近畿大学医学部 放射線医学教室 放射線腫瘍学部門

近畿大学医学部 放射線医学教室 放射線腫瘍学部門
Kindai University Faculty of Medicine Department of Radiation Oncology
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当科の取り組み・診療案内

Practice guide

近畿大学病院での放射線治療の紹介ビデオ

このビデオは、2016年3月12日にNHK Eテレにて放映された「日本医師会健康フォーラム:最新医療・放射線、驚異の画像診断と進化する治療」で使用されました。近畿大学病院での放射線治療を紹介したビデオです。放射線治療の特徴、装置の紹介、診療の流れ、患者さんの声、また放射線治療に関わる職種の業務内容などが紹介されています。ぜひご覧ください。

放射線治療科 教授 西村恭昌

© NHKエデュケーショナル

放射線腫瘍学とは

悪性腫瘍は、現在我が国の死亡原因の第一位を占めています。癌は今後も引き続き増加が予想され、その克服は国民的課題の一つとなっています。放射線腫瘍学は、外科腫瘍学及び内科腫瘍学とならぶ臨床腫瘍学の3本柱の一つで、放射線腫瘍学には機能と形態の温存が可能な癌局所治療法であるという大きな特徴があります。癌患者の半数が治癒できるようになった現在、寿命を長らえるだけでなく社会復帰の可能なQOL(quality of life) の高い治療法への社会的要請が強まっています。放射線腫瘍学はまさに時代の要求する癌治療法です。

放射線腫瘍学には、放射線の性質や治療装置など放射線理学の基礎知識、腫瘍や正常組織に対する放射線の影響などの放射線生物学の基礎知識、さらに個々の腫瘍の進展や、最適な治療法を選択できる臨床腫瘍学の知識が要求されます。放射線治療では、高エネルギーX線や電子線を発生する直線加速器(ライナック)、あるいは192 Irなどの放射線同位元素を用いた小線源治療などの装置で治療します。この他、さらに空間的線量分布が良好な陽子線や重粒子線を用いた放射線治療も一部の施設で行われています。

放射線治療中には、照射された部位に粘膜炎や皮膚炎などの急性障害が出現することがありますが、これらは一過性のもので通常照射終了後2-4週間で消失します。また、まれに照射後数ヵ月から数年経ってから出現する晩期障害が生ずることがありますが、最近の照射法の進歩により重篤な障害の発生はほとんどありません。放射線腫瘍学では、この晩期障害を来すことなく、腫瘍が完全に消失する(局所制御)ことを達成することを目標にしています。 

医学物理学とは

医学物理学とは、物理工学知識・成果を医学に応用・活用する学術分野、学問です。医学物理学が他の物理学の分野と異なる点は、医学・医療への貢献を通じて、患者さんの健康に寄与することが大きな目的であるということです。医学物理にはMRIやCT装置の開発、画質改善、被ばく線量と画質の管理、放射線同位元素を使用したSPECT、PETの装置開発や画質改善が挙げられます。
線や粒子線などの放射線を利用してがんを治療する装置開発、新照射法の開発、物理的線量分布の最適化、治療物理からの品質保証・管理を通じて、副作用を最小限にして効果的にがんを制御することをもって健康に寄与、また医学利用の放射線の害を最小限に抑えるための防護・管理も含まれています。

詳細はこちらをご覧ください。

専門領域

悪性腫瘍および一部良性疾患に対する放射線療法

診療内容

対象疾患

悪性腫瘍:
脳腫瘍、頭頸部腫瘍、甲状腺がん、食道がん、胃がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がん、大腸がん、肛門がん、子宮がん、卵巣がん、腎臓がん、前立腺がん、膀胱がん、悪性リンパ腫、血液がん、骨軟部腫瘍など
良性疾患:
ケロイド、翼状片など

実施している照射法および治療計画法

強度変調放射線療法(IMRT)、脳および体幹部定位放射線治療(SRT)、三次元原体照射、192Ir高線量率小線源治療、前立腺がん125I永久挿入密封小線源治療、RI内用療法、化学放射線療法、過分割照射、呼吸同期照射法、PET/CTシミュレーション、4D-CTシミュレーション

