26

24EXAMPLES OF XR(伴性劣性遺伝の例)   (一部筆者加筆)

[重要用語]

a.Hematology Diseases

glucose6phosphate dehydrogenase (G6PD) deficiency(グルコース-6–リン酸脱水素酵素異常症)-----五単糖リン酸回路障害,Heinz小体形成,小型球状赤血球

hemophilia Adeficiency of factorVIII)血友病A

hemophilia Bdeficiency of factorIX)血友病B

 

b. Immunodeficiancy Diseases(原発性免疫不全症候群)

Bruton agammaglobulinemia X連鎖無ガンマグロブリン血症---B細胞の正常の分化が障害

chronic granulomatous disease慢性肉芽腫症(症例の2/3X連鎖,その他は常染色体劣性)

Wiskott-Aldrich syndrome 血小板減少と湿疹を合併

 

c. Storage Diseases(先天性蓄積症)

Fabry disease(α−ガラクトシダーゼ酵素欠損)

Hunter syndrome(先天性ムコ多糖症)--イズロン酸サルファターゼ欠損

 

d. Muscle Diseases(先天性筋疾患)

1.Duchenne muscular dystrophy Duchenne型筋ジストロフィー(重症型)

defective dystrophin genemuscle breakdown)(dystrophin遺伝子欠損)

pseudohypertrophy of calf muscles(下腿三頭筋の仮性肥大)

Gower maneuverusing hands to rise from floor)(登攀性起立)

2.Becker muscular dystrophy Becke型筋ジストロフィー(軽症型)

 

e. Metabolic Diseases

diabetes insipidus(尿崩症)* 

LeschNyhan syndrome (hypoxanthine-guanidine-phosphoribosyltransferase欠損)

*:筆者註:家族性尿崩症は常染色体優性遺伝と伴性劣性遺伝のことがある。ADHは視床下部の視索上核や室傍核でその担体であるニューロフィジン とともに合成されるが、家族性尿崩症ではニューロフィジン の遺伝子異常が見つかっており、後葉への軸索輸送や解離の異常と考えられる。先天性のものは伴性劣性遺伝(一部常染色体劣性)を示し、家族性で幼児期までに発症する。(参考:http://www.geocities.jp/study_nasubi/d/d39.html

 

f. Other Diseases

redgreen color blindness 赤緑色盲

Fragile X syndrome(以下参照)

Menkes kinky hair syndrome ---> inability to transport copper within cells

   細胞内銅輸送を司るP-type ATPase障害

 

[解説および参考資料]

hemophiliaはイギリスのヴィクトリア女王からヨーロッパの王室に伝えられた系図はよく知られています.

hemophilia Aは人口10万人につき約20人の発症率といわれています.(Anderson's Pathology)

hemophilia BAと臨床的には非常に類似しており別名Christmas diseaseと言われます.この命名はhemophilia Bの第一例目の男児の姓に由来しています.また,この患者の14%はFactor IXを持ってはいても機能が失われていると言われています.(Robins Pathologic basis of disease)

A, Bの原因遺伝子座はそれぞれ,Xq28, Xq27.1-q27.2とされています.

 

chronic granulomatous diseaseCGD,慢性肉芽腫症)はここで取り上げられていますが,常染色体遺伝の様式もとるとされており,X染色体以外の1番,16番染色体に異常の見られるものがあります.

私も1.5才の男児の本症例の解剖をしたことがあります.全身に高度の感染症を伴って死に至ります.好中球をはじめとする食細胞は自ら産生した活性酸素種(H2O2, OH-, -OCL)を 用いた殺菌機構を有する.この活性酸素産生の主要な分子がNADPHoxidaseとよばれる酵素複合体である.この酵素複合体を形成する分子の内のいくつかが欠損するとCGDを発症する.食細胞に貪食されたブドウ球菌,クレブシエラ菌,大腸菌,カンジダ,アスペルギルスといった非H2O2産生・カタラーゼ陽性菌を殺菌できなくなる.

参考:布井博幸 慢性肉芽腫症研究の新展開 Jpn J Clin Immunol, 30(1) 1-10, 2007.

Fragile X syndrome(ぜい弱X症候群)とはFragile X chromosomeを持つことからこう呼ばれる.X染色体の長腕の先端近くに壊れやすい部位をもつX染色体のこと.断片がほとんど分離したようにみえる.これは特殊な条件下でみられるとされます.

 

その他にも伴性劣性遺伝の形式をとるものは先天性魚鱗癬,眼白子症,脊髄骨端異形成症,Menkes病,先天性網膜欠損症,Alport症候群(X染色体上にIV型コラーゲン a鎖に関連する遺伝子に欠損)なども知られています.

                       

 

Anderson's Pathology

Stedman's English-Japanese Medical Dictionary.

Robins Pathologic basis of disease.

内科学(第9版)朝倉書店

 

 [参考画像]

 

a.   

b.

 

a.慢性肉芽腫症  http://www.humpath.com/spip.php?article1080より 

b. Duchenne型筋ジストロフィー(重症型) 骨格筋生検:所見は生検

時の年齢によって異なるが,基本的には骨格筋の壊死・再生と反応性の炎症細胞浸潤とされます.学童期では進行性の筋内膜の線維増生と脂肪浸潤も特徴となる.http://en.academic.ru/dic.nsf/enwiki/488479 より

 

演習問題]

図は慢性肉芽腫症の1歳半の男児の解剖後の組織像である.(a:肺,b:脾,c:PAS染色) チール・ネルゼン染色は陰性であった.正しいのはどれか.

 

a.

 

b.

 

c.

 

a.症例の約2/3は伴性劣性遺伝である.

b.好中球に活性酸素産生能の異常が認められる.

c.真菌感染を合併しやすい.

d.結核菌感染が最も多くみられる.

e.肉芽腫形成は通常認められない.

                            正解:a.b.c.