第33回インターネット病理勉強会　(H11 6 21)

第37回

35．MAJOR HISTOCOMPATIBILITY COMPLEX (MHC)　腫瘍組織適合抗原複合体

[重要用語]

Class I Antigens　クラスI抗原

・found on all nucleated cells　すべての有核細胞でみられる．

・transmembrane alpha glycoprotein chain with beta 2 microglobulin（下図参照）

・react with antibodies and CD8-positive lymphocytes

・fight virus infected cells and transplants（ウイルス感染細胞や移植と関係）

Class II Antigens　クラスII抗原

・found on antigen‐presenting cells，B cells，and T cells（抗原提示細胞，B細胞，T細胞を認識）

・transmembrane alpha chain and beta chain（下図参照）

・react with CD4-positive lymphocytes

・fights exogenous antigens which have been processed by antigen-presenting cells

　　（抗原提示細胞によって加工された外来性抗原と反応）

[解説および参考資料]

腫瘍組織適合抗原複合体は腫瘍組織適合抗原，MHC抗原，H\MHC分子とも呼ばれます．

一般に，同一種の動物間で，組織の移植をすると一定期間生着したあと拒絶されます．その中で，特に強い移植抗原性を有し短期間に急性拒絶現象をもたらす抗原を主要組織適合抗原とよび，それをコードする遺伝子群を主要組織適合遺伝子複合体（MHC)と呼びます．

MHCはすべての脊椎動物の種について1個存在し，互いに類似しているようです．

ヒトでは白血球で始めて発見されましたので，HLA（ヒト白血球抗原）と呼ばれています．

MHCは構造的にも，組織分布も異なる2つの種類がしられ，Class I 抗原，Class II抗原と呼ばれ区別されています．

Class I 抗原は，赤血球を除く殆どの体細胞および血小板の膜に存在し，自己を規定していると抗原と考えられています．

Class II抗原は単球，マクロファージ，樹状細胞，Bリンパ球，活性化Tリンパ球に存在し，免疫応答における信号系と考えられています．

HLA抗原は第6染色体短腕上に遺伝子座が存在します．

いずれもα鎖，β鎖の糖蛋白からなるヘテロダイマーです．2本のα-helix鎖が向かい合い，底部をβ-sheetで支えるような構造で，この中にペプタイドが挟まります．

Class I抗原は細胞内でつくられる内因性ペプタイドが，Class II抗原は外来性のペプタイドが挟まります．

Class I抗原はCD8陽性T細胞を活性化し，Class II抗原はCD4陽性T細胞を活性化します．

例として，Class I抗原は癌細胞のつくる内因性ペプタイドと結合し宿主の免疫学的監視機構の標的となるためその発言量が伸展や増殖に深く関係するといわれます．

様々な悪性腫瘍でClass I抗原の発現低下，欠失が認められています．原発巣より転移巣で発現低下，欠失の頻度が高いことが判明しています．このことから，Class I抗原の発現低下，欠失によって腫瘍細胞は免疫監視機構から逃避していると考えられています．

参考図書：病理学キーワード（文光堂），　スタンダード病理学（文光堂）

参考site: http://ja.wikipedia.org/wiki/主要組織適合遺伝子複合体

[参考画像]

　a.　　　　b.

　　　　　　Class I 抗原　　　　　　　　　　　　　　　　　Class II 抗原

a:Class I抗原の構造：α1,α2,α3は細胞外領域，あと細胞膜貫通領域，細胞内領域からなる重鎖とβ2ミクログロブリンとからなる．α1とα2との間の溝状部位が抗原提示部位．

B:Class II抗原の構造：α鎖とβ鎖とからなり，それぞれ2つの細胞外領域，膜貫通領域，細胞内領域とからなる．

MHCと抗原提示機構（Class I分子関連）

DCs：dendritic cells（樹状細胞）

［演習問題］

Class II抗原と反応するものはどれか．

a. CD8陽性Tリンパ球

b. CD4陽性Tリンパ球

c. 組織球

d. 樹状細胞

e.　ウイルス感染細胞

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　正解：b.c.d