* 柔道整復師と接骨院とは
今、街角で、いたるところでどんどん新しい接骨院や整骨院、鍼灸整骨院などが開業しているのを知っておられるでしょう。整形外科医の診療所などどこかに隠れてしまうくらいです。さて、もしあなたが肩こりや腰痛やほかの身体の痛みの問題で患者さんで、接骨院や整骨院で施術をうけておられるのなら、あなたが体をゆだねている接骨院の方々は柔道整復師という資格の職種であり、医師ではないことは知っておられますか。柔道整復師は専門学校の3年間の教育で資格を得られる職業であり、高卒3年間で施術所を開業でき、たとえば21才の若さでもお医者さんのようにあなたの体を診察し、施療することができることも知っておられますか。
あなたがもし自分の体の調子が悪くて心配だ、今の症状が悪い病気によるものではないだろうかと本当に心配しておられるのなら、もし今、接骨院の施術で一時的にせよ気持ちよくなっているとしても、すぐに病院に行って診察と診断を受けて下さい。医師には正しい診断と正しい治療を施す責任があります。しかし柔道整復師は法律的にはうちみ、ねんざ、脱臼、骨折などの応急処置を行う職業で、責任を伴う診断はできないのだということを知っておられましたか。あなたの体に、もしも危険な病気が隠れていたら、もしも癌の転移があったら、接骨院に通って施療してもらっている間に悪化したり手遅れになってしまう可能性があります。もしも脊椎に病気があれば施療や療術によって脊髄が傷められて麻痺してしまうかもしれません。あなたの肩こりや腰痛や膝の痛みの本当の原因は柔道整復師はレントゲンなどを使用してはいけないのでわからないのです。あなたの通っている接骨院の看板には患者さんとしてあつかえるものは『うちみ、ねんざ、脱臼、骨折』であるとちゃんと書いてありますか。もし書いてあればおそらく年輩の経験豊かな柔道整復師ですからあなたの本当に悪い状態がわかりますので通っていいかもしれません。しかし看板に各種保険取り扱い以外なにも書かれていなかったり、逆に椎間板ヘルニアやリウマチやら色々な病名が書いてあったら、それは違法であり、法律違反を堂々と犯している接骨院ですからあなたは危険な状態にあるのかもしれません。保険組合から送られてくる医療費通知もよく調べて下さい。実際通院したよりも回数が増えていたり、予想以上の金額になっていませんか。本当は『うちみ、ねんざ、脱臼、骨折』以外で接骨院にかかったら、たとえば慢性の肩こりや腰痛、あるいは関節やふしぶしの痛みなどで電気やマッサージなど、いろいろ施療されてもそれは健康保険の対象にはならないことを患者さんも知っておいていただきたいと願います。保険組合がお金を払えるのはうちみ、ねんざ、脱臼、骨折だけなのです。知っていましたか。それ以外の痛みや肩こりなどはあんまやマッサージや鍼灸と同じように、施療代は窓口で全額患者さんが払わなければならないのです。
今、町の中や郊外で新しい接骨院がどんどん増えていっていると思われませんか。実際急増しているのです。数年前まで柔道整復師の養成専門学校は14校しかなかったのに、どんどん増えて、この平成15年4月にはなんと59校になってしまったのです。入学者は5倍近くも増えて5200名以上です。今年の卒業生も増えていますが3年後にはなんと5000名以上が柔道整復師の資格を得る予定です。(ちなみに整形外科医は500名くらいです。)そしてすぐ開業できますから、今、柔道整復師の資格を持っている人たちがそれまでに開業しておかないと大変という事で続々と開業しているのです。これまでは柔道整復師には実習も見習い期間もありましたから、それなりに、これは危ないという患者さんの状態を判断できて危険を避ける事がある程度できていたのです。しかし新しい柔道整復師は先輩の指導や実習、さらに卒後の研修など殆ど無しに、直ちに開業する場合があり過当競争が激烈になります。21才の接骨師は、孫のようで話し相手としてはやさしくて楽しいかも知れませんが、患者さんであればよほど注意して受診しないと、診断ができないのですから危ない可能性があります。
平成14年5月18日の毎日新聞を御覧になりましたか。1年間で接骨院・整骨院で行われた危険な施術や、悪化した例や、結果的に命を縮める事になったような事例が多数報告されています。
資格のない療術師とは
しかし柔道整復師は医師ではないし、診断はできない職種ではあっても、国家試験を合格し、人間の体や病気について基本的な知識は有していると評価されて厚生労働省から免許をもらっている人たちであり、これにはあんま、鍼灸、マッサージ、指圧師(あはき)なども含まれます。マッサージや鍼灸の施術所に通っておられる方も、施術してくれる先生が国の免許をもっているかどうか確かめることをおすすめします。
さらに日本には全く公的な資格のない施術士や施術所も、もっともっとたくさんあります。整体、カイロプラクター、中国整体、オステオパス、クイックマッサージ、レフレクソロジー、足裏マッサージ他無数に有り、こういった施療士は名乗ることも開業することも一切制限なくまったく自由ですから、たとえば数日から一ヵ月といった超短期間の養成で私的免許を濫発し、それをお金で取得した療術士が大変な勢いで増えています。こういう人達が体の調子が悪くて不安な患者さんを口八丁手八丁でとりこにしてゆきます。体を扱う医師の真似事が許されているのです。カイロの場合、背骨や骨盤や頭蓋骨のずれやゆがみが病気の原因である、あるいは自然治癒を妨げるという理論から、こわばった部分や背骨の関節を動かすのだといって首や腰を『ごきっ、ぼきっ』といわせて施療します。テレビで軽い調子の健康番組が各局で製作され、氾濫していますが、その中で無免許の療術士がよく登場し、骨盤、脊椎がゆがんでいると宣言し、『診断』されたタレントに施術しているのをよく見ます。そんなとき私はぞーっとして冷や汗が出ます。本当に頸椎や腰椎にヘルニアや狭窄や腫瘍などの問題があって症状が出ている患者が、我流診断の『にわかの』施術者からこういった手技をうけると、脊髄が傷ついたり、神経症状がひどく悪化したり、麻痺してしまう可能性さえあります。くれぐれもご注意下さい。私達はこういった不幸な目にあった患者さんの後始末をしなければなりません。しかもそういった患者さんが増えつつ有るのです。日本で約15000人のカイロプラクターの中には、マッサージや鍼灸の国家免許をもっている人も数百名います。どうしてもカイロによる矯正術がご希望であればこういう施術者を探すことも必要でしょう。
接骨院や他のいろいろな種類の施術所に通っておられる患者さんやその御家族からの相談を受け付けています。
『からだサイエンス』対談
下記の文は柔道整復師の方や医業類似行為にたずさわっておられる方々にお読み頂きたいと思います。
長い文ですが、『からだサイエンス』という、柔道整復、あんま指圧マッサージ、はり、きゅう業界雑誌の平成14年6月号に掲載された対談記事です。当然反論や意見や情報が多々あると思います。そういうご意見を待っています。
対談
ズバリ柔道整復は、患者にとって無いほうが良いというお考えでしょうか?
いきなり極論を求める質問ですね。柔道整復師の歴史的な発生状況を考えると、名倉以来の骨接ぎの流れと柔道場での応急施術です。そして法的に急性期の外傷を応急的に扱うという地位を定められている柔道整復師ですが、かつて医師のいない地域では立派に存在意義があり地域に貢献されていました。そして今でも農村部において地域医療の一端を代々担っておられる柔道整復師の方々が沢山おられます。しかし医師余りの現在、また整形外科医が二万人を超えた現在、急性外傷担当職種としては、余程医療過疎の地域でなければ柔道整復師は存在する必然性はなくなっているのではないでしょうか。
柔道整復師教育も当然ながら外傷に偏っていますし、柔道整復師のいわゆる施術というものには、どうやら脱臼の整復・骨折の固定術など以外には独自・独特なものはないようです。そして現実に脱臼・骨折が疑われる激しい症状の患者さんはまず病院を受診されるでしょう。また接骨・整骨院にこられても骨折が明らかなものはすぐ病院に送るよう指導されておられます。しかし柔道整復師によっては捻挫だけなのかあやしい症例、あるい経験的診察からどうやら骨折が疑われても、程度が軽いと判断すれば、医師の同意が要る『骨折』ではなく『捻挫』であるとして医師に紹介しないで自分で施術を施してこられた可能性があるのではないでしょうか。そして捻挫の傷病名にしたのなら、そのまま固定しておけばよいのに、余計な施術、すなわちマッサージや電気治療を施しながら動かしたりしますので、偽関節にしてしまう例すらあるのです。
富山県の調査では柔道整復師を訪れ施術を求める方で50才以降の御夫人が46%を占め、男性も含めると50歳以降の方が70%だそうです。自分の体調を深刻に悩んでおられる方よりも、一時的にせよ痛みを柔らげ、すっきりと気持ちのよくなる施術、そして何より柔道整復師との人格的なコミュニケーションをもとめて通っておられる方が多いのではないでしょうか。そして実際柔道整復師が施術所で行っている施術の大半は『柔道整復』術ではなく、あんま・鍼、灸と同じくマッサージ、鍼灸、電気治療であるというように聞いています。極論を言うのなら、柔道整復師があんま・鍼、灸とは異なる独自の存在とし『柔道整復』を売り物にする施術所が、都会で必要とされる理由はないのではと思えるのです。もし患者さんが深刻に自分の体調に不安を覚え診断と医療を期待して来られたのなら、柔道整復師はそういう患者さんに手を出してはいけないと思います。それは患者さんのためにであるのはもちろん、これからは柔道整復師自身のためにもそうすべきです。
そしてもし患者さんが気持ちのよい施術行為と人格的ふれあいを求めて来られているのなら、それに保険適用を求め、更にあんま・鍼、灸にはない受領委任払いといった特殊な扱いを求め続ける根拠はないのではと思っています。
教育内容や人数制限のもとでは、在っても良いというお考えでしょうか?。もし、条件付きで認めようというのであれば、その内容について。
上に述べましたように柔道整復師が扱える対象疾患が、脱臼・骨折・打撲・捻挫のみと法律で規定されているように、柔道整復師の授業や実習は殆ど骨折・脱臼、そして外傷に対する処置・治療です。ところが実際、急性外傷の患者さんが今は施術所を訪れることは殆どありませんので、柔道整復学校で受ける骨折や脱臼に対する勉強や実習は現実には無駄になっており、整骨見習いの方々以外、卒業生は卒業してみて施術所の現実に驚くといった状態になりつつあるのではないでしょうか。
捻挫や打撲であってもその基礎に危険な状態が隠れていないかどうか、鑑別診断の必要上、様々の疾患について勉強するのは間違ってはいないのですが、法律での規定からかそういった一般の整形外科疾患はもとより、悪性腫瘍を理解する病理学や50才以降の方々のかかり易い生活習慣病的など一般的疾患のカリキュラムは軽視されています。
柔道整復師は外傷のとりあえずの応急処置が施術内容であり、医師ではないのでレントゲンやCTやMRIなど、或いは血液検査など様々な補助手段を駆使して確定診断を行う資格はありません。ですから施術を行っていて、これはおかしい、悪性のものが隠れているかも知れない、内科的疾患が関係しているかも知れないと早く察して、出来ればはじめから察して、自分が扱える患者ではないと判断し、そのまま医師を紹介出来る鑑別能力と、自分で施術したいという誘惑に勝つ力が職業上、特にこれからは求められるではないでしょうか。
2002年の国家試験問題を見ていて驚きました。科目としてあるはずの『柔道整復理論』の問題を見つける事ができませんでした。すなわち、東洋医学、東洋思想に立脚していると言われ、それらしい教育はしているといっても、国家試験問題として問える、世間に公開出来る、そして学生が学ぶべき柔道整復学や柔道整復理論は存在しないのではないと考えざるを得ないのです。いわんや大学教育をやです。
暴言かもしれませんが、―――せめてレントゲンだけでも返してあげる訳にはいかないものでしょうか?そうすれば、外傷もキチッと診断でき、柔道整復施術における施術ミスも少なくなる筈ですし、最も患者さんのためになるのではないでしょうか?
