診療グループ一覧
膝関節斑 変形性膝関節症
加齢に伴う膝関節の疼痛、可動域制限、変形を主な症状とする疾患です。早期には動作開始時に痛むといった症状ですが、次第に階段や坂道での歩行が辛くなり、進行すると平地での歩行も困難となります。また、水腫(関節内に水が貯まる)もよく生じます。多くの方が保存的治療で軽快しますが、疼痛が軽減しない場合には手術療法を考えます.当科で行っている最先端治療を紹介します。
(1)最小侵襲全人工膝関節置換術 (MIS-TKA)
当科は日本でも早期にこの術式の導入を行った施設の一つです。人工膝関節手術は既に確立された手術方法の一つであり、日本でも年間4万人以上の患者さんがこの手術を受けています。しかし、手術後に長期のリハビリが必要でした。最小侵襲手術では約10cmの小さな切開で手術を行います。高齢の患者さんが多いため、体に優しく早期回復の得られるこの術式は大変魅力的です。一方、高い技術を要求されるため全ての施設で行われている手術ではありません。近畿大学ではMIS-TKAを2004年4月より導入し、既に200例以上の症例を積み重ねてきました。
(2)人工膝関節術前シミュレーション
人工膝関節手術は多くの施設で行われていますが、設置の正確さが長期成績に大きく影響します。そこで、大学病院ならではの工夫として、CT
画像データを用いた術前シミュレーションを行っています。 このシミュレーションは上記のMIS-TKAを精度高く行うための必須の情報となります。
(3)肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の予防対策
肺塞栓症はエコノミークラス症候群として知られる怖い合併症です。当科では弾性ストッキングや早期リハビリテーションによる計画的な医学管理とともに抗凝固薬による予防対策を行っています。また、MIS-TKAの導入により可能となった術翌日からの歩行はこの合併症のリスクを低下させます。
(4)単顆型人工膝関節置換術 (Unicompartmental Knee Arthroplasty)
変形が軽度で膝関節内側か外側かいずれかのみが障害されている膝に対して適応となります。輸血の準備も不用でMIS-TKAよりさらに早期の回復が得られます。TKAとの使い分けにより患者さんの高い満足度を得ることが出来ます。
(5)高位脛骨骨切り術 (High Tibial Osteotomy, HTO)
O脚により膝の内側が障害された場合に、脛骨をX脚方向へと矯正する手術です。60代前半までの患者さんに適応を考えます。場合により鏡視下骨髄刺激法(マイクロフラクチャ法)、鏡視下デブリドマン、骨軟骨移植術(モザイクプラスティ)、さらには靭帯再建を組み合わせて対応しています。
膝関節斑 膝関節靭帯・半月板・軟骨損傷
膝関節は外傷・スポーツや事故によって損傷の生じやすい関節で、十字靭帯損傷や側副靭帯損傷、半月板損傷、関節軟骨損傷、膝蓋骨脱臼など、様々な損傷を生じます。また、これらが組み合わさり複雑な障害を生じます。的確な診断と治療が重要な分野です。当科では常に最先端の治療方法を導入し、診療に当たっています。
(1)前十字靭帯 (ACL) 損傷
靭帯再建術では鏡視下ACL再建術の件数が伸びており、年間30例を超えました。ACLを損傷すると膝は不安定となり二次的な半月・軟骨損傷を生じます。ACL再建術の目的は膝安定性を回復することにより、若年で変形性膝関節症に至るのを防止することです。すなわち早期に適切な処置をすることが重要です。本年よりACL二重束再建術を開始し、さらなる成績の向上を図っています。骨端線閉鎖前の小児例にも骨トンネルの方向を工夫し、ACL再建を行っています。
(2)半月板損傷
膝関節の隙間でクッションの役割をしているのが半月板です。膝の捻挫などでよく損傷を受けます.関節鏡視下に形成を行ったり、縫合を行ったりします。
(3)関節軟骨損傷
