第40回

38．AUTOANTIBODIES (自己抗体)

以下は，自己抗原の種類とその自己抗体による疾患がまとめられています．

　 （一部筆者加筆）

[重要用語]

a.Nuclear（核に体する自己抗体）

・diffuse核にびまん性に陽性（homogenous）→ DNA（many diseases），

histonesヒストン（drug一induced SLE）

・rim 核縁に陽性(peripheral) → double-stranded DNA二重らせんDNA (SLE)

・speckled 斑状に陽性(non-DNA extractable nuclear proteins) → Smith (SLE), SS-A and

SLE:全身性エリテマトーデス

SS-B (Sjogren's syndrome) , Scl-70 (progressive systemic sclerosis全身性進行性硬化症)

・nucleolar核小体 (RNA) → many (e.g. progressive systemic sclerosis) 全身性進行性硬化症

・centromere セントロメア*→ CERST syndrome**

＊centromereとは動原体のことで，細胞分裂の際の染色体にみられる紡錘糸付着点．

**：石灰沈着症calcinosis、Raynaudレイノー現象、食道病変esophageal dysmotility、手指硬化sclerodactylyおよび毛細血管拡張症telangiectasiaを呈する症候群．1964年WinterbauerがCRST症候群を提唱したが、1973年Frayhaらがこれを発展させてCREST症候群を提唱した。


b.Cytoplasmic（細胞質に体する自己抗体）

・mitochondriaミトコンドリア → primary biliary cirrhosis．原発性胆汁性肝硬変

c.Cells（細胞全体に体する自己抗体）

・smooth muscle平滑筋 →lupoid hepatitisルポイド肝炎（autoimmune chronic active hepatitis）自己免疫性肝炎

・neutrophils 好中球→ Wegener's granulomatosisウェジェナー肉芽腫症 and microscopic polyarteritis. 顕微鏡的多発性動脈炎

・parietal cell 胃壁細胞and intrinsic factor 胃内因子→ pernicious anemia（悪性貧血）

・microvasculature of muscle 筋肉の微小血管系→ dermatomyositis（皮膚筋炎）

d.Proteins（タンパク質に体する自己抗体）

・immunoglobulin免疫グロブリン → rheumatoid arthritisリウマチ様関節炎

・thyroglobulinサイログロブリン → Hashimoto thyroiditis橋本甲状腺炎

e.Structural Antigens（組織構築に関する自己抗体）

・lung and glomerular basement membranes肺と糸球体基底膜 → Goodpasture's disease

・intercellular space of epidermis 表皮細胞間→ pemphigus vulgaris尋常性天疱瘡

・epidermal basement membrane 表皮基底膜→ bullous pemphigoid水疱性類天疱瘡

f.Receptors（受容体に体する自己抗体）

・acetylcholine receptor アセチルコリン受容体→ myasthenia gravis重症筋無力症

・thyroid hormone receptor甲状腺ホルモン受容体 → Graves' diseaseバセドウ病

・insulin receptorインスリン受容体 → diabetes mellitus糖尿病＊

　　＊：インスリン抵抗性B型糖尿病ともいわれます．先天性にインスリンレセプタを欠損するA型とは区別されます．

[解説および参考資料]

自己免疫現象によって生じた自己抗原に対する抗体を自己抗体と言います．

自己免疫現象とは，自己の組織や細胞に対して生じる免疫反応で，自己寛容の破綻によって生じます．

また，正常では量的あるいは質的に検出できない自己抗体や自己反応性リンパ球の産生などがある疾患群を広義の自己免疫病に含められているのが現実で，自己抗体などが存在しても必ずしもその疾病の原因であることを意味しません．逆に，自己免疫現象が検出されてもなんら疾病を発症しないこともあります．

[参考画像]

a.

b.

c.

d.

a.類天疱瘡（80歳，女性），b.バセドウ病（56歳，女性），c.原発性胆汁性肝硬変(60歳，女性), d.強皮症＊（76歳，女性．抗核抗体，抗セントロメア抗体陽性例）

＊：強皮症は皮膚硬化症ともいいます．汎発性強皮症は進行性全身性硬化症と呼ばれます．

［演習問題］

受容体に対する自己抗体がみられる疾患はどれか．

a.ウェジェナー肉芽腫症

b.バセドウ病

c.重症筋無力症

d.天疱瘡

e.全身性エリテマトーデス

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　解答：b.c.