これこそ柔道整復師の昭和の初期からの悲願でした。レントゲンさえあれば我々でも正しい診断ができるのだからと。しかし診断学の進んだ現在、骨折であればレントゲンで見つかるはずとは決して言えないのです。たとえば小児の場合レントゲンでは見えず関節造影が必要な骨端軟骨板離開という病態があります。これは変形治癒しやすく生涯にわたって問題を残します。また小児には骨折線がわかりにくいタイプの若木骨折があります。またMRIでしかわからないbone bruiseという病態もあります。また手根骨の骨折や大腿骨頚部骨折にはどう探しても当初は見えず、周囲の骨が吸収されてはじめて見えてくる場合もあります。また労働やスポーツに多い疲労骨折はその初期はレントゲンではわからずアイソトープによるシンチグラムやMRIでしか診断はつきません。まして骨における悪性腫瘍の発生や転移癌の存在は、その初期にはレントゲンでは鑑別できないことが多く、またまぎらわしい骨髄炎やパジェット病など骨の病気と鑑別する為に血液検査などあらゆる手段が必須です。そして癌の転移による病的骨折などはむしろレントゲンで単純な骨折とだまされ易いのです。一番おそろしいのは首や腰への施術で手足のしびれや痛みが増悪して受診される患者さんで、レントゲンでは何も異常がなかったり単に変形性脊椎症であってもMRIや脊髄造影で調べるとヘルニアや脊柱管内腫瘍や黄色靭帯の肥厚による高度の狭窄状態が完成していて、これに脊椎を伸展させる機械的物理的な施術やカイロで行うようなコキッといわせるアジャストメントが行われていたのかと思うとぞっとすることがよくあるのです。よくぞこの程度で脊髄損傷にならないですんでよかったとほっとしますが、やはりそれではすまず、施術によって脊髄が傷められ麻痺症状が生じたりした患者さんも珍しくないのです。特に高齢者は危険です。
とまれ、私が言いたいのは、医師はあらゆる方法、検査手段を用いて正しい診断を行う義務があり、投薬、手術を含め正しいと思う治療を施す義務があります。無数の疾患を鑑別する為に患者さんに痛みをともなう検査を勧めることもあります。そして結果的に誤診であればもちろんのこと、たとえ診断も治療も間違いがなくても、今は治療結果だけでも糾弾され、責任をとらなければならなくなってきています。
私は柔道整復師の方がたとえ単純レントゲンの診断を許可されても、真剣に診断と治療を求めて施術所を受診される患者さんが大きなリスクを背負っているという状況は殆ど変わらないということが言いたいのです。自分の体を憂い、真剣に診断と治療を求めておられる方がもし施術所にこられたら、柔道整復師によって直ちに病院を紹介されるべきです。つまりいち早く病院に責任を転嫁すべきなのです。柔道整復師はそういう意味で、有責の医療担当者であるという幻想は捨てるべきであり、そうしないと患者さんも柔道整復師自身も危険なのです。医師と柔道整復師の違いはそれほど決定的です。個々の能力や人格とは関係なく法の立場と責任が。
現実には検査を駆使する必要性のある患者は少ないでしょうし、一般の病状、病態が深刻な人(命に関わるほどではなく、入院するほどでもないが、やはり生活をする上では支障があるという人)でも、そういった高度の医療を望んでいる人は少ないと考えます。ですから短絡的な発想であると承知の上で、症状が軽微な患者(症状がひどくないと判断するのは自分、患者本人)にはどのような対応をされるのでしょうか。私も日赤に足をくじいて行ったことがありますが、X線しか撮って貰えませんでした。治療もありませんでした。湿布薬と痛み止めの薬だけで、日赤がよくなかったのかも知れませんが。
その通りです。症状が軽微な患者さんは一時的にせよ痛みを忘れることのできる施術、慰安行為で満足され、もともとそれ以上のものは求めておられないかも知れません。しかし医師の場合は、病院に来られたからには、いくら症状が軽微であって診断も軽微と言う訳には行きません。上にも述べたように、そして何回も言うように徹頭徹尾診断に責任があり、後日、始めに見落としたという責任を追求され、今は裁判で負けます。上にも述べたように『柔道整復師にもレントゲン撮影と診断権を』という悲願があります。上でそれでも危険であると申しました。これまで通りX線や診断権なしで同意という診断責任を医師に押し付けるか、X線権を獲得して、ついでに診断責任も全てかぶりますか、という選択がもし許されれば柔道整復師の方々はどちらを選びたいのでしょうか。
医師は高い検査を野放図に勧めることはあり得ません。個人負担も高いし、痛みや害を与える検査もありますから、検査を行う根拠が患者さんに十分示されねばなりません。検査の同意が必要ですから、根拠がなければ検査は出来ないのです。そしてあえて検査を拒否される方も増えています。逆に交通事故・労災事故や自分の思い込みで患者さんがしてくれと迫る検査を、その根拠がないといって大変な努力をして断ることも少なくありません。
X線検査でも患者さんの了解が要りますし、赤ちゃんのX線検査は親が撮ってくれと迫っても断ることもあります。日赤病院ではあなたの足首の捻挫は、X線以上の検査を行う根拠を示せなかったのでしょう。もし内出血でもあったとすれば固定しなかったのは問題ですが、ちゃんと治癒して今はなんともないのでは。
条件の一つに、保険を扱うことがいけないということがあるならば、保険を扱わなければ問題ないということなのでしょうか。又、保険を扱うことの問題点を指摘して下さい。
その通りです。もし実際に急性外傷に柔道整復なる『技術』を駆使していないのなら、あんま・鍼、灸にはない受領委任払いという特殊な扱いを柔道整復師が受ける理由はありません。気持ちのよい施術・慰撫・慰安行為に対する対価は、あんま・鍼、灸のようにきちんと患者さんの満足度に応じて請求して現金徴収し、それを『医療』であると認める保険組合から患者さんが還付して貰う療養費払いにすべきです。そうすればそこに人格的で『評判のよい柔道整復師』と、患者さんの知らない所で受領委任払いで儲けていた柔道整復師の間におのずから需要の差別化が発生してくるでしょう。こんなに安くて申し訳ない、から、こんなにとられるのならもう二度とこないまで。
又、一般の社会保険組合も、あるいは医科の請求額に比べ柔道整復師の請求は圧倒的に少ない等という理由で査定や調査になかなか踏み切らなかった地方自治体も、これまでのようには唯々諾々と支払う時代はもう終わったと思うのですが。
柔整関連の発表内容が極めて目立ちます。二〇〇〇年に発行された『整形外科医療の周辺問題』という資料集でも、柔整を的確に糾弾されておりましたが、今大会でも『整形外科医として代替療法を考える=国民の立場で=』というテーマであるにも関わらず、柔整について繰り返し糾弾されているように思います。その意味や理由を教えて下さい。経済的な視点でのみ論議されているようにも思えますが。
経済問題ではありません。勿論、一部の柔道整復師が一ヶ月二十日以上施術して一件あたり三万円以上のレセプトを積み上げるような、驚くべき水増し、架空請求を許している、その気になればいくらでも悪用できる、そして良心的な方まで違法請求に引きずり込む強い誘惑となる制度そのものは問題です。そして卒業すればそのような優雅な生活にすぐなれると宣伝し、学生を集める学校産業の姿勢も問題です。
しかし最も強調したい点は、百名施術されて、例え九十九名は気持ち良かったと満足しておられるとしても、たった一例、診断が欠けていた為に不幸な状態になった方がおられるのであれば、それはそういった見逃しを許す制度が間違っているということなのです。そしてそのような例は決して少なくないのです。
約千人の整形外科開業医の半数以上が、そういった不幸な例をしかも複数例経験していることが五月十八日の毎日新聞で報道されています。しかし実際施術所に通っていておかしいと感じた方は、不安になって正しい診断と治療を求めて開業医よりもむしろ大きな病院か大学病院へ行かれるでしょうから、深刻な事例はもっとあるはずです。
実際私達は日常外来で毎日のように経験し、手術で後始末をせねばならないことが多いのです。これは柔道整復師個人の乱暴な施術による事例もありますし、X線などで『診断出来ないのだから見落としても仕方がない』場合も多いのです。
柔道整復師による施術は、急性外傷の応急的処置という領域に限って、しかし触診以外は診断を得る手段なしに行うことを許されていますから、その領域をわきまえて施術される限り、理論的には診断ミスで責められるということはないはずです。しかしこの領域を超えてというか、領域にあてはまる例など殆どなく、慢性の疾患や変性疾患による症状を、慢性の外傷と言い換えて『みなし』診断名をつけて施術し続けると、これほど危険なことはない(これは患者さんにとっても柔道整復師にとってもですが)と主張しているのです。
そしてそれを認め続けている保険組合も含め、制度の責任も大きいのです。医師は診断と治療の両方の責任を負い、それを果たさねば訴えられます。柔道整復師は対象が急性外傷に限られていますから、その応急処置に限っては診断と治療の責任を負うことはありません。しかし本当の急性外傷の患者さん以外(殆どはそうでしょうが)の施術を続けていく限り、無資格者と同じく、傷害罪に等しい過ちを犯す『可能性を常に負っている』ことを自覚して頂きたいのです。
慰安行為という言葉を関連の方からよくお聞きしますが、どのような内容或は行為を指すのでしょうか。わかる範囲でご指摘下さい。
あんま・指圧・マッサージ、鍼、灸などの方には異論が有ると思いますが、そういった施設で行われている施術と変わらないものと私は理解しています。柔道整復師が独特の施術として誇れるのは、おそらく麻酔なしに行う脱臼整復・骨折整復でしょう。しかし実際こういう症例は体育やスポーツの現場で働いておられる方を除き、現在一般の施術所を最初に訪れることはまずありません。田舎の学校の校医さんが柔道整復師で占められていた時代もありました。現在は体育教育、クラブ活動、社会人やプロスポーツの現場で、コーチやトレーナーをされている柔道整復師の方が多くおられます。こういった方々は、現実的に応急の脱臼整復などの『柔道整復術』が必要とされているかもしれません。しかし一般の町の施術所で行われていることは、マッサージ、鍼、灸、電気療法が多いのではないでしょうか。そしてそれ以外のいわゆるカイロのような療術は、誘惑があるでしょうが、決して行われるべきではありません。
あんま・指圧・マッサージ、鍼、灸なのような施術は元々保険診療になじまない部分があるとされています。ましてそのうえ柔道整復師だけに受領委任といった特殊な扱いが許されるのはおかしいと思っています。
「長期的に漫然と施術を行う」と言われておりますが、どの位の期間の施術を続けることを指して言われているのでしょうか。
医学的には急性期の捻挫は靭帯損傷の程度に応じて約三週間のギプス固定を行います。これは固定であって、マッサージや電気治療ではないのです。脱臼に対しては更なる組織の損傷を避ける為に麻酔下に愛護的に整復し、最低三週間は固定が必要です。この期間の安静固定が組織の自然修復にとって最も大事ですから、いろんな施術を施してむしろ治癒機転を妨害するような事はしてはいけないのです。一般的な常識としての治療期間は、打撲・挫傷は二週間、脱臼・捻挫は三週間、骨折は二〜三ヶ月程度でしょう。しかし変形性関節症や変形性脊椎症などは、慢性に繰り返される外傷によって発生してきたものであるとか、挫傷とは慢性に繰り返される慢性挫傷なのだなど、一般的に理解困難な理屈を『柔道整復学』と称して施術対象を拡大してこられた業界です。むしろそちらの施術理論を国民に開示されたらいかがでしょう。一部の柔道整復師のように挫傷・捻挫がいくつもの関節で連日発生し、3ヶ月も半年も施術を続けるようなことをされますと、患者さんは勿論、その当の柔道整復師自体が被る危険も増します。つまり後日患者さんに、外からでは診断のつかない問題が見つかった場合、正しい診断と治療開始を故意に遅れさせた責任を問われます。もし施術で期待出来る改善が見られなかったり、まして新たな症状が発生したり症状が悪化したりすれば、施術そのものが法を逸脱した障害行為と見なされる危険も増すわけです。
柔道整復は整形外科に比すると、医療事故はどの程度多いのでしょうか?。その比率等について。
今回の日本整形外科学会におけるパネルで日本臨床整形外科医会のアンケートの発表がありました。これは1回めのアンケートで実際の事例を整形外科医の署名付きで拾い上げたものです。そして最近2回めのアンケートを実施されました。それは柔道整復師による施術により患者さんが傷害を被ったり症状の悪化をきたした例に関して開業医からの過去一年間の報告です。以下はその約五千人の開業医へのアンケートから得られた1060名の回答の内容です。柔道整復師による施術により患者さんが傷害を被ったり症状の悪化をきたした例が、ある456名、確証がないので答えにくい393名、ない173名。過去一年間でどのくらいありましたか、一〜五件300名、六〜九件37名、十件以上26名、その内容として転移を含む悪性骨腫瘍の発見の遅れ・死亡 23名、不適切な施術による骨折106名、不適切な施術による症状の悪化356名、骨折・脱臼・靭帯損傷を施術して強く傷害を残した118名、その他91名、などです。パネル直後の毎日新聞で報道されたのはこれらを足した694例というデータです。