軟骨損傷に対しては前述の鏡視下骨髄刺激法や骨軟骨移植術の他に、自家軟骨培養移植法 (ACI) による軟骨再生医療が既に始まっています。近畿大学医学部研究棟にはヒト細胞培養を行うセンターが設置され、30才代以下の若年者を対象に広範囲の軟骨損傷の治療が行われています。高度先進医療として今後の発展が期待されます。
(4)反復性膝蓋骨脱臼・膝蓋大腿関節症
膝蓋大腿関節のトラブルに対しても積極的に手術適応を行っています。繰り返し膝蓋骨が外側に外れる反復性膝蓋骨脱臼に対しては内側膝蓋大腿靭帯
(MPFL) 再建、外側膝蓋大腿関節の変形性変化にはFulkerson手術(脛骨粗面前内方化手術)、軟骨損傷を伴う症例には骨軟骨移植を行っています。
膝関節斑 研究
(1)人工膝関節置換術
最小侵襲全人工膝関節置換術(MIS-TKA)の有用性について臨床研究を続けています。さらに、手術の技術的な改良としてMIS-TKA大腿骨髄外骨切りガイドの開発、CT
DICOM dataを用いた術前手術シミュレーションソフトウェアの改良を進めています。また、基礎的には人工膝関節用材料であるセラミックスやポリエチレンの研究を行っています。
(2)肺塞栓症予防
肺塞栓症の原因である静脈血栓症がいつの時点から始まるのか、術中超音波法にて検索を行ってきました。新しく販売が始まった発症抑制薬(抗凝固薬)についても研究が始まっています。
(3)前十字靭帯(ACL)再建術
上記のソフトウェアを用いると、靭帯再建を行った骨孔位置を極めて正確に評価出来ます。骨孔位置と手術成績(膝安定性)の関連を検討しています。
(4)軟骨変性と過酸化脂質(酸化LDL)の関連
軟骨の老化変性と過酸化脂質(酸化LDL)の関連を調査し、多くの基礎的業績が出ています。軟骨の老化変性、すなわち変形性関節症の予防に繋がる薬剤の探索を行っています。
(1)人工股関節置換術
現在日本国内では、人工股関節置換術は各医療施設によって様々な方法、インプラントが使用されているのが現状です。またインプラントの固定方法もセメントを使用する方法や使用せずに行う方法があります。当科における人工股関節置換術は股関節の回転中心である大腿骨頭の中心を出来るだけ正常な位置に再建することを目標にしています。そのため手術の術式も症例に応じて対応しています。臼蓋形成不全がある場合は自家骨移植を併用し主にセメント固定による股臼再建を行っています。臼蓋形成不全がないか軽度の場合はセメント非使用のインプラントを使用することもあります。大腿骨側も症例に応じてインプラントを選択していますが現在では殆どの症例でセメント固定のインプラントを使用し早期荷重を行っています。術後の平均入院期間は3週間(2~4週、年齢や術前の歩行能力によって異なります)で、術後早期は杖歩行を指導していますが、安定すれば杖を持たずに歩行することも可能です。
(2)人工股関節再置換術
当院では再置換術も積極的に受け入れています。人工股関節置換術のゆるみは、もっとも大きな晩期合併症で、再置換術が適応されます。現在高齢者の大腿骨骨折に対する人工骨頭置換術は多くの病院で行われています。また、技術の進歩により変形性股関節症に対する人工股関節置換術も一般的な術式となってきました。しかし術後早期にインプラントのゆるみをきたす症例や、感染を疑う症例が存在するのも事実です。特に人工関節周囲の骨欠損が著しい症例は骨移植が必要なことも多く、一般病院では対応困難なことが多いため当院で治療をおこなう症例が増加しています。
合併症対策
近畿大学における人工股関節置換術は「安全であること」を基本方針としています。そのためには術後合併症を出来るだけ少なくする努力を行ってきました。当科では以下のような合併症対策を行っています。
(1)自己血輸血
人工股関節置換術の際、術中および術後に500~1500mlの出血があります。当科では出血に対しては術前自己血採血(400~800ml)を行って対応しています。高齢者や歩行困難な方は入院して血液を貯めることもありますが、外来でも貯血は可能です。この自己血貯血により同種血輸血は殆ど必要としません。これは同種血輸血による合併症(肝炎やエイズなどの感染や免疫系の副作用)を予防する意味でも重要です。再置換術においても殆どの症例で自己血のみで対応可能です。症例によっては1200ml貯めることもありますが85%以上で同種血輸血が回避できます。
