第33回
31.DISORDERS OF
TRINUCLEOTIDE REPEATS
[重要用語]
a. Fragile X syndrome脆弱X症候群---> CGG (シトシン・グアニン・グアニン)repeats
・mental retardation (second most common femilial
cause)
・long face with large ears
・large testes (macro-orchidism)
・trinucleotide
sequence expanded in females,not males
b. Huntington's
syndrome
--> CAG repeats
c. Myotonic dystrophy --> GCT repeats
d. Friedreich
Ataxia--->expansion
of frataxin gene(GAA repeats)*
e. Spinal-Bulbar
Muscular Atrophy
--> CAG repeats
*著者追加
[解説および参考資料]
a. Fragile X syndrome
(脆弱X症候群,Martin-Bell症候群と同義語)
X染色体長腕の末端部(Xq27.3)にfragile siteが認められます.FMR1遺伝子内のプロモーター領域とコドン開始部位との間における3塩基の繰り返し配列の異常延長により,FMR1遺伝子が発現しないことが原因だということです.
fragile
siteとは普通染色(例えばギムザ染色)で非染色性の切断(ギャップ)がみられる部分です.
原因としては, DNAの修復・複製の異常が考えられているようです.
臨床症状はここにもあるように,精神遅滞が主体で,長い顔,突出した眼窩上縁,大きい耳,突出した下顎がみられますが顔貌だけで診断を下すことは難しいそうです.思春期以後の巨大睾丸は診断的価値が高いそうです.
チミジンまたは葉酸欠乏下で患者のリンパ球を培養すると,X染色体を中心に脆弱部位の多発が見られるそうです.そのため葉酸を投与すると症状の改善が見られたとの報告もあるそうですが確率されたものではないようです.
参考:染色体切断症候群:
Bloom症候群,Fanconi貧血,ataxia teleangiectasia,Fragile X syndromeなど.
b.Huntington's syndrome --> CAG
repeats
ハッチンソン遺伝子は第4染色体にあることは有名です.短腕(4p16.3)にありますが1983年Gusellaらによって証明されました.第一エクソンにCAGの反復配列が存在し,ポリグルタミンに翻訳されるそうです.最近の研究では,この遺伝子の発現は病理学的変化の著明な線条体や大脳皮質に限局しているわけではなく,海馬,小脳顆粒層,Purkinje細胞,橋核などかなり広範囲だそうです.このCAGの反復は正常の人にも見られますが平均17-18回だそうですが,ハッチンソン病では平均35回,若年者では90-100回にもなるそうです.
c.Myotonic dystrophy --> GCT
repeats* (筋緊張性ジストロフィー)
常染色体優性遺伝をします.日本での頻度は5.5人/10万人だそうです.19番染色体長腕の12〜13.3に原因遺伝子(MD遺伝子)が存在します.1992年にBrookら複数のグループによって単離されました.遺伝子内3’ untranslated regionに存在する3塩基の繰り返し配列は,正常者では5〜30回程度,本患者は50〜2,000回もみられる.このMD遺伝子のサイズが長くなるほど疾患は重症であるとされています.
*標準病理学では,CTG repeatsと記載されています.
d.Friedreich
Ataxia--->expansion of frataxin gene
常染色体劣性遺伝の形式.小児期から運動失調が現れ,ゆっくり進行する.心肥大,心筋間質線維症,糖尿病を合併.脊髄の上行性線維系の病変が強い.後根神経節,後索,クラーク核,脊髄小脳路に変性がみられる.9q13-q21.1のフラタキシン遺伝子のGAAリピートの増大が原因.
図1 Frataxin
参考:http://en.wikipedia.org/wiki/Friedreich's_ataxia
e.Spinal-Bulbar Muscular Atrophy
--> CAG repeats
(球脊髄性筋萎縮症・Kennedy-Alter-Sung syndrome)
伴性劣性遺伝.成人発症,球症状,錐体路徴候の欠如,緩徐な進行,contraction fasciculation 女性化乳房がみられるとのことです.男性ホルモン受容体異常が指摘されています.手指のふるえ,有痛性筋痙攣(こむらがえり),睾丸萎縮などが知られています.筋電図異常,血清CK値上昇が予後は比較的良好とされる.第10染色体に遺伝子がありXq11.2-12のcoding exonに存在するそうです.
参考図書:
Surgical
Pathology 3rd Edt.
日本臨床 広範囲 症候群.
病理診断と分子生物学・遺伝学 文光堂.
[臨床病理]47:37-45, 1999.
[参考画像]
a. b.
a.fragile X chromosome.(参考サイト:http://fragilexsyndrome.blogspot.com/)
b. Most people who
have Fragile X Syndrome are perfectly healthy in the aspect of life.
(参考サイト:
[演習問題]
遺伝子内に3塩基繰り返し配列が知られている疾患はどれか.
a. Fragile X
syndrome(脆弱X症候群)
b. Huntington's syndrome(ハッチンソン症候群)
c. Myotonic dystrophy(筋緊張性ジストロフィー)
d. Friedreich Ataxia(フリードライヒ失調症)
e. Nephrotic syndrome(ネフローゼ症候群)
正解:a.b.c.d.