頻度を計算するための分母となるべき、接骨所で施術を受けた方の総数はもちろんわかりません。しかもこれは開業医の側からの一方的な報告です。問題はこれら694例の方々のうち、柔道整復師にクレームをつけたり、まして裁判に訴えたりする方はおそらく殆どおられないだろうということです。何度も言いますが医師であれば責任をとことん追求されるのです。法律上そういう資格であり立場だからです。柔道整復師は医師ではありません。その立場の違いが決定的である事を多くの柔道整復師の方々や指導者は理解されません。医師と同等と教えておられるのではないでしょうか。かたやとことん責任追求され、かたや責任追求を免れうる資格が同等であるはずはないのです。
私は柔道整復師の方々が、一旦訪れた整形外科、或いは病院に不満をもって今度は施術所を訪れて来られ、満足を得られている患者さんの数や、その意見を是非調べて欲しいと思います。そして整形外科医へ猛省を促したいと思っています。。
患者は整形外科でも柔整でも良い所に行きたいと思うのですが、患者は何故整形外科を受診せずに柔整に来院されるのでしょうか。現在患者は整形外科が近隣に存在するにも関わらず、柔整に来院されており、柔整から整形外科へ患者が回ったり、逆に整形外科から柔整に回る場合もあると思われますが、この件について患者への忠告も含め、何がそうさせているのか、患者の無知に起因するものなのか、浜西教授のお考えを是非お聞かせ下さい。
柔道整復師の業務が元々柔道現場で発生した応急処置的職種であること、そして急性外傷だけがその施術対象であることを知らない方々が現実に沢山受診しておられるのは、知らせて来なかった、或いはそうでないように宣伝してきたのですから当然です。ですから柔道整復師は結果的にせよ意図的にせよ、法律的には無知な方々を施術対象としているといっていいと思います。もちろん看板に脱臼・骨折・打ち身・捻挫とちゃんと書いておられる年輩の柔道整復師の方には大きな異論が有ると思います。患者さんは知っていてそれでも来られるのだと。私の外来を初めて受診される方の二割は、よく聞くと何らかの医業類似行為施設を経験してから来られます。それらの方々は医療を期待して柔整に行き、失望し或いは症状が悪化して病院に来られます。多くはあきらめておられます。しかし中には法律的に柔整に医療としての診断と治療を求めるのは間違っていたのだと聞かされ、驚き、そして自分の無知さ加減に恥ずかしさを感じる人、施術所で看板はおろかそういった説明が一言もなされなかったことに怒りを感じる人など様々です。しかし、単に施術を受けても一向に症状が良くならないので不安になって、施術所に見切りをつけて病院に来られた方は幸運といっていいと思います。多くのからだサイエンスの読者にとって言葉が過激に過ぎるかも知れませんが一部の施療士による明らかに暴力的施術によって悪化したり、麻痺をきたした人はもとより、時間経過と共に悪化するはずの疾患を持っておられた方にとって、施術所で、場合によって数ヶ月間に及び施された施術は、単に時間の無駄であっただけでは済まないのです。病院であれば当然受けるべき検査・診断、そして的確な治療を受けて治癒するチャンスを逸した、チャンスを大きく減らした、或いは故意に減らされてしまったことになります。
言い換えれば疾患による障害をより多く残す、そして疾患によっては命を縮めてしまうという代償を払わねばなりません。そして実際その代償を払っておられる方が少なくないのです。上で述べた臨床整形外科医会によるデータは開業医の集計であり、20%の回答率を考えると開業医だけでもこの五倍はあるはずとも言えます。しかし施術で不安になった方は、開業医ではなく当然大きい病院や大学病院に行かれることが多いので実数はさらに計り知れません。私達も調査を始める準備をしています。もちろん悪意をもった開業医団体が恣意的に水増しした数であると書き立てる柔整業界紙も、読者の皆様からの反論も沢山あるでしょう。しかし大事な体の変調を相談するのに、人の口コミで評判の施術所を訪れ、体を委ねてしまった自分を恥ずかしいと感じた方は何も言いません。私がしつこく聞いて初めて、実はこういうところで施術をして貰ったのだと答える患者さんも少なくないのです。
しかし、みすみす治るチャンスを潰された、或いは施術で悪化したと怒りを覚えた昨今の患者さんは、病院ではクレームは日常茶飯ですが、施術所にクレームをつけられるのではないでしょうか。そういったクレームの実情や和解の実態を知りたいと思いますが、良心的な柔道整復師の方々や、まして本年柔道整復専門学校に入学した4020名の学生達は知る事がないのではないかと不安になります。あるいは新しい柔道整復師保険制度の稼動状態も知りたいと思います。
もし柔整施設で、施術で満足しておられる方々が多くおられるとすれば(150万人おられますが)そういった方々は自分の体の中で何が進行しているのか、病気が隠れているのではといった不安はさておき、とにかくその日その日に痛みを一時的にせよ柔らげてくれることをしてもらうことに意味があるのでしょう。
その点では患者さんで医師、病院と柔道整復師施設と鍼・灸・按摩・指圧マッサージ施設などの違いを知っておられる方は少ないのではないでしょうか。ただ整骨院・接骨院の看板を見ると一杯病名が書いてある(違法です)、何か病院みたいだ、全部保険が利くようだ、かっこいい若い先生が優しくしてくれるといった程度の差ではありませんか。
忙しい病院や開業医をまず受診された方は、検査や診断は受け入れて一応安心されますが、痛い注射や薬しか処方されなければ、或いは事務員が片手間で行う物理療法に失望し、3軒隣の柔整やアハキに行かれるのでしょう。3200人が資格を得るはずの3年後を待たずどんどん施術所が増えています。
手術やリハビリテーションなどとは無縁の大多数の整形外科開業医にとって、生命線である電気治療などの消炎鎮痛処置が、この4月の改訂で例えば月12回4箇所の施術で比較すると柔道整復師22620円に対して整形外科医は8460円にしかならないなど、柔道整復師の1/2〜1/4にまで引き下げられました。ですからこのままでは整形外科開業医が潰れるのは時間の問題ですが、そうなるとその周りに集中していた施術所も困りますね。潰さないように柔道整復師の方の協力が必要になるかも知れません。
不正請求及び慢性疾患を扱うことについて浜西教授は、不正請求について何も言及されていないように思いますが。東京新聞の高橋さんの発表内容に「問題は、保険の適用は患者にとっても有利なため、両者が口裏を合わせれば不正が発覚しにくい」とあります。患者からすると寧ろ保険適用して頂きたいと望んでいるように感じます。今回の発表内容からすると、「国民が適切な医療を受ける権利を守るためには、医師による同意の問題、受領委任制度を再考する必要がある」というのは国民のニーズと相反していないでしょうか。
患者さんは自分の痛みへの施術行為が『病気に対する治療行為』であると認定され、保険適用され、しかも窓口支払額が少ないほうが有難いのは当たり前です。そちらの業界の言葉で『国民のニーズ』を勝手に作らないで下さい。こちらが聞きたいのは、実際行われている柔道整復による施術がもし鍼・灸・マッサージとあまり変わらないとすれば、同じ行為に健康保険が適用されることは正しいのか、ということです。それは保険組合が判断することであるなら、受領委任払いという昭和十一年からの特殊な取り扱いを柔道整復師だけが許されていることがさまざまの弊害を生んできたという事実を認めますか、という点です。もし認めるならばその制度を廃止すべきなのか、いや同じ慰安行為者であるあんま・鍼、灸にも全て同じ扱いを認めるべきなのか、どうお考えですか。
私達の意見はそちらからみるとまさしくバッシングのように思われるかも知れませんが、整形外科開業医にしてみると昨年開業医が支払われた約6500億の収入の70%は薬や注射や医用材料や器械の減価償却などの経費できれいに消えたのに、柔道整復業界に支払われた3000億の保険収入のいったい経費はどれくらいなのだろうかと邪推してしまうのです。施術所の必要経費というのはいったいどのくらいなのですか。読者の方から教えて頂きたいと存じます。
高年のご婦人が何故気持のよいことを求めていると判断されるのかが、今一つ理解出来ません。
五十過ぎの女性は更年期を迎え体中の不定な症状に悩まされる方が多く、四肢のむくみや関節のこわばりなど運動器の症状が出やすくなります。心理的・情緒的にも一時的に不安定になり、感情の浮き沈みが激しく、何よりも自分の体のことが気になりだします。自分の体の調子や痛みが気になって気になって仕方がない、中高年鬱病という病態になる例も珍しくありません。又、自分の子育てはほぼ終了し、夫はまだ外の世界にいますから、外へ出かける時間的、経済的ゆとりも生まれます。そして様々な健康情報がテレビや新聞や口コミで流れ込みます。勿論糖尿病や高血圧といった、いわゆる生活習慣病も発病してくる年代ですから一層不安になります。
上でも述べましたが、富山県の調査で、整形外科に限らず開業医を新しく訪れた新患1645名を調査すると、接骨院へまず行った方は23%で383名、その年齢分布をみると、50過ぎの女性で46%と半数近くを占めています。このデータは接骨院では不安が解消されず、後で開業医を訪れた方々ですから、実際は接骨院の施術で満足され、施術を受け続けておられる方々はこの何倍かおられるはずですが、基本的にどのような年齢層、社会層の方がまず接骨院を利用しようとされたかが分かります。
医師でもない者が行うことを許されている施術は、原因疾患を診断し、かつ治療するものではありません。しかしそれが判っていて尚施術を求められる方が150万人もいるとすれば、施術が外に現れている痛みや不定な症状に対して施されるものであり、施術が終わるとなんだかすっきりするので患者さんはとりあえずそれに満足されるからだとしか考えようがありません。そして五十歳以降の女性が約半数を占めるのです。もしからだサイエンスであるいは社団日整で施術所に通い続けられる方々の数や年齢分布など正しいデータがあれば是非教えて下さい。
患者が接骨院の方がいいと仮に選択し望んだ場合、柔整師のレベルが上がるように、整形外科の先生のご協力とご指導が求められるところだと思います。薬・注射・手術を嫌がる人は多く、整形外科で一定の治療を受けてから、見離された患者が接骨院に訪れているのも事実では?。患者としては、整形外科でこう診断されましたと柔整師に伝えますので、傷病名がハッキリ判り、後療法としての運動療法や電気療法、生活指導もしやすいのではないでしょうか。そして、患者は気持ちのいいことだけを求めているのでなく、その痛みを取ってくれたり指導してくれる人の人格に惹かれて行っている場合も多いと思います。
母の例ですが、整形外科で治療をして頂いた内容は、殆ど接骨院でされる施術と変わりませんでした。ローラーや赤外線照射等、あとは湿布薬のみです。それについてはどうなのでしょうか?。病名をつけられて保険適用であると思いますが。受領委任を正しく不正がないように出来れば、患者にとっては全く同じであると言えますが。質問が長過ぎませんか
過去にケガした所が今になって痛むというお年寄りや中年層が意外に多く、やはり一日を快適に過ごしたいためにも、週に二・三回接骨院通いするのが習慣になっている人の場合、どちらが悪いということになるのでしょうか。我慢出来ない患者さんが悪いのでしょうか。
病院で診断を受け、仮に疼痛処置として電気治療が処方された場合に、これは近所の施術所と同じであると判断され、又、いわゆる患者サービスをくらべてみて、その結果話をじっくり聞いてもらえ、その人格に惹かれて施術所に行かれるのは全く患者さんの自由です。何度もいうように初回の診断や初療の責任はあくまで医師にあります。しかし治療の選択権は患者さんにあります。その選択肢の中に人格的に優れ、痛みを一時的ではあっても柔らげるように気持ちのよいことをしてくれる柔道整復師のいる施術所が含まれて当然です。
勿論人格的に優れた柔道整復師がおられる施術所の看板には、対象疾患として法律に定められた骨折・脱臼・打ち身・捻挫だけしか書いてないはずです。そしてこれまではそういう看板もよく見られました。しかし看板でそれが曖昧にされていたり、肩凝りや腰痛など他の病態や、まして椎間板ヘルニアなどの病名を羅列して堂々と法律を犯している施術所は、人格だけで動いているのではないことは明らかで、患者さんにとっても業界にとっても要注意ではないでしょうか。患者さんが施術所の限界を知っておられ、それでもやはり施術を選択し、柔道整復師による『運動療法や電気療法、生活指導』を受け入れるのなら、それを止めることも責める事も出来ません。