(2)脱臼対策
人工股関節の術後大きな問題となるのが脱臼です。最近5年間の当科における初回人工股関節置換術後の脱臼の発生率は約0.5%です。再置換術ではややその確率が上昇します。脱臼の原因は様々でありこれこれらを完全に予防することは不可能ですが、出来るだけその発生を抑えるように工夫しています。手術の方法やインプラントの選択、設置角度、設置位置など総合的に考慮することで脱臼率は低下します。また理学療法士、看護師と共通の認識を持つために定期的に勉強会を開催しています。
整形外科分野における腫瘍は、四肢、体幹の骨腫瘍、軟部腫瘍に大きく分けられます。 骨腫瘍、軟部腫瘍ともそれぞれ良性腫瘍および悪性腫瘍に分類されております。
●外来での主な検査 ・レントゲン写真:
骨の変化を調べます。また一部の軟部腫瘍の場合レントゲン検査で判断がつく場合があります。
●MRI検査:
腫瘍の大きさや広がり、また神経や血管との位置関係を調べます。
●CT検査:
腫瘍の大きさや広がり、肺や肝臓に転移していないかを調べます。
●シンチグラフィー:
全身を撮影し、他の部位にないかを調べたり、化学療法の効果判定に用います。
●組織検査:
ほとんどの軟部腫瘍で外来にて針を刺して組織の一部を採取して、良性か悪性かを調べます。
腫瘍の主な治療法
(1)良性骨腫瘍
良性骨腫瘍の場合、ほとんどの腫瘍で骨の表面に骨窓を開けて腫瘍を掻きだします。その後の骨の欠損部には、人工の骨や自家骨(自分の骨盤の骨)を充填します。また骨の表面から外に突出している腫瘍の場合は、突出している部分を削り取ります。
(2)良性軟部腫瘍
良性軟部腫瘍の場合、腫瘍だけを摘出しますのでほとんどの場合機能障害が残ることはありません(但し腫瘍の発生場所によっては機能障害が残る場合があります)。
(3)悪性腫瘍
整形外科分野における悪性骨腫瘍の中で最も有名な腫瘍が骨肉腫です。骨原発の悪性腫瘍の約20%とされています。日本における骨肉腫の発生頻度は、人口50万から100万に対して1人の発生率(1年間に130から260人)といわれています。好発年齢は10歳代にピークがあり、次いで20歳代、10歳以下となっています。骨肉腫の発生原因は今もってなお不明です。症状は局所の疼痛および腫脹がほとんどです、またこの症状が診断前3~4ヶ月続いていることが多いです。その好発部位としては、大腿骨遠位部、脛骨近位部、上腕骨近位部の順に多く、膝関節周囲だけで50%を超える発生部位です。レントゲン写真やMRI、CTなどの検査を行いますが、最終的な診断は組織を一部採取して(生検)病理組織診断で確定し治療が始まります。
骨肉腫を含め、悪性腫瘍の場合、病名はもちろん現在の病態がご理解いただけるよう繰り返し詳しく説明を行います。当院では患者さんご本人にも病名をお話しすることを原則としています(悪性腫瘍の場合その後の治療に際して抗がん剤を用いることが多く副作用が強いため患者さんご本人のご理解が重要になります)。
手術前・後に抗がん剤による治療を行います(腫瘍を小さくしたり、転移を予防することが目的です)。
手術療法 悪性腫瘍の場合、腫瘍の周囲の正常な組織も一緒に切除します(腫瘍広範切除術)。
骨や筋肉を切除したのち、なくなった組織を様々な方法で再建します(腫瘍型人工関節、熱処理骨、液体窒素処理骨、また筋移行や筋皮弁など)。 できるかぎり上記方法を様々組み合わせて四肢の切断を行わない手術を目指しております(患肢温存手術)、しかしすべての腫瘍が患肢温存できるとは限りません。
骨肉腫の場合、以前は5年生存率が10%程度でしたが、抗がん剤の治療や、広範切除などの進歩により5年生存率が60~70%になってきております。
さらに多彩な悩みや苦しみをもった腫瘍の患者さんに全人的なサポートを出来るような医療を目指して治療を行っております。