特徴・特色

悪性腫瘍の放射線療法においては、CTシミュレーションあるいはPET/CTシミュレーションを用いた三次元治療計画を行い、高精度放射線療法を行っている。特に頭頸部腫瘍や前立腺がんなどには強度変調放射線療法(IMRT:intensity modulated radiotherapy)や、脳腫瘍や孤立性肺がんなどに定位放射線治療(SRT:stereotactic radiotherapy)が行えるわが国でも数少ない治療施設である。前立腺がん125I永久挿入密封小線源治療も泌尿器科と協力して実施している。RI内用療法も実施している。

研究内容

IMRT や定位照射、四次元CTシミュレーション、PET/CTシミュレーションを用いた治療計画などの高精度照射法あるいは小線源治療の研究をはじめ、抗がん剤と放射線を併用する化学放射線療法の研究、あるいは放射線増感剤の開発などの臨床的研究を行っている。照射期間中の腫瘍体積の変化に対応する適応放射線治療の研究、治療計画法の医学物理的研究、あるいは照射による細胞動態の研究などの放射線生物学の基礎的研究も行っている。

臨床研究

多施設前向き試験

  1. 早期中咽頭癌に対するIMRTの多施設共同非ランダム化検証的試験(JCOG1208)
    JCOGの臨床試験。研究代表者は、西村恭昌。T1-2N0-1M0中咽頭扁平上皮癌患者に対して予防照射線量の減少および照射範囲を縮小したIMRTを用いることの有効性と安全性を評価する。現在登録中。
  2. 進行頭頸部腫瘍に対する術後照射の第III相試験 (JCOG1008)
    JCOG頭頸部がんグループで実施中のJCOG1008において、IMRTを許容するプロトコール改訂を行った。照射法はSIB法IMRTを用いる。登録は終了し、現在経過観察中。
  3. 頸部食道癌に対するIMRTの多施設共同第II相試験(JROSG12-1)
    日本放射線腫瘍研究グループ(JROSG)での多施設共同試験。SIB法IMRTを採用している。登録は終了し、現在経過観察中。
  4. 肛門扁平上皮癌に対する5FU+MMC同時併用化学放射線療法の臨床第II相試験 (JROSG10-2)
    JROSG消化器グループの臨床試験。I-III期の肛門扁平上皮癌に対する5FU+MMC同時併用化学放射線療法の有効性と安全性を評価する。経過観察中。
  5. 臨床病期IA期非小細胞肺癌もしくは臨床的に原発性肺癌と診断された3cm以下の孤立性肺腫瘍(手術不能例・手術拒否例)に対する体幹部定位放射線治療のランダム化比較試験(JCOG1408)
    肺定位放射線治療における標準線量群および高線量群におけるランダム化比較試験。現在登録中。
  6. 局所進行上顎洞原発扁平上皮癌に対するCDDPの超選択的動注と放射線同時併用療法の用量探索および有効性検証比較試験(JCOG1212)
    cT4a or T4bN0M0 上顎洞癌に対する超選択的動注併用放射線療法の検証試験。放射線治療は当初3DCRTであったが、IMRTで照射可能にプロトコール変更されている。用量探索相は終了し、現在有効性検証相を登録中。cT4aは登録終了し、現在cT4b症例登録中。
  7. JCOG0701「T1-2N0M0声門癌に対する放射線治療の加速照射法と標準分割照射法のランダム化比較試験」の附随研究(JCOG0701A2)
    JCOG0701に登録された患者を対象に、その生検組織を用いて予後因子を解析する附随研究。現在登録中。
  8. 強度変調放射線治療(IMRT)を施行した中咽頭癌(T1-2N0-1M0)におけるヒトパピローマウイルス(HPV)感染状態と全生存率期間に関する研究(JCOG1208A1)
    JCOG1208の附随研究。JCOG1208にてT1-2N0-1M0中咽頭扁平上皮癌患者に対してIMRTを施行した症例のヒトパピローマウイルスの感染状態を把握する臨床研究。現在登録中。
  9. JCOG0701「T1-2N0M0声門癌に対する放射線治療の加速照射法と標準分割照射法のランダム化比較試験」の附随研究(JCOG0701A3)
    JCOG0701に登録された患者さんの3年以降の予後および遅発性放射線反応を解析する附随研究。現在登録中。
  10. JCOG1402「子宮頸癌術後再発高リスクに対する強度変調放射線治療(IMRT)を用いた術後同時化学放射線療法の多施設共同非ランダム化検証的試験」
    臨床病期IB1、IB2、IIA1、IIA2、IIB期の子宮頸癌広汎子宮全摘後の再発高リスク例に対する、強度変調放射線治療 (Intensity Modulated Radiation Therapy) とシスプラチン 40mg/m2、週1回投与 (CDDP weekly) を用いた術後同時化学放射線療法 (Concurrent chemoradiotherapy: CCRT)の有効性および安全性を検証する。現在登録中。