その代わりその結果については、患者さんが自分の責任で負うていただかねばなりません。それが分かっているから接骨院から病院に来られる方は、あまり接骨院に通っていたことを自分からは話しませんし、柔道整復師を裁判所に訴えることもなかったのです。
しかし、最近は権利意識の強い患者さんが増えており、その中には施術所で結局騙されていたと怒り出し、何かアクションを起こさずにいるものかとはらはらさせる血の気の多い方もいます。しかし現実には患者さんのすみわけが徹底していて、薬と注射に医院に通いつつ、しかも(違法であることを知ってか知らずか)同じ日に施術所にも通うしたたかな方が多数おられます。又、医院の中には収入には全く繋がりませんが、患者さんへの出血サービスと割り切って柔道整復師を雇用しているところも少なくありません。
要するに柔道整復師のもとで施術を受けることを選択された方は、うちの先生は医師ではないので診断に責任が取れないことを知っていなければならない、施術される方はそれを知らせておかなければならないということです。医師の同意書と同じです。今は病院ではリハビリテーションの手技にもいちいち患者さんの同意書を必要とします。施術の同意書がいるのではないでしょうか。しかし、法的に対象疾患ではないものに施術を施す同意書を取れといっても無理な話かも知れません。せめて『柔道整復師の手はレントゲンよりも正確だ』、などと言わないで、痛みはとりあえず楽にしてあげますが、医者ではありませんから病気を発見したり、その進行を食い止めることは出来ませんし、考えてもいません、それでもよろしいですか、とまず問うべきではないでしょうか。
編集者弁:日本整形外科学会の取材を終え帰途につく間、今回の学会の内容を振り返り、柔整サイドから考えると『柔整バッシング』で終わったのかなと感じられました。確かに、浜西教授のインタビューにあるような内容に本質が表れているものの、複雑な思いです。
--次号は浜西教授が望まれている柔整の反論・論証、この観点で柔整サイドに徹底した取材を敢行し、柔整が培ってきた過去、現状、今後の歩み方を、日本柔道整復師会は勿論、柔道整復師個人からも意見を求めたいと考えます。読者の皆様方のご投稿を多数期待するものです。
再び『からだサイエンス』投稿【柔道整復師よいずこへ】
上の文を投稿して一年たってしまいました。反論も寄せられず、業界はあまり変わっていません。そこで再び投稿しました。からだサイエンス6月号に掲載されます。
今回は主にお金儲けのために柔道整復師を乱造する専門学校業界へ批判の鉾先を向けています。
柔道整復師よいずこへ
私が『からだサイエンス』のインタビューに答えて早一年が経過した。幾らかの波紋を業界に投げかけたと聞くが、柔道整復師を取り巻く状況はどのように変わりつつあるのだろうか。今業界を巡って二つの正反対の話が聞こえてくる。ひとつは
(1)WHOでJudotherapistが仮登録され、西洋医学からは取り残された世界の国々で活躍出来る道が開けた。又、柔道整復師の加入率五十%を切った社団日整であっても、五十周年記念式典では相も変わらず壇上に各大臣や厚労官僚、日本医師会会長代理までずらりと並ばせ、手技はわが国独自の伝統医療だと叫ばせる盛大な祝賀会を開催し、諸先輩の努力と献金で獲得した政治力の健在ぶりを確認して、関係者が悦にいっている目出たい話と
(2)三千人卒業時代を前に、既に異常な開業ラッシュと生残り競争が始まった。保険組合の実態調査と支払い審査が厳しくなりつつある。窓口負担額が増大したというお年寄りの誤解と、接骨院のあまりの粗製濫造ぶりに不安を感じて受診患者数が減りつつある。良心的接骨院が衰退し、金儲けに徹した一部業界団体の接骨巨大チェーンのみが、法の裏を利用し尽くして生き残っていきそうだ、というような暗い話とである。どちらが本当なのか。
私が一年前に無いと断じた、柔道整復独自の柔道整復学や手技体系の構築は進んだのであろうか。WHOからジュウドウセラピストという名前を付けて貰った。やれお墨付きを得た、やれ世界に認知された、と早とちりし、これで世界の医療現場で活躍出来る可能性が高まったと、学生募集広告コピーのように喜んでおられるむきがある。
しかしよく考えてほしい。これは業界として大変な難題を背負い込んだことになるのではないだろうか。鍼灸・マッサージは世界中どこでも行われ、誰でも知っている立派な代替医療である。それではジュウドウテラピーは大丈夫なのか。からだサイエンスの四十九号“WHO特集号”を読むと、流石の武見敬三議員もWHO認知はあくまで環境整備に過ぎないのであり、本家本元の学問的基盤の強化や質の向上がなければ、何の役にも立たないと警告しておられる。
更に、登録立役者とされるWHO神戸センターの川口氏も、世界に認識されることは明るい未来に繋がる可能性はあるが、隠し事が出来ないので恐いことだ、とも述べておられる。そしてWHOでの認知は科学的に柔道セラピーの学問を体系化出来ればの話である、と何回も何回も釘を刺しておられる。
又、医療余りの中では質の悪い人を多く出すことは良くないし、淘汰される前に患者さんに犠牲が出る可能性もあり、業界の危機管理能力に直結すると警告しておられる。正しくその通りで、業界の真の姿と諸問題をよく御存知であり、いかにも業界の救世主のように奉られ壇上に引き出されては、川口氏自身さぞ御迷惑であろう。
そして誰よりも原会長御自身がWHOに認知されたはいいが、EBMに則った学問的なレポートの提出を期限付きで求められ苦慮している、とも述べておられるのである。苦慮されるはずである。捻挫、打撲、挫傷は“亜”急性の外傷であるという概念を、WHOが理解してくれるとも思えない。腰痛で受診した患者が三ヵ月ごとに転倒し、打撲・捻挫し、何ヶ月も柔道セラピーを続けなければならないほどに“外傷患者が多くて危険な日本”の事情をWHOにどう説明するのだろう。
そのような数百万の患者さんとカルテを分析して、どのような科学レポートが書けるというのだ。筑波大学に二億六千六百万円寄付して五年間の期限寄附講座を作るそうだが、指圧・マッサージあるいはカイロプラクティックやオステオパチーの真似事でも考え出すつもりなのか。
指圧・マッサージ・鍼灸に対抗して、ほねつぎ術あるいはジュウドウセラピーという定義不可能な代替療術手技を開発し、それを患者の大半を占める「慢性の腰痛」や「肩こり」といった疼痛に施し、その有効性をエビデンスに則って科学的に証明する報告書が書ける、という奇跡を誰か夢見ているのだろうか。たった5年間でエリートの柔整教育者、研究者を国立大学から輩出させるというニーズも開設コピーも誰が信じるというのか。
勿論、少なくとも大学に寄附講座を作りましたというエビデンスはWHOに提出出来る。しかし、二億六千六百万円を政治献金に使えば、どれほど有効かを知り尽くしておられる方々にとっては、無駄金・捨て金としてはかなりの額に思えるであろう。
私が本当に憂慮しているのは、川口氏が危惧されていたように、これまで世間から半分隠れていたからこそ医療過剰の日本でも存在しえた業界が、今後隠し事が出来ない明るみに出て行かざるを得ないことである。
何の歴史的必然性も国民のニーズとも無関係に、ただ学校業者の金儲けのために、今年二千人、来年三千人、再来年四千人、平成十八年からは毎年五千人の新人の参入を受け入れなければならないという暴挙に、柔整業界が曝されていること。
そして結果的に国民の健康を損なってゆきかねない歴史上の危機に、柔整業界が加担させられつつあること。カイロ業界で横行している詐欺的マルチ商法・資格商法が、柔道整復師研修試験財団の力と厚労大臣の名を借りて、いわば国家規模で演じられていること。そして業界が内包してきたあらゆる矛盾や数々の危険な側面が、町々に溢れる新人テラピストの競演で国民の前に噴出し、曝かれようとしていることである。
五十九校の学校経営者、特に平成十年の判決後争って開校した四十五校の経営者の多くは、恐らく『学校・学園業者』であり、起学は単純に入学金と授業料目当てらしいことは、チェーン学校も含めその学校の名前を見るだけで誰でもわかる。しかも利にさとい業者である。その金儲けがいつまでも出来るとは考えず過剰な卒業生を送り出し始めた今、さっさと縮小・撤退を考えている者もいるに違いない。
学生達は入学後あるいは卒業後、自分たちの前途が学生募集広告のように、きらきら輝いてなどいないことに、それどころか自分は資格商法の犠牲者かも知れないことに、気付いているのだろうか。
医師でもないのに二十一歳で保険をきかせて、医師のように振舞えると煽てられ、それを信じているのであろうか。経営者は論外として、雇われ校長や恐らくこれも五倍に急膨張した質の低下著しい教師陣は、卒業生にどのようなビジョンを提示し、卒業生が社会で受けかねない厳しい評価まで引き受け、本当に医療者を育てる使命感で学生を教育しているのであろうか。
平成十二年開設で今年初めて卒業生を出した、朋友柔道整復、福島柔道整復、両国柔整鍼灸、中和医療、甲賀総合科学、森ノ宮医療学園、アムス柔道整復師養成学院、平成柔道整復、大竹総合科学、四国医療など十専門学校の卒業生の進路が気になる。実習先もとっくに飽和状態である。一部の団体が吸収し、その傘下の巨大接骨チェーンで実習名目に超低賃金で働かされているのだろうか。それでも二千人も抱え込むことは出来まい。まさに資格商法でさっさと開業しなさい。早い者勝ちですよと指導する程度だろうか。
学生は卒業させてしまえば経営者にとっては用無しである。哀れな学生達をこれ以上増やさないためにも、一刻も早く彼らの進路が調査され、明らかにされねばならない。愚かな国家試験合格率競争が早くも始まっているらしい。重要なことは国試に合格して与えられる資格の本当の値打ちと使い道であるが、経営者にとっては国試合格率が金儲けを保証してくれる唯一の基準なのである。
そのため、なりふり構わぬ不正の温床が出来上がる。新設学校で今年の新卒で八十%台の合格率しか残せなかった学校の中で、もし来年トップ10に入ってくるような学校があったら、要注意かも知れない。合否怪しい学生は卒業させなければいいわけだが、多数の留年者を抱え込むことも経営上デメリットである。経営者はどういう手段で合格率を上げようとするのだろう。
新人柔道整復師の生涯教育を保証し、その質に責任を持たなければならないのは、社団日整かあるいは柔道整復研修試験財団であろう。壇上に大臣や議員をずらり並べることを栄光の目標と捉え、あらゆる選挙で血の汗を流して走り回り、多くのお金を献金してきた社団日整の中に、今年の二千人、来年の三千人の新人を受け入れる道は開けたのであろうか。
もし業界の代表を任じる社団日整が、これまで都道府県単位で会員から二重三重に集金して築き上げた政治力、官僚誘導力を誇るのなら、今こそそれを最大限に揮って、新人の柔道テラピスト全員を強制的に加入させ、その実習と生涯教育、そして業界の自浄に責任を持つシステムを行政から獲得すべきである。それこそ五十周年を期して死に物狂いでとりかかるべき行動である。金の力で国立大学大学院を作り”エリート教育者” を輩出させるという夢を見ているどころではないのである。
しかし、もし大半の新人から、社団日整が新聞にいつも叩かれるようにむしろ柔整の名を汚してきた迷惑な存在として無視されている状態を組織が相変わらず坐視するなら、この業界も社団日整も遅かれ早かれ社会から指弾され崩壊するであろう。盛大な創立五十周年式典は、受領委任払いの個人登録から始まり、福岡裁判の敗訴で急坂を転がり始めた『社団日整盛衰記』の最終章を飾る“うかれ花”であった、と語り継がれることであろう。
では柔道整復研修試験財団はどうだろう。三年後に五千人の新人に相変わらず資格を乱発するだろうことは予想出来るが、その資格に責任を持つことも、その数の意味を理解することも出来まい。勿論、理解してはいても百の団体と学校と個人を統制し、国試合格基準を諮問通り本当に引き上げ、卒後も教育と実習を強制的に受けさせ、その資質を向上させる責任を果たす意志も力も期待はできない。団体・学校関係者も交えた寄せ集めの試験財団に、業界を真に律する志しを期待するのが愚かなことなのである。
運動器の痛みを取り扱う代替医療(CAM)は御存知のように多くある。自分の体のことは分かっているから別に痛い注射や薬による“医療”でなくても構わないと思う、驚くほど多くの患者さんが毎日それを利用している。
東京医大の蒲原聖可氏の『代替医療』(二〇〇二年, 中央公論社)によると、アンケート調査の結果、過去一年以内に代替医療に出費したことがある人は六十六%にのぼるという。その内訳は、手技に属するものとしてマッサージ 三十一%、指圧 十三%、整体治療 九%、鍼灸 八%、カイロが 三%である。柔道整復師による接骨はどういうわけかアンケート項目に含まれていない。指圧・マッサージ、鍼灸は代替医療に含まれているのにである。
