第7回
Complement cascade(補体カスケード)
a.PRODUCTS:主な産生物
・C3b---> opsonin細菌感染ではオプソニン作用,ウイルス感染では中和作用.
・C5a---> chemotaxis
and leukocyte activation好中球走化作用と活性化.
・C3a, C4a, C5a---> anaphylatoxinsアナフィラトキシン
・C5b6789---> membrane attack complex膜侵襲複合体として免疫溶菌現象をもたらす.
b.DEFICIENCES:主な欠損症
・deficience of early components(C1,C4,C2)--->autoimmune disease(SLE)
自己免疫疾患(SLE)
・ deficience of C3 and C5--->
recurrent pyogenic bacterial infections
化膿性細菌感染の反復
・ deficience of C6, C7, and C8--->
recurrent infections with Neisseria spicies
ナイセリア感染を反復
・ deficience of MBL*--->frequent pyogenic
infection(pneumococcus)
化膿性感染(肺炎球菌)の易感染性
・ deficience of C1 esterase inhibitor(C1阻害因子)--->
hereditary angioedema
遺伝性血管浮腫
・ deficience of decay-accelerating
factor--->paroxysmal nocturnal hemoglobinuria
発作性夜間血色素尿症
註:*MBL: mannose-biding lectin(マンノース結合レクチン)
[解説および参考資料]
補体には,古典経路と第二経路が知られています.
古典経路は,抗原抗体複合体の形成により,IgG,IgMのFc部分へのC1qの結合,活性化を起点として反応が進行します.
第二経路は,細菌などの多糖体により加水分解を受けたC3分子がB,D因子と反応してC3を活性化します.
ともにC3分解酵素,C5分解酵素の生成をへてC5b.6.7.8.9,すなわち膜侵襲複合体(membrane attack complex, MAC)を形成し,これによって細胞膜が障害されます.
anaphylatoxinsは肥満細胞や好中球に作用しヒスタミンなどの炎症性メディエーターを遊離させることにより血管透過性の亢進,平滑筋の収縮を引き起こします.
C3bはopsonic fragmentsとも呼ばれる補体です.微生物はopsoninと呼ばれる血清蛋白によって被覆されることによって認識されます.opsoninにはC3b以外に,iC3bやIgGなどがあります.認識された微生物は白血球表面にあるIgGのFcレセプターやC3bレセプターに結合します.このようにして貪食空胞内に取り込まれた外来物質はリソソーム酵素,活性酸素ラジカル,アラキドン酸代謝産物によって殺菌,消化され,白血球が貪食する際に同時に放出されることになります.
つまり,補体系の生物活性は大きく3つの働きがあることになります.
1. MACによる溶菌,溶血,反応,細胞障害反応の誘導.
2. 補体fragmentによる炎症性メディエーターの誘導.
3. 補体レセプターを介してのオプソニン効果の誘導.
補体制御因子:
生体は補体系の活性化を制御する数々の蛋白を血清中および膜上に発現しています.
血清中には,C1INH(C1inhibotor),I因子,H因子,C4-bp(C4 binding protein),
細胞膜上には,DAF(decay-accelerating factor),CR1(complement
receptor type 1),MCP(membrane cofactor protein),HRF(hemologous restriction factor),CD59などが知られています.
たとえば,発作性夜間血色素尿症(PNH)は上記にもあるように赤血球の膜上にあるはずのDAFが欠損するかきわめて少ない場合に起こります.赤血球の膜上でC3分解酵素の失活が遅れ,C3bが多数結合し,そのためにMACの生成を促し溶血してしまいます.このDAFは血球だけでなく,血管内皮細胞や一部の上皮細胞,関節滑膜細胞膜上にもあります.
慢性関節リウマチの際にも滑膜被覆細胞の表面に多数のDAFが発現することが知られています.
参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/補体
[参考画像]
a. b.
c. d.
e.
a.IgA腎症*(HE染色,15歳,男児), b.C3染色(免疫染色)
*:免疫組織学的に腎糸球体メサンギウム領域へのIgAと補体C3の顆粒状沈着を特徴とする.
c.SLEの蝶形紅斑(日本病理学会,病理コア画像より)d.SLE患者の皮膚所見:表皮基底層に水腫様変性,真皮浅層部の膠原線維に好塩基性変性とリンパ球浸潤がみられる.e.ループス腎炎(42歳,女性):ワイヤーループ病変と血管内に硝子血栓形成(左端)がみられる.
演習問題
補体系に関する組合せで正しいのはどれか.
a. C5a------オプソニン作用
b. C1欠損----全身性エリテマトーデス
c. C3欠損----ナイセリア感染
d. C1阻害因子欠損-----発作性夜間血色素尿症
e. マンノース結合レクチン欠損---遺伝性血管浮腫
正解:b