院内前向き試験

  1. 悪性神経膠腫に対する強度変調放射線治療の第Ⅰ相臨床試験
    悪性神経膠腫に対してSIB法IMRTを用いる線量増加試験。現在登録中。
  2. 治療室内CTを用いた適応放射線治療における前向き研究
    頭頚部癌の化学放射線治療時、Cone-Beam CTを用いて体輪郭や線量分布などの変化を確認する前向き研究。現在登録終了し、解析中。
  3. 定位放射線治療におけるF-18フルオロミソニダゾール(F-MISO)PET/CTによる腫瘍内低酸素領域評価に関する研究
    定位放射線治療における再酸素化現象をF-MISOを用いて確認する前向き研究。現在登録中。
  4. 「進行直腸癌に対する術前放射線治療の前向き観察研究」
    局所進行直腸癌に対する術前放射線治療のの安全性と有効性を検証する前向き観察研究。現在登録中。

観察研究

  1. 強度変調放射線治療の治療計画におけるAIを用いたRapid Plan®の実用性の検討
    強度変調放射線治療を行った患者さんのデータをAIにて統合解析し、今後の治療計画時間の短縮を図る後ろ向き試験。現在進行中
  2. 肛門管癌に対する放射線治療成績の検討
    肛門管癌に対して放射線治療を行った患者様の治療成績を後ろ向きに集積し、解析します。
  3. 脳転移に対する放射線治療後の予後予測に関する後ろ向き研究
    脳転移に対して放射線治療を行った患者さんのデータを解析し、予後予測につながる因子を探索する研究。現在登録中。
  4. 全国放射線治療症例に基づく放射線治療の実態調査および質評価
    全国の放射線治療を行っている施設より後ろ向きに患者さんのデータを集計し、実態調査および質評価を行う研究。現在登録中。
  5. 肺癌に対する放射線治療の治療方法と予後に関する後ろ向き研究
    放射線治療を受けた肺癌患者さんの放射線治療データと臨床データを解析します。
  6. 頭頸部癌に対する放射線治療に関する後ろ向き研究
  7. 強度変調回転放射線治療を用いた全身照射に関する治療計画研究
  8. 生体試料からの遺伝子発現プロファイルを用いた食道がんサブタイプ分類と治療効果との関連に関する臨床評価試験(SUCCESS 試験)
  9. 頭頸部癌に対する強度変調放射線治療における臓器特異的耐容線量の観察研究
  10. 近畿大学におけるラジウム-223 内用療法に関する後ろ向き研究
  11. 原発性肺癌または転移性肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療の後ろ向き研究
  12. 子宮癌に対する放射線治療に関する後ろ向き研究
  13. EthosTMを用いた適応放射線治療計画の検討
  14. 多発転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療に用いる治療装置および照射技法の違いが正常脳の線量に及ぼす影響

診療実績


治療部位別患者数


診療スタッフ(集合写真はこちら

責任者・診療部長 主任教授 松尾 幸憲
放射線治療 教授 細野 眞
教授(医学物理) 門前 一
准教授 中松 清志
准教授 土井 啓至
医学部講師 稲田 正浩
医学部講師 植原 拓也
助教A 立野 沙織
助教B 石田 奈緒子
専攻医 福田 隼己
非常勤医師 横川 正樹
非常勤医師 石川 一樹
非常勤医師 松浦 知弘
非常勤講師(医学物理) 松本 賢治
非常勤講師(医学物理) 小坂 浩之

外来担当医表

 
午前 土井
立野
松尾
中松
稲田
土井
石田
横川
松尾
中松
福田
石川
稲田
植原
午後 土井
立野
松浦
松尾
稲田
福田
土井
石田
横川
細野
中松
植原
石川
稲田
植原
特殊治療 火曜日 午後 腔内照射
水曜日 前立腺がんの125-I永久挿入小線源治療
木曜日 翼状片の術後照射