著者に質問するとアンケートの項目には「整体」「カイロ」という、明らかにCAMに分類出来る施療を挙げたのであると御返事を頂いた。実際に骨折患者の受診など殆どなく、マッサージや鍼灸などのような具体的な施療手段も持たないJudoテラピーを、代替医療の項目にあげにくいのは理解出来る。無免許、無資格のカイロプラクティックや療術師群にとって、指圧・マッサージ師免許や鍼灸師免許は『医療免許』と称され、垂涎のまとであり、それらの免許取得者をどれだけ加入させるかをカイロプラクティックの団体は競っているらしい。しかし、柔道整復師免許は療術の役には立たないので、垂涎のまとではなさそうである。
かつては医療を補佐すべく医療過疎地で内科医などと連携し、だれもやらない運動器疾患の保存的治療を一手に引き受け、地域で尊敬され活躍してこられた柔道整復師が多くおられた。勿論柔道の有段者であり、警察官として苦労された方々も多い。その労に報いるためにも与えられた受領委任払いである。
又、臨床X線技師の資格を取り立派な撮影装置を持っておられ、責任“診断”を行っていた方々も少なくない。基本的に陰の業界でしかも汁が非常に甘いので十四程度の学校にとどめ、縁故と金による入学しか認めなかった業界であり、それでちょうど維持出来ていた業界である。
それが今や昨年千百人、今年二千百人の卒業資格取得生数の段階で、大都市の各町内に、いや通りという通りに争って接骨院が開業し始めている。三年後には五千人である。一体彼らに何が出来るのだろうか。
整形外科開業医が疼痛消炎処置の減点(接骨院の1/2から1/4)や、再診回数の制限や、個人負担三割の影響で閉鎖していく時代である。良心的接骨院の経営も危うくなっていると聞いた。危うくなるはずである。
それに既に接骨院の共食いが始まっている。私の患者さんで筋トレの後療を受けるため接骨院に通っている方がおられるが、若い先生には絶対に体を委ねることが出来ないと言っておられた。いくら学校で”資質の向上”が図られて、優しくてみえみえに愛想が良くても、孫のような柔道整復師に身を任せられるはずも、いつまでも話が合うはずも無いではないか。
二万人を支えてきた受領委任払いという砂上の楼閣に、毎年数千人の新しい柔道整復師が群がったどうなるか。崩れるであろう。鍼灸師団体が受領委任払いや診断の自由を求め、厚労省を訴えている訴訟があるが、平成十年の福岡のように常識の欠如した裁判官によって厚労省が敗訴すれば、たちまち十二万人の鍼灸師とその委任団体、再委任団体による最大限の水増し請求が始まり、医療保険額は一気に一兆円を超える。勿論、鍼灸専門学校も金儲け学校産業のターゲットとなっていて福岡判決後2倍以上に増え今年は59校と柔整学校となんと同じ数である。
もし全保険組合が悲鳴を上げ、社会的に粗製濫造の実態が明るみに出され、流石のごひいき朝日新聞までも柔整の糾弾にまわれば、政治家も官僚もここぞとばかりに向こうを向き、通達一本で受領委任払いも廃止されるであろう。そして、もし保険が効かず現金払いで争うことになれば、技術のある鍼灸・マッサージ師の勝ちではないだろうか。
一年前にも言った事をもう一度言わせて頂く。運動器疾患の保存的治療は国民の需要がある限り柔道整復師によってこれからも行われるであろう。しかし、医師ではないからレントゲンは撮れない、MRIは撮れない、血液検査は行えない、すなわち経験と道具を駆使して損傷の評価はするけれども、確たる診断とは無縁の施療行為、またそれ故理論的に、また法的に診断責任や過誤を問われ難い施療行為は、少なくとも医療と呼べるものではないのである。
トラブルになりにくく柔道整復師賠償保険請求件数が驚くほど少ないのも、医療として患者から意識されてはいないことの逆証明であろう。一部の接骨院に多数の患者さんが続けて受診されても、それは医療を求めてであるとはまさか誤解してはおられないであろう。勿論、WHOの民族医療のリストにはレントゲンやMRIなどとは無縁の地域、民族医療、代替医療も多く載せられている事ではあろう。
私もこの数年、柔道整復師業界を外から眺め、素晴らしい方々を沢山知る事が出来た。そしてある程度、その事情に通じ、整形外科医界の危機的状況を憂えるのと同じくらいに、今では柔道整復師業界を憂いている。法を犯し、法の裏をかいくぐり、あるいは抜け道を利用して肥え太ろうという部分は柔整業界に、そして勿論医学界にもある。そしてそういう部分しか生残らないかも知れないほどに、社会状況は悪くなりつつある。
しかし、人の命を扱う職種をそれこそ金儲けの道具におとしめ、医科大学まがいの宣伝広告で若者を釣り上げ、その夢を食いまくっている学校・団体経営者達を許すことは出来ない。皆様はどうお考えだろう。
日本鍼灸マッサージ新聞読者の柔道整復師の皆様
2003.8、
下記は第29回日本骨折治療学会において私が会長講演した際の抄録原稿です。本紙記者の方より依頼が有り、一部手直しを条件にそのまま本紙に転載して頂くことを了解しました。これは整形外科勤務医への警告文ですので、極論と私の独断とがちりばめられたものとなっています。本号には記者の方の学会印象記も掲載されるようです。ここはおかしいと感じられたらどのようなご意見でも結構ですからお知らせ下さい。
『整形外科医を取り巻く医業類似行為の世界』
運動器の痛みを取り扱う代替医療は沢山あり、痛い注射や薬による“医療”はいらない多くの患者さんが訪れている。それらには3万人の柔道整復師、10万人の鍼師・灸師や10万人の指圧マッサージ師、そして無免許無資格の実数不明のカイロプラクターや整体といった療術師、そしてそれらから派生した詐欺的民間療法まで百花繚乱である。国民調査によると肩こりの半数、腰痛でも最多数の人がまず受診するのは医療施設ではなく、こういった代替医療施設である。痛みや不安を気持ち良くほぐしてもらえるはずの慰安施設であるから、受診者はかなりのお金を窓口で支払わねばならない。ところが中には非医療行為であっても全部保険が効く施設がある。それが柔道整復師のいる接骨院、整骨院である。自己負担が他に比較し少額ですむので繁昌する。それに目をつけた学校・学園業者によって柔道整復師養成の専門学校が乱立し、高卒者、大卒失業者、リストラサラリーマン、理学療法士も含め入学生を大量に集めている。平成10年には14校1000人強であったが今年は59校に5350人が入学し、たった5年で5倍増の異常さである。しかも国家試験の新卒合格率が92%と高く、今年は2100人が厚労大臣から免許をうけている。毎年1000人ずつ増え3年後にはこれが5000人になる。当然新築の(鍼灸)接骨院の乱立や患者の奪い合い、学校の淘汰がすでに始まっている。しかし依然として彼等の中心団体の50周年式典には坂口厚労大臣、塩川財務大臣以下国会議員が並び、日本医師会の坪井会長まで手技は我が国独自の伝統医療であり世界の柔整になるように祈るとエールを送る始末である。柔道整復師の職分は法律上、あるいは保険支払い適応は『柔道整復』という名の通り、外傷、つまり打ち身、捻挫、脱臼、骨折に対する施療である。手術・投薬以外の全ての保存的治療をX線・画像・血液検査などの補助診断手段なしに行うのである。そして3月13日の朝日新聞に『レントゲンしか見ない2軒の整形外科医にはわからなかった肘の脱臼を3軒目の柔道整復師が丁寧に診察して発見した』というような投稿文が掲載されたりするのである。保険組合が急性、“亜”急性の外傷しか支払わないようにと指導しても、高齢者の変性疾患が微小な“慢性”外傷によるものと業界流に解釈すれば挫傷というみなし病名が使えないものはない。しかも伝統的民族医学と称して、診断に責任を伴わない職種であるため、過誤施療による見落とし、手遅れ、症状悪化例が必然的に発生する。骨折治療学会会員方はそういった症例を経験しているはずである。この診断の欠如した慰安行為に医療保険が適応され、おまけに受領委任払いという特権まで与えられて、数年前に既に3000億円の療養費が支払われている。今後柔道整復師の供給が激増するのでこの額は跳ね上がるであろう。かたや整形外科開業医への支払いは高い薬剤料も何もかも全て含めて数年前6500億であり、昨年4月の大幅な減点措置にもあきらかなように削減され続けている。逆転するのは時間の問題である。
鍼灸業界でも現在鍼灸師団体が厚労省と民法委任を認めない健保組合を訴え、鍼灸師へのこれまでの差別的な取扱いの慰謝料と謝罪を求め、あげく受領委任払い扱いを要求している。かなりの可能性で勝訴しそうである(結果は敗訴)、というか厚労省側はどうやら受領委任払い扱いを認めて和解したいらしい。鍼灸業界には医師の同意という文明社会の最後の一線をも突き崩そうという意図があり国会議員が動員されている。しかしもし鍼を刺すという侵襲施術が自由に行われるようになると激増する合併症が社会問題化し、結局どちらの業界も崩壊するであろう。なぜなら鍼灸養成学校も最近倍増し、これもなんと59校、鍼灸師数も5年前の800人が今年2660人、3年後には5000人にまで乱造されつつあるのである。
アメリカには125の正規の医科大学のほかに、手技治療から始まったオステオパチー医科大学があり入学基準点が低く、入学しやすいので現在20校まで増加した。しかも卒業後正規のレジデントを修了すればどんな専門医にもなれる。高名の脊椎外科医もいるが家庭医、プライマリーケア医などへのなり手が多い。もちろん専門医師になり医療保険が使えるようになれば手技治療などはもはや行わない。市場原理でアメリカ医療を牛耳る保険業界が好む、安上がりの医師という存在である。同様に足専門のポディアトリストも州によっては人工膝関節置換術まで行う。学士入学で3年間の教育を受けるカイロプラクティークも盛んである。日本でも外資系保険会社が参入し、『強いアメリカ』の圧力で市場原理が導入されつつある。ひょっとすると彼等は日本でも契約保険金の安い患者の為に、高い薬や医療材料を用いない安上がりの外傷医を探し、契約しようとするかも知れない。その時に、はたして高額の医用材料を濫費している今の整形外科医にお呼びがかかるだろうか。柔道整復師が高卒専門学校出身だからだめなので、アメリカのように学士入学にして柔道整復医科大学にすれば問題ないという意見も有る。将来そうなるべきであり反対はしないが、今乱造されつつある柔道整復師の、生き残りをかけた過当競争に既に国民が巻き込まれつつあるという事態はどうすることもできない。おまけに日本独自の医療システムを崩してアメリカ資本に差し出そうとする小泉改革の一環として、接骨院など非医療施設の広告看板が規制緩和される。今でもわかりにくい接骨院と医院をますます区別がつかなくしようというわけである。Judotherapistという、WHOが民族医療として実態・有効性調査というおよそ実践不可能な条件付きで仮登録した英名まで、いち早く看板に書いて宜しいという異例の措置も含まれる。
日本骨折治療学会会員は勤務医が9割を占めている。雇ってくれる病院がある間、しばらくは手術技術だけで食っていけるかもしれない。しかし良心的一般病院は倒産連鎖の中にある。しかも、もし自立開業を考えればとたんに地域での整形外科専門医にふさわしい“医療”を求める水準の社会が存在していないことに気付くことになろう。戦後、柔道整復といった業種の存在を許す社会は50年も遅れているとGHQに指摘された通りに、見事、なりつつある。
鍼灸が危ない
日本鍼灸マッサージ新聞鍼灸版投稿記事 2003.9
* 『鍼灸が危ない』
鍼灸師の皆様、今回第29回日本骨折治療学会の会長を務め、その会長講演として『整形外科医をとりまく医業類似行為の世界』と題して講演し、講演概略は本紙柔道整復師版に掲載されていますが、学会の取材にこられた本誌記者のお話を聞いて心底不安になりました。以下に述べることは私が最近得たばかりの、浅い理解によりますので間違っているところも多々あると思いますが御容赦下さい。あとでご意見をいただけると幸いです。
鍼灸師は国家資格で、かっては鍼灸師のかなりの部分は柔道整復師の資格も持っておられましたが最近の鍼灸師はどうなのでしょうか。これまでは医師の同意があれば、慢性の6疾患(腰痛、50肩、頚腕症候群、リウマチ、神経痛、頚椎捻挫後遺症)を鍼治療して療養費の保険請求が可能でした。(最近、変形性膝関節症まで対象に加えよとの主張があるようですが、内側型変形性膝関節症の痛みとまぎらわしい伏在神経痛がありますからO脚変形の明らかに存在するような変形性膝関節症まで適応疾患名に加えよと要求する必要はないと思います)。私も治療に限界を覚え、鍼治療に同意している患者さんが数名おられます。しかし現実には自分の西洋治療をgive upしてまで鍼灸師に同意を与える医師はまだ少なく、療養費を請求する手間も面倒であり、何よりも自分の鍼灸技術に誇りを持っている多くの鍼灸師は、6疾患にこだわらずに広く施療し、その代価としてふさわしい額を患者さんから直接徴収されてこられたと聞きました。
