第46回
43.SYSTEMIC MYCOSES 真菌症(一部筆者加筆)
[重要用語] [解説および参考資料]
真菌症は細胞性免疫が低下した際に感染することはよく知られています.また,地球上に真菌の種類は5万とも10万とも言われています.しかし,ヒトの病気と関わり合いがあるものは高々300種類程度で,属でみれば100に満たないと言われています.真菌症は従来,表在性真菌症と深在性真菌症とに分けられています.
a.Candidiasis(カンジダ症) moniliasisとも
・Candida albicans
・pseudohypha(仮性菌糸)とspore(胞子)
・white plaques (thrush,鵞口瘡)
菌糸に分枝はみえない.
b.Histoplasmosis(ヒストプラスマ症)
・Histoplasma capsulatum
・found within the cytoplasm of macrophages Blastonyces
・bird droppings; bat guano in caves(鶏舎付近の土壌中に存在)
・Ohio and Mississippi valleys(ミシシッピー川流域に多い)
小型のイースト型(2〜5μ)
肺に結核に類似した初感染巣を形成するそうです.95%は石灰化を残して自然治癒するそうです.
c.Aspergillosis(アスペルギルス症)
・Aspergillus apecies
・septate hyphae with acune-angle branching
・fruiting bodies (when exposed to air →
fungus ball in lung cavity)
自然界に最も普遍的に存在する真菌のひとつ.170種類以上が知られていますが,臨床的に分離されるのは10種類程度といわれます.代表はA. fumigatusですね.
45度の2分岐をして増生します.乳幼児の重症免疫不全症で亡くなった患者の肺の組織中に胞子嚢を多数見た経験があります.これから飛散した分生子が感染源となります.
菌糸には隔壁が明瞭です.
d.Blastomycosis(ブラストミセス症)
・Blastomyces dermatitidis
・broad-based budding
・eastern United States
北米の東部諸州に地方病として見られます.病原のBlastomyces dermatitidis
については自然界における所在は明解とはなっていないようです.初発は肺感染で,化膿性ないし巨細胞を伴った類上皮性肉芽腫性炎症が見られます.寄生型は胞子型で,達磨のような広い基底をもって連なる出芽像が特徴です.
e.Coccidioidomycosis(コクシジオイデス症)
・Coccidioides immitis
・large spherules filled with many small endospores
・southwestern United States (San Joaquin Valley)
アメリカ西南部,中南米の特定地域に発生する地方病です.土壌中に存在し,病原真菌の中では最も病原性が強いと言われます.空中に浮遊する分節型分生子の吸入で感染します.多くは良性の経過を示しますが,一部は進行性となり死に至ることもあるそうです.多数の内生胞子を入れた大型の球状体(spherule)が見られることが特徴です.
f.Cryptococcosis(クリプトコッカス症)
・Cryptcoccus neoformans
・CNS infection in immunosuppressed patients
・mucicarmine-positive capsule
・Indian ink stain of CSF
この無子嚢胞子酵母は土壌など外界に分布します.はとなどの鳥類の糞中で増殖します.経気道的に感染し,肺に初感染巣を形成します.基礎疾患として悪性リンパ腫,SLE,腎移植などが多いようです.5〜10μmで,菌細胞の周囲に厚いムチン様の被膜がみられます.経過の遷延例では,脳室の拡張がみられ,髄膜炎は脳底部に限局することが多い様です.
g.Mucormycosis (ムコール症)
・nasal infection in diabetic patients
・broad,nonseptate hyphae with right-angle branching
本症は,接合菌門(Zygomycota)の接合菌網 (Zygomycetes) 中のムコール目に属する真菌の感染症です.重症糖尿病や腎不全などの代謝生アシドーシスがある場合や白血球減少症,悪性腫瘍などの基礎疾患がある場合が多いことが知られています.肺や気管支に好発し,血管壁を侵しやすいのが特徴です.菌は,巾の広い,隔壁のない直角性の分岐を示します.
表在性真菌症では,皮膚糸状菌症がその殆どで,白癬菌Trichophyton,小胞子菌Microsporum,表皮菌Epidermophytonの3種が知られています.
深在性(内臓)真菌症には,以下のように分類されることが多いようです.
1. 弱病原性真菌による真菌症(日和見感染症の主要因)
・内因性真菌症:カンジダ症
・外因性真菌症:アスペルギルス症,クリプトコッカス症,ムコール症
[いずれも世界的に分布]
2. 病原性真菌による真菌症
・スポロトリコーシス症[世界的に分布]
・コクシジオイデス症,ヒストプラスマ症,ブラストミセス症,パラコクシジオイデス症
[いずれも風土病]
文責:筑後
参考図書
現代 病理学大系5 炎症と感染 中山書店
標準病理学 医学書院
[参考画像]
a.
b.
a.カンジダ症(喀痰,PAP染色),b.クリプトコッカス症(フォンタナ・マッソン染色),
[演習問題]
84歳,男性.食欲不振で発症.3ヶ月後に死亡.副腎の組織(グロコット染色)を示す.疾患はどれか.
a. クリプトコッカス症
b. カンジダ症
c. クリプトコッカス症
d. ヒストプラスマ症
e. スポロトリコーシス症
正解:d