨芽細胞のb2アドレナリン受容体を介してその活動性を抑制し、造血幹細胞としてのニッチとしての役割を果たせなくなり、結果として末梢への動員が起こる可能性が示唆されたデータである。
(Cell 124:407-421, 2006)

造血幹細胞の冬眠                                  

造血幹細胞は通常は静止期にあるが、1~2カ月に一度細胞周期に入る。この現象はリスの冬眠と非常によく似ている。すなわち、冬眠状態の時には、FOXO転写因子が核内に存在し、冬眠状態から脱出するにはサイトカイン刺激などでリン酸化AktによりFOXOがリン酸化され、核内から細胞質内に移行することが必要である。また、その際に造血幹細胞膜状に脂質ラフトの集積(lipidraftclustering:LRC)が確認される。LRCを抑制することでin vitroにおいて造血幹細胞の冬眠が再現できる。また、このLRCを抑制する因子がTGFbであることが分かっており、骨髄におけるどのニッチ細胞がこれを産生するかは現在検討中である。冬眠は環境が悪くなった際に体内の代謝を抑え、良好な環境が来るまで待つための合理的な行動であると理解されている。リスは冬眠する代表的な動物であり、1週間の感覚で目覚め、また冬眠状態に入るということを繰り返しており、冬眠しているリスの体細胞にはFOXO転写因子は核にのみ局在し、冬眠しないリスは細胞質に存在する。以上より、造血幹細胞の冬眠は生体内で重要な役割をしている血液細胞を供給する意味でも非常に重要な現象であると理解できる。
( EMBO J. 25: 3515-23, 2006)

 

 


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