現在、柔道整復師の場合、医師の同意書無しにほぼ自由に保険施療を行い、しかも慢性疾患であっても捻挫、挫傷のみなし病名で受領委任払い制度を最大限に利用し、年に約3000億円もの保険収入があるのに比較し、鍼灸師の保険収入は年70億円くらいです。そのため一部の鍼灸師には強い不公平感、被差別感があり、最大のネックである医師の同意書条項を反故にして自由に『診断』して『保険鍼灸施療』を行いたいという悲願があると聞いています。それから柔道整復師のように受領委任払い制度を手に入れて対等の収入を得たいという希望も当然あることでしょう。 私の理解では医師の同意さえあればこれまででも鍼灸師は民法による患者からの委任行為として事実上受領委任払いを利用できたはずですから、要は医師の同意書条項の形骸化こそが最大の戦略目標であるわけです。
柔道整復業界にもあるような国会議員団が、鍼灸業界にも当然あると聞いています。それらの運動で昨年の基本回数制限撤廃などさまざまの要求が実現してきたようです。そして7月に2名の国会議員により、衆参両院議長あての質問書という形で、昭和25年や42年に通達された医師同意を必要とした条項の有効性、文言の是非を問うなどしてゆさぶりがかけられている事を知りました。
また数年前から一部の鍼灸マッサージ師団体が千葉地裁で厚労省と民法委任を認めない保険組合を相手取って慰謝料の請求と謝罪広告、そして受領委任払いの認定を求めて提訴していると聞いていました。そしてその成り行きを注目していたところ、結審が近づいてなんと被告厚労省側が8月19-20日に和解の席につこうとしているそうです。この版が出るころには新しい進展があると思われますが、私は厚労省は慰謝料や謝罪広告は決して認めないでしょうから、既に民法委任で現実には存在している受領委任払いをどうぞと差し出す可能性が大ではないかと推測しています。その上で政治家の圧力に弱く、柔道整復で既に前例を持っている厚労省ですから、いよいよ同意書条項を形骸化するような歴史的通達をもう一本、国民の知らないすきにそっと出してしまう可能性も大です。
しかしですよ、もしもそうなると柔道整復に続いて鍼灸にまで、おそらく『西洋医学に基づくさまざまの検査を利用した診断行為は資格上許されていないのだから裏にどんな深刻な病気が隠れていても知らなくていい、患者が訴えている表の症状だけに施療するのである』と主張し、医師の関与や正しい病態の診断なしに、『非医療行為である鍼行為』を『医療行為』として認める道、しかも『医療保険財政』に負担させる道が制度として開かれてしまうことになりませんか。
既に鍼灸学校も学園産業の格好のターゲットとなって今年4月には2700名近い鍼灸師が誕生していますが、今年4月には柔道整復師の養成校と同じ数の59校が募集しているそうですね。平野貞男代議士の質問書を読むと定員は4年前の6倍になったとありますが本当でしょうか。新設校であるが故に、古い学校にはあった附属治療院での実習経験も乏しいかあるいは全く経験のない、未熟な新人晴眼鍼師が乱造されるのは柔道整復学校の例を見ても明らかです。彼等に医療による診断と同意という文明社会としての最低限の規範にすら縛られることなく、夢のような保険収入を得る道が開かれ、そのため制限無しに鍼をうちかねないという状況を、心ある鍼灸師の皆様はどう考えておられるのでしょう。危険ではないのでしょうか。これは1000年の民族治療として伝統を誇る鍼業界の本当の危機ではないでしょうか。
柔道整復師の場合、実際に施療しているのは、今は骨折・脱臼ではなく、鍼灸師と同じ慢性病態です。それらに対する施療も、柔道整復の場合は独特の施療技術はなく、カイロ手技の真似事さえしなければ比較的危険も少ないということができました。しかし鍼治療は異物の人体への刺入という明らかに患者さんへの『侵襲施術』です。もしも糖尿病のような基礎疾患があると大変です。疲労感、倦怠感、眠気、症状の一次的悪化,出血、掻痒、めまい、気分不良といった副作用や、気胸,脊髄損傷、感染、B型肝炎、臓器内異物、銀皮症といった既に報告されている合併症が、大量の新人鍼灸師によって激増する可能性があり、それこそ社会問題化して明るみに出てしまうのではないでしょうか。痛みをともなう施療だから患者さんの数はそれほど増えないという考えもあります。しかし供給が需要を生み出す医療・医療類似業界です。何より障害をこうむる患者さんの数ではなく制度的に危険になる、ということが大変な問題なのです。
東洋医学に基づいてヒトの命と治癒力を大事に扱ってきたはずの伝統的施療であるのに、もし有責医師による同意から制度的に離脱したりすると、鍼灸がこれまで視力障害者も加えて民間施療として細々と地道に維持してきた一定の信用をもくつがえしてしまいかねない事態が起りえます。その視点を欠いてこれまでの不公平感と被差別意識から議員や裁判所まで動員して要求を通そうとする部分があるのが、心情としては理解できても、その動きの招きかねない将来の状況を考えると国民の一人として憂慮せざるを得ません。
大量の医師が鍼麻酔技術を学びに日本から中国へ押しかけた時代もありました。鍼は確かに体本来の持つ神経生理系統を直接乱す効果があり、注意深く行えば施療として有効でしょう。だからこそ一層乱療は危険であるとともに、医療による正しいコントロールや診断、医療との連携が欠かせないのではないでしょうか。むしろ今は医師の同意の内容・文言を吟味し、現代医療の視点からガイドラインを策定し、医師や国民が安心して体をまかせることができる開業鍼灸師・業界に一層向上してゆく一致した動きこそが求められているのではないでしょうか。
既に医師による有責診断と同意からの離脱を“勝ち取っている”柔道整復業界は、金儲けに徹した学園産業に踏み込まれて、3年後にはわずか5年前の5倍という5000人にものぼる大量の、すぐに開業できて保険収入でうんと儲かるという夢をうえ付けられた新人をかかえ込もうとしています。そのため団体の乱立する業界内部は既に混乱して統制を失い、巷にあふれた新規開業(鍼灸)接骨院の過当競争や、あやしげな民間療術をも取り込んだ乱療によって国民の健康をさらに損ない、しかもそれが公になる、業界始まって以来の危機的状態を経験しつつあります。これは皆様の半数は柔道整復師の免許もお持ちのそうですからよく御存知でしょう。もしも鍼灸業界が同じわだちを踏んで有責医療との関係を断つことに成功したりすると、もっと深刻に、しかも大規模に社会問題化しかねないことを憂慮されるべきではないかと思うものです。
今、一刻の猶予もなく社会がそして柔道整復やあはき業界が一致して対応を迫られているのは、数年後には柔整・鍼灸あわせて計120もの学校から毎年1万人以上生まれてくる、世界に類をみることのない非医師群への対策ではないでしょうか。学園産業はまだ学校を創り続けるつもりですし、金儲けにならないと察するといち早く学生を放り出して撤退を図ろうとします。各都道府県のあはき団体方はこのまま何もせずその大波の藻屑と消えますか。一番の難問題は皆様の業界が社会から民族医術として信頼されて認知され続けるために、どう団結し、自浄し、教育し、そして切磋琢磨してゆけるかでしょう。現在乱立している業界団体はできるものなら結束してその力をまとめ、一部で突出した政治力や闘争力を、今すぐ新人鍼灸師、学生の夢を食い物にする学園業者、そして何より自分の業界に向けるべきではないでしょうか。“お上”との差別闘争を、高みからもっとやれやれと見物している場合ではないでしょう。このまま手をうたないで推移するとおそらく鍼業界は大変なバッシングをうけて崩壊するのではないかと危惧されます。
この拙文はおそらく一整形外科医の妄言として無視されるであろうと思います。しかし柔道整復、鍼、マッサージ、そしてカイロ、整体など様々の医療と称する類似行為によって被害をこうむった患者さん(その中には単に時間とお金の浪費ですんだ方、脊椎病変や外傷など局所安静が必要な病態に施療を施されて悪化した方、そして診断が出来ないので当然ですが悪性の病態が見過ごされて手遅れになった方々も含みます)は黙って、あるいは恥ずかしそうに整形外科にこられます。後始末が可能な傷害であればそれも我々の仕事でしょう。しかしそのような患者さんで整形外科がいくら繁昌しても、日本社会の後進性を嘆くことはあっても決して感謝したいとは思いません。
上記の文を読まれてこれはおかしいと思われたり、憤りを感じられたらどのようなご意見でも結構ですからお寄せ下さい。私がもっとも必要としているのは皆様からの生のご意見なのです。
介護保険とマッサージ
―あはき柔整師による介護保険を利用した不正 ―
* ある医師からの質問 私ども----病院(川崎市)整形外科は従来代替医療の同意書の発行は見合わせております。先日当科で手術を行い、現在在宅でリハビリに励んでおられる患者様から申請が出て、要介護の認定を受け、近所で通所サービスを受けておられます。そこのマッサージ師から主治医の同意書をもらって来いと指示され、病院の事務が事務的に受け付けて、書類が回ってきました。今までどおり、代替医療の問題点を患者様に説明し、当科では同意書は書けないことを了承してもらう予定ですが、マッサージ業界も通所介護などを良い機会としてサービス(?)を展開されているようです。HPの一節にも「医師の同意書があれば、医療保険の適応となり、介護保険と医療保険の併用が可能となります」とあります。今までと違って、介護保険通所サービスセンターからの依頼ですので、従来どおり対応してかまわぬのか、判断できませんでした
* 関係者の意見 「介護保険の制度の中にマッサージというサービスはありません」。従って介護保険でマッサージは受けられません。このマッサージ師が求めているのは、医療保険でマッサージをしようとしているのです。医療保険でマッサージをしようと思えば、医師の同意書が必要となります。そのため同意書の発行を求めているものと思います。--先生ご提示のHPの中にも、医療保険でマッサージと記載されております。ただ記載の仕方が上手いのか、あたかも介護保険で利用可能のように見えます。尚、鍼灸マッサージ師、柔整師が介護保険に関与できるのは、(1)ケアーマネージャーとして、(2)介護保険利用の施設内で機能訓練指導員として、の2者であります。従って、施設内で、機能訓練の一部としてマッサージをしようが、何をしようが自由ですが、それに対する同意書は全く不要です。同意書を求めているのは、あくまでも医療保険を使用するためのものです。そして、行ったマッサージを往療(往診のこと)として請求するのか、自分の所に来た事にして請求するのか、いずれにしても違反です。同意書をもらって自分の施術所でマッサージをするのは合法です。大阪でこの手の大量の違反(マッサージでなく打撲捻挫で柔整師が施術)が見つかり、請求額の返還命令が出されました。(返還のみで何ら罰則はありませんでした。医科であればおそらく保険医停止でしょう)
* 回答 結論を言えば、介護保険の中ではマッサージや鍼灸サービスへの療養費支払いは認められておりません。ケアマネあるいは機能訓練指導員として存在する柔道整復師や鍼灸、マッサージ師が、自分の担当になった方を、黙って、あるいは聞くところによるとさまざまの諫言や恣意的なアドバイスによって患者にしてしまい、自身が行える手技施療を、本来は機能訓練サービスに過ぎないものでありますが、医療保険を適用させようとして同意書を要求するわけで、そのような事例が全国的に多発しているようです。介護施設で行っているのに保険請求する場合はもちろん違法であり、もし同意書をもらって自分の施術所に連れて行って施療する場合は合法といえますが、鍼灸の場合慢性の6疾患(腰痛、50肩、頚腕症候群、リウマチ、神経痛、頚椎捻挫後遺症)に対してであり、しかも他に治療法がない事を患者につげて同意・紹介することになっていますから医師として同意することは簡単なことではありません。先生の施設が代替医療の同意書の発行は見合わせておられるのは卓見であります。先生の事例の場合、介護保険患者さんは通所サービスをうけておられるようですが、これが鍼灸院へ通所することであれば、介護保険とは何の関係もないことになります。介護保険通所サービスセンターからの依頼というのは、医師を混乱させようとの意図にもとづくまやかしであり、同意に関しては当然従来どおり対応されてよいかと存じます。
蛇足ですが柔道整復師が自分の接骨院を通所介護施設にする例も増えていますが、その場合は同意書もいらないし、該当者をすべて打ち身、挫傷といった外傷患者にしたてて療養費を請求できますので、その誘惑に負けてしまう柔道整復師が多い様です。彼等の過当競争があからさまになってくると医療というものが国民の目から隠されてしまい、国民の体はますます危ない事になりそうです。
* 参考
* 第4 あん摩・マッサージ・指圧師の施術
1 医療保険の支給対象
療養費の支給対象となるのは、あん摩・マッサージ・指圧師の施術のうち、医療上必要があって行われたと認められるマッサージが対象である。
このマッサージの適応症は、一律に診断名によることなく、筋麻痺・関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要とする症例について支給対象とされている。
被保険者が療養費を請求するときは、支給申請書に医師の同意があったことを証明できる同意書等を添付する取扱いになっている。
温罨法・電器光線器具使用の加算、往療料も認められているが、往療に関しては、医師の同意が必要である。その傷病が療養の給付として、保険医療機関で十分治療目的を果たすことができない場合に療養費の支給要件に該当する。
療養費の支給の対象と認められるマッサージは、筋麻痺、片麻痺に代表されるように、麻痺の緩解措置としての手技、あるいは、関節拘縮や筋萎縮が起こっているところに、その制限されている関節可動域の拡大と筋力増強を促し、症状の改善を目的とする医療マッサージである。本来であれば、保険医療機関において専門のスタッフによる理学療法の一環として行われる医療マッサージが療養費の支給対象となる。したがって、単に疲労回復や慰安を目的としたものや、疾病予防のマッサージ等が支給対象にならないことはいうまでもない。
日経メディカル2003.11月号投稿原稿
*
地域の整形外科医療があぶない
私は、常々、接骨院を営む柔道整復師と医師とは、非医療と医療という意味で異質のものであると訴えてきました。そういう中で、本誌8月号のスペシャル・リポート「代替医療とのメ仁義なき闘いモ」ではその見出しにも現れている通り、整形外科開業医と接骨院を同列に扱い患者を奪い合っているという主張が展開されていました。その後、依頼がありましたのでここで私の意見を述べたいと思います。
まず、現在の状況は国民にとって一領域の医師と非医師の縄張り争いで済む話ではないことを強調しなければなりません。ここ数年の接骨院や鍼灸院をはじめ、マッサージからカイロや整体に至る、関節や脊椎といった運動器を扱う代替医療、医業類似行為業者のはんらんは、わが国の医療を、そして国民の命を考える上で重大な問題をはらんでいると言わざるをえないからです。
本誌の記事にもありましたが、柔道整復師養成施設の乱立に伴い、柔道整復師の資格を得る者が劇的に増加し、4年前は1000人であったものが今年は2300人、4年後には何と毎年6000人以上にも達する予定です。専門学校で3年間学んだだけの若者が、実習の経験もないまま接骨院を次々と開業しています。しかしすでに過当競争状態であり、運動器の症状を訴えて来院した患者さんを何とかマッサージや電気療法で引き止め、保険請求しようとするいわば違法な状況がさらに悪化することが確実なのです。
一方、整形外科では、6年間の医学教育と6年間の専門研修をへて運動器専門医と認定される医師数は毎年500人程度にすぎません。またそのうち30代という若い働き盛りで開業する予定の医師はおそらく30人にも満たないでしょう。開業医は、昨年、これまで診療報酬の中で大きなウェイトを占めていた理学療法がほとんど無料サービスになるほどに診療報酬が改悪されてしまいました。そしてたちまち陥った経営難を背景に、私の膝元の近畿大学の医局でもついに来春新規開業予定者がいなくなってしまいましたし、医院を閉鎖する例も出始めました。医学生も開業できない科への興味は薄れつつあります。このままではさまざまの悪性疾患も隠れている肩こりや腰痛、関節、神経の痛みなどの運動器疾患を初診するのは、地域では医師ではなく医業類似行為者に移ってしまうでしょう。社会が、そして行政が運動器疾患に医療はいらないと宣言しているようなものです。
これは、誰が考えても国民の医療福祉には逆行する流れではないでしょうか。柔道整復の根本的な問題は、それがもともと外傷対応の職種であり、背景にどんな重大疾患が隠れていても、それを見落とした責任も正しい診断無しに行った施療への責任も問われない職種であることです。これが診断責任、治療責任をいちいち厳しく追求される医療とは異質のものであると冒頭に書いた理由です。柔道整復師の保険施療対象となるのはうちみ、ねんざ、そして脱臼、骨折の応急処置であります。しかしそれを知らないで慢性の腰痛や肩こりで受診して重大疾患の発見が遅れた患者さんをあなたの自業自得ですよと言わざるを得ない状況を、そしてそれが一層拡大するであろう状況を医師として、傍観していることはできません。もちろん脊柱・骨盤の矯正で全て治ると称する非医師・無資格者の暴力的矯正によって引き起こされる脊髄損傷にいたっては尚更です。
運動器に不安を持つ患者さんは、すべて、運動器専門医師が初めに相談を受けるべきなのです。
しかしそのためには、現在の整形外科業界の手術偏重の研修体制が見直されるべきであります。最近私は、日本整形外科学会に、若くして地域で働く使命を帯び、代替医療に寄せられている国民の大きなニーズを正しく理解し、それらを医学的に指導し利用できる、運動器疾患専門医を養成すべきであると提言しました。
私は、国民の疾病は診断・治療に責任のある医師がまず担うべきであると信じていますが、皆様はいかがでしょうか。運動器疾患においては、整形外科医がその責任を果たさなければなりません。しかし今のままでは地域から消えてしまうでしょう。その理念を維持し、新たなものを立ち上げていくためには、学会だけではなく、行政にも訴えなければなりません。しかし私は特にマスコミの働きに期待しています。
2004年1月16日千葉地裁で判決あり
* 5年前にNPO全国保険鍼灸師マッサージ師連合会と125人の鍼灸マッサージ師が国と民法委任を認めない健保組合を訴えたものである。
* 柔道整復師には認められている療養費の受領委任払いを鍼灸マッサージ師に認めないのは不当な差別である、国民の権利も侵害
* 精神的慰謝料請求、謝罪広告、受領委任払い要求
1月16日判決
* 原告敗訴
* 受領委任払いを柔道整復師だけに特例として容認
その理由
* 整形外科医の不足を補う。現在その合理性に疑義なしとはしない。
* 応急手当てには医師の同意なく施術できるなど医師の代替機能を有する
* 疾患は外傷性のもので発生原因が明確、他疾患との関連が問題となりにくい
* それに対して鍼灸マッサージの場合、療養費対象疾患の多くは外傷性疾患ではなく発生原因が不明確。治療と疲労回復などの境界が明確でない。
* 施術を行う前に保険者が至急要件の確認を出来ない
* などの理由で受領委任払いを認めることは適当ではない。
* 柔道整復師が医師の健康保険法における地位に照らすと医師の代替的な機能を有していることは意味の有ることでありーー
* あはき;すでに7割以上の保険者が委任を認めているではないか。
1月16日千葉地裁判決に対する浜西の評価
* 被告側(厚労省、健康保険組合)主張を全面的にうけいれた判決
* 受領委任払いは健康保険法上積極的に容認されてはいないと指摘されたので、あはきの民法受領委任払いをすでに認めていた7割の保険者まで今後後退する可能性がある。
* 柔道整復師の場合は、医師の代替機能を有し、対象疾患が外傷で明らかであるという2点の理由で、特例として認められているのであり、これ以上拡大しないという条件でその存続が認められた。
* 柔整の受領委任払いはあくまで特例ではあるが司法認知され、あはきは持っていたものまで奪われかねないという結果か。
* あはき側はこの論旨のまま控訴しても原告側の主張が認められる余地はほとんどない。
しかし敗訴により鍼灸の既存の成果まで奪われかねない状況を招いてしまい引っ込みがつかない。NPOは窮地に。控訴する方針は決定している様子。
* 司法上、柔道整復師受領委任払いの認知理由が明らかにされた。
1. 医師の代替機能を有する
2. 対象疾患が外傷で明らかであるので不正が起こりにくい。
* この点は、実態とかけ離れているので、逆にその点で柔整の受領委任払いに訴訟が起こされる可能性がある。
* もし同じ裁判官が柔整受領委任払いの疾患内容の実態を知ったら、おそらく健康保険法上違法状態であると断じざるをえないであろう。
* 柔整側にとっては存続は認知されはしたが、その存続の前提が実態と大きく違うので、逆に存続があやうくなりかねない判決。
* しかし被告側証拠として裁判所は平成5年の柔道整復師に不正請求が非常に多いという会計検査院勧告を採用している。厚生労働省としては勧告に応え、審査・監視体制がちゃんとできました、という意思表示、だから受領委任払いは柔道整復師には、あくまで特例として、妥当であるという主張。
* NPOとしては会計検査院勧告に対して是正や改善がみられない点等、柔整の実態を訴因に載せることができれば逆転は可能かもしれない。
l しかし逆転勝訴の結果は受領委任払いを手に入れることではなく、柔整との差別をなくするという点においてであろう。
小泉内閣が規制緩和と称して、政治抵抗の少ない医療部分で改悪をごりおししています。
その一つが危険な放射線の取扱いに関して素人に等しい柔道整復師にレントゲン撮影とレントゲン診断を許そうとする提示です。home pageでパブリックオピニオンを求めています。さすがに厚生労働省は対応不可能という回答をしましたが(参考資料1)、改革会議は再び、そういわないで、レントゲン照射くらい、ポータブルなら素人でも大丈夫だから認めてやる方向で再検討せよ。日時もあきらかにせよと迫る異常ぶりです(参考資料2)。そうすると厚生労働省は同様に、対応は困難であると回答しており、措置の分類 c:全国規模で対応不可と言う範疇を提示しています。(参考資料3)これは、常識的には不可能だけれど、政治的圧力いかんでは例の特区内でなら認めるかもしれないというふくみも感じられます。既に現に働いている政治的圧力の強大さをひしひしと感じます。そこで抗議文を作成致しました。このhome pageを読まれて医学医療の危機であると同意して下さる方は厚労省home page http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/ に抗議をして下さると幸いです。
内閣府総合規制改革会議殿
御会議がさまざまの行政分野において規制緩和案を提示され、実現させておられることに敬意を表します。
その一つとして『柔道整復業務範囲においてのX線検査(ポータブル)の導入』を提示しておられます。
御会議からの要請に対し、厚生労働省は、人体に被害をおよぼすエックス線照射にかかわる業務は、専門教育と知識、技能、資格を必要とし、またエックス線診断は医師、歯科医師にのみなすべき行為であるとし、柔道整復師に撮影、診断業務を認めることは適当ではなく、対応不可能である旨、二度にわたり回答しておられます。
これらはまことに当然で、正論であります。
柔道整復師は大多数が専門学校で教育をうけますが、その3年間の教育カリキュラムに放射線業務や放射線傷害にかかわるものは皆無であります。しかも柔道整復は6年前には14校に1000人余であったものが、本年四月には68校に約6000人が入学するといった、一切歯止めのない状態で膨張しつつある業界であります。ここでもし柔道整復師に診療放射線技師と同じ知識と技能、そして医師と同じ診断権が、規制緩和だけの名のもとに付与されたりするならば、これは激増する柔道整復業界のみならず、それ以外の数多の医業類似行為、代替医療行為に対しても、同じ門戸を開放することにつながり、単に医療をおとしめる企図というだけでなく、国民の命を危険にさらし、必然的に世界に冠たる日本の医療そのものを崩壊に導く、間違いなく歴史上の汚点となるものであります。
現内閣府総合規制改革会議が、このような企図を直ちに断念されますよう要望するとともに、このような案件が提示されたことに対し、ここに厳重に抗議致します。
なお一般の方から日本医師会に至る、さまざまのレベルでの抗議の結果、3月19日の閣議決定をみるかぎりこの提案は取り下げられたようです。しかし6月には再び申請するように内閣府は申請者に勧めていますので、小泉政権が続く限り国民の危険は続くと言うことになりましょう。医業でないものの医業への参入企図はこれからも医療のそれぞれの分野で絶えることはないでしょう。監視を怠ってはならないと感じています。
(今回の総選挙で圧勝した内閣としてはもはや遮るものなく日本の医療を日米の企業に切り売りし始めています。アメリカ合衆国の高度の医療と称するものは今回のハリケーン被害でも明らかになったように金持ちしか助けません。日本の医療もそうなるでしょう。)
日本整形外科学会パネル発表要旨(2004.5.23)
*
代替医療の将来 整形外科・運動器科医の対応
近畿大学整形外科 浜西千秋
* 平成10年に福岡で柔道整復養成校の設立を認める判決が出て以来、それまで14校しかなかった学校が本年4月には68校まで認可されてしまい、入学定員も毎年1000人ずつ増加している。2001年の33校への入学生はこの春に卒業し、国家試験受験者はちょうど3000名であった。新卒者の合格率は学校によって54%から98%と格差が大きく、全体では73.8%である。毎年1000人の新卒増があり、不合格者の半数しか再受験しないと仮定し、合格率を低く70%に設定しても、受験者数は3年後の2007年には6800人となり、合格者はひかえめにみて4800人ということになる。
* 本年1月、千葉地裁で、鍼灸師団体が保険組合と厚労省を訴えた裁判で判決があった。判決では柔道整復師に認められている受領委任払いは、そもそも不正請求や逸脱施術を見逃す危険性が大きく、健康保険法上容認し難いものであるが、昭和11年という整形外科医のほとんどいない時代に患者の保護を図る必要から特例として認められたものであり、現在その合理性には疑義がある。しかし柔道整復は応急手当てなど、医師の同意なく施術できるので、その限りで医師の代替的機能を有し、何より対象となる疾患は発生原因が明確な外傷に限られ、他疾患との関連が問題となりにくい。ゆえに特例的措置として、拡大されない範囲で運用されれば、合理性がないとまではいえない。と判断している。
しかし病院や整形外科医の充足した現在、外傷に対する柔道整復師の医師の代替機能は不要となっており、一般の柔道整復師が施療している疾患は、まさに判決が危惧した、非外傷性疾患が多く、まして柔道整復師激増で受領委任払いの拡大は必至である。もし今、訴訟提起されれば、保険施療、受領委任払いのいずれも、もはや合理性を欠くという司法判断が予想される。しかも、判決で不正請求や逸脱施術を見逃す危険性が大きいと指摘された通り、この資格が不正の資格、温床になっている。これは平成5年当時でさえ会計検査院報告であきらかになっているが、過当競争が激しくなった最近は新聞のスクープで悪質な部分がいっそう目立つようになった。たとえば最近、読売新聞によると、ある柔道整復師が整骨院チェーンを経営し、約150人の従業員に無免許で鍼灸マッサージを行わせ、すべての客に保険証の提示を求め、「病名はこちらで考えさせてもらいます」と言って、委任状に署名をさせていたそうである。私にもおそらくこのチェーンで傷害をこうむったという方から相談があったが、資格が悪用され広く国民が傷害されうるという象徴的な事例である。そして不正規模の大きさをみると、うわさ通り日本の裏社会が資格に眼をつけているのではないかと危惧される。また最近、柔道整復師が特別養護老人ホームに出張マッサージを行い、老人をすべて打撲捻挫患者にして請求したと言う事例がスクープされていた。これも資格が保険の不正利用だけに用いられたものである。また大阪市内で配られていたちらしでは、マッサージチェーンで、保険証持参の『保健会員』をこっそり募集していた。これほどおおっぴらに悪用されうる柔道整復師資格を大量に供給するような行政がいったいいつまで続くのであろうか。
* そして最近、医師が、そしてなんと整形外科医師が接骨院を経営し、あるいは同居させるという状況がある。その中には理学療法士と勘違いしたり、業界をよく知らないで利用されている場合もあるが、患者まわしを行い、むしろ柔道整復師免許を利用し、不正をそそのかしているという場合が多いように感じられる。
* 毎年10ずつ増え続ける専門学校は、今や国試合格率至上主義の資格予備校以外のなにものでもない。教師は学校協会が柔道整復師資格取得後わずか3年の柔道整復師から認定でき、専修学校認可に必要とされる選任教師はたった3〜5人であるが、それすら名義借りが当たり前となっている。経営者にとってはもうかればいいだけの単なる資格学校であり、医学教育とか教師の質など問題外で、しかも学校協会に加盟しない学校すらある。実技実習は一応必須となっており、肝心の整形外科医にはない骨折脱臼整復や包帯固定法の認定実技試験が3年生である。しかし骨折整復などは大半の柔道整復師にとって実社会ではもはや用いることのない技術であるため学校の関心は二の次であり、そのため試験官は他の学校の教師で、互いに認定しあい、毎回ほぼ全員合格となる。無駄な実技試験準備は大切な国試勉強の邪魔であるというわけであろう。資格の不正な保険利用を期待され、受験教育された柔道整復師が、3000,4000と年々等加級数的に認可される。なぜ厚労省は裁判敗訴だけを理由に危険な専修校を認定し続け、医師の数を凌駕する医業類似行為者を作り続けるのであろうか。危険なつけを後世に先送りする行政の不作為というべきではないだろうか。
* ここで別の角度から柔道整復師問題を考えてみたい。最近接骨院の受診者のうち、一旦整形外科を受診してから接骨院を訪れた患者さんの割合を調査した。そうすると有名なスポーツトレーナーが経営しているA接骨院ではなんと30%、地方都市部の3院は大体20%、都内8院では低いが7%、そして整形外科過疎の郡部の6院の調査では約6%が整形外科医を受診した後に接骨院を訪れていた。また数%の新患が整形外科に紹介されていた。A接骨院の場合で整形外科に対する不満の理由をあげると、レントゲンで異常なしといわれ、あるいは疾患診断されても、結局治療は湿布だけであったという訴えが88人中79人と大半を占めていた。また筋トレマニュアルを渡されただけというのもある。初診の整形外科医に何が欠けていたために患者の信頼を得られなかったか、整形外科医にとって何が一番必要かがうかがえるようである。もしこれらが接骨院の受診者の10%とすると、少なくとも月20万人以上が接骨院を初診するとして2万人となる。運動器リハビリテーションを希望する患者のかなりの数を接骨院に供給しているのがほかならぬ整形外科医ということにもなろう。ちなみに整形外科初診者数は、平成11年の厚生労働省調査から月100万人くらいではないかと概算している。また東京都内では7%と接骨院転院率が低かったが、これは整形外科医の意識と患者の信頼を得ようとしてきた努力のあらわれかもしれない。
* 柔道整復師が新しい患者を整形外科医に紹介する率は東京都を筆頭に数%であったが、その数はばかにはならない。しかし紹介された場合、その柔道整復師に診断後、運動器リハを依頼することはできるであろうか。あるいは患者さんが接骨院での施療を希望すれば、公式に紹介してもいいのだろうか。当然のことながらあきらかな外傷機転がなければ依頼も紹介もすることはできない。病名や併療など問題が多くあるからである。しかし接骨院を初診する患者がこれほどある限り、その病態に疑問を持ち、自分の施療領域を認識し、医師に紹介できる柔道整復師は貴重であろう。今後激増してゆく若年柔道整復師の中で、せめて良心的な部分として差別化するべきである。そのために適切な返書による指導と、紹介しやすい環境を地域単位で作り上げることが必要でもある。
* しかしいかに一部の医師や柔道整復師が努力したとしても、圧倒的な数で生産される次世代の柔道整復師資格と、その資格だけを利用した、不正でしかも危険な医業類似行為の世界は単に拡大するだけでなく、さらに陰湿で悪質化することが危惧される。この流れを食い止めるのは、思いきった行政措置か、あるいは司法判断にしかないように思える。もしも最近のようにマスコミが遠慮なくスクープ合戦を始め、国民が認可の実態を知ると、当然、非難は認可・管理官庁に向けられることになる。
* 結語
* 接骨院の新来院者の6から20%はまず専門整形外科を受診している
* 施術領域を遵守し、医師に紹介できる柔道整復師は貴重であり、地域で差別化してゆくべきである
* しかし純粋な急性外傷機転以外、医師からは正式に後療を依頼することは問題がある
* 『技術』ではなく、柔道整復師『資格』が期待されまさに乱造されている
* 『資格』の不正利用の実態がスクープされ、社会問題化し始めている
* この危険な流れを作り出している行政の責任が国民や司法から必ず問われるであろう
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* パネル討議
* それぞれのパネリストの発表が終了した後に壇上と聴衆との間で繰り広げられたパネル討論そのものには私は欠席した。そのためその一部始終を紹介することはできない。しかしテープや何名かのパネリストや聴衆からいただいた情報から推測することはできる。
* 私は発表の中で上記のようにこのような、国民にとって危険な憂慮すべき事態をますます加速させている厚生労働省の責任を問い、制度的に改善して行く余地があること、行政の不作為を将来必ずや問われると訴えた。しかし指定発言された官僚の反応は驚いたことに、立法が動かなければ何もしない。政治家がこうしてやってくれと命令してこない限り、法律が出来ない限り動かない、との一点張りであった。3権分立をうたった日本国憲法は何処に行ったのかと耳を疑うような論しか聞こえてこなかったようだ。先輩のひいたレールを何とか無為に走り通すしかない官僚に、何らかの意義ある行動を期待するほうが愚かであったのかもしれない。そしてあげくは専門学校を認可することが我々の業務権限であり、もし認可を制限するようなことをすればそれこそが不作為に問われることである。また法律の改正などをはかることは規制緩和に逆行し、職業の選択の自由を保障した憲法に違反しかねない、などの開き直りの発言が聞かれるほどであった。医者は過剰だから医学生も定員数を減らすのだといいつつ、まさに医療費をくいつぶす資格を乱造する専門学校は、まだまだいくらでも認可しますよと開き直る厚生労働行政をみると?国民の命や健康を護るはずの省や官僚の誇りを感じることはできない。
* しかし立法を代表し、パネルに加わって頂いた参議院議員(日本医師会副会長)から聞こえてきたお言葉は、選挙の票の多寡では整形外科医は柔道整復師組織票にくらべると1/5にすぎない、だから日本医師会も政治家も行政も整形外科は実際のところ相手にならないよという本音だけであったようだ。
* 会場からは相も変わらず柔道整復師は医師ではない、異業種で学問体系も違うのだから交流したり教育してはいけない、同席もしてはいけないとか、お年寄りも子供も捻挫打撲病名でみんな治療し請求している、変形性関節症や変形性脊椎症のお年寄りがころんだりぐねったりそうそうするはずがない、だから柔道整復師は法律違反者だ、などと10年間少しもも変わらぬ原理主義的、教条主義的、似非学問的慢性疾患論がまったく進化せず声高に叫ばれたらしい。こういった単純に割り切った考え方に頼り、固執するだけの体制は会員や国民から乖離し袋小路に入り込むだけであるが、どうやらこれも理解の外らしい。
* 矛盾点を明らかにするために整形外科医が責任をもって接骨院をどんどん経営し、リハビリテーションを指導するようになってもいいのではないかという意見があったようだ。表面的な議論をつきつめればそうなろう。しかしそういった当然あるはずの疑問や手段に対して、あるいはすでにどんどん動き出しているそういう状況に対して、それがどう間違っており、どう矛盾を正してゆくべきかの冷静な議論はまったくなかったようである。
* 整形外科初診患者のうち2万人以上が、診断を得た後は、治療の場として接骨院を選んだと言うような、私の、ある意味ショッキングな調査結果は、どうやら一顧だにされなかったらしい。2万人というのが100万人の整形外科初診患者の中でいったいどう言う意味を持つのか議論はあろう。しかし少なくとも患者からの信頼を得ることに失敗した整形外科医師がこれだけの患者を接骨院に送りだしているわけであり、相手の消滅を図る制度闘争が国民や社会の理解を得難いであろうことも確かである。自浄の議論が出てこない業界が衰退するのは柔道整復業界だけではなかろう。
* 受領委任払いや保険施療そのものを問題とする制度闘争が袋小路であることは今回のパネルからも明らかとなった。だれも前に動こうとはしない。こうなれば保険制度の是非を問う裁判闘争しかなかろう。しかしそれで、柔道整復師への保険施療や受領委任払いがもはや特例ではなく国民の指示を得た立派な医療の一環であるという判決が出たらどうするのだという怖れも有ろう。しかしそうなってもともとなのだからとにかく最高裁まで訴えろ、判事に期待せよというほうが、官僚や政治家に期待するよりも愚かさにおいてまだ少ないように思われる。
* しかし最終的にもっともっと深刻なのは、柔道整復師業界自体が未熟な柔道整復師による施療過誤の激増、過当競争からの苦しまぎれの不正、そして資格を利用した組織的不正の拡大と陰湿化、社会問題化、そして業界共倒れの危機を知りながら、どう律することもできず、正すこともできないこと。そして我先にと、どんどん断崖のふちに走って行きつつ有ることである。そのあとにはもちろん施療過誤の被害者があまた倒れているわけで、その後始末で整形外科が繁昌したとしてもこの日本独特の悲劇に変わりはない。
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