知っておきたいカラダのこと。これからの自分を守るため
  • 患者・ご家族の方へ
  • 勤務医・開業医の方へ
  • 研修医・医学生の方へ
  • 心臓血管疾患の基礎知識
  • 最新情報はこちらから
  • 交通・アクセスのご案内
  • 一般社団法人National Clinical Database』(NCD)
  • 当科では全手術データをNCDに登録しています。患者情報は全て匿名化され、個人情報は保護されます。登録を拒否することも可能です。詳しくは担当医にご相談下さい。

心臓血管疾患とは?

心臓血管疾患は、症状がないまま病状が進行して、症状が現れた時には重症となり、時には死に至る大変危険な病気です。しかし、どんな病気があって、どんな症状で、何が原因かという知識を持つことで予防や対策ができるのです。心臓血管外科で扱う代表的なものには以下のようなものがあります。

心臓血管疾患とは?
心臓血管疾患とは?

虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)

狭心症、心筋梗塞とは?

心臓は、心筋と呼ばれる筋肉が収縮することで、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。心筋は、冠状動脈と呼ばれる心臓の表面を走る血管から血液を供給されることにより24時間動き続けることができます(図1)。この冠状動脈が、動脈硬化によって狭窄することで必要なだけの血液が供給できなくなり、胸部の圧迫感や痛みが生じる状態を狭心症といいます。また、完全に閉塞して血流が途絶し、心筋が壊死(心筋細胞が死んでしまうこと)してしまう状態を心筋梗塞といいます(図2)。心筋梗塞になった場合、壊死した心筋の量によっては心臓が十分動けなくなり、ポンプの機能を果たせず、心不全になったり、命を落とす場合もあります。そのため、心筋梗塞に陥った場合は、直ちに専門施設に入院し、治療を受ける必要があります。

虚血性心疾患 動脈硬化の進行
図1 虚血性心疾患 図2 動脈硬化の進行
このページの最上段へ

虚血性心疾患の治療

カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術-PCI-)

狭心症、心筋梗塞に対してはカテーテルによる治療が可能かどうか検討します。狭くなった冠動脈をカテーテルについた風船やステントと呼ばれる金網を用いて膨らませます。この治療は循環器内科医によって行われます。大きな手術を必要とせず、身体への負担が少ない治療法として広く用いられています。カテーテル治療が適切でない場合には冠動脈バイパス術が行われます。

冠動脈バイパス術(CABG)

カテーテル治療の適応ではない狭心症や心筋梗塞に対しては、冠動脈バイパス術が行われます。冠動脈の狭い部分よりも末梢に血液が流れるように胸腔内を走る内胸動脈や下肢から採ってきた大伏在静脈といった血管を用いてバイパスする手術です(図3)。当院では、体への負担が少なく、心臓を拍動させたまま行うオフポンプCABGを中心に行っています。心臓の働きが十分でない患者さんに対しては、安全のために人工心肺という心臓の代わりをする装置を用いオンポンプCABGを行います。また、動脈を用いたバイパスの方が静脈を用いた場合よりも長期開存が期待できるため、グラフト使用のデザインは、動脈を中心に行っているのが当院の特徴です。

機械弁

図3 冠動脈バイパス術

このページの最上段へ

心筋梗塞の合併症

心筋梗塞を発症した場合、心筋が壊死した場所や範囲によってさまざまな合併症が生じます。これらの合併症には外科的な手術を必要とするものもあり、早期に死に至るため、緊急手術が必要な合併症もあります。心室中隔穿孔や心室破裂、乳頭筋断裂といった合併症は緊急手術を要する合併症です。また徐々に進行し、最終的に外科手術が必要となるような合併症には左心室瘤、虚血性心筋症、虚血性弁膜症等があります。心筋梗塞後長期間経ってから発症してくるものもあり、心筋梗塞後のフォローアップは重要となってきます。

このページの最上段へ

弁膜症(べんまくしょう)

人間の血液循環は一方通行であり、心臓内には、血液が逆戻りしないように4つの弁がついています。これらの弁の変性や変形によって、狭窄が生じたり、閉鎖不全が生じる病気を弁膜症といいます。大動脈弁や僧帽弁に生じることが多い病気です。

弁膜症の治療

弁の状態によって、弁形成術や弁置換術が行われます。弁形成術は主に僧帽弁に行われ、もともとある自己弁の悪いところを修復する手術です。人工的な異物をできる限り使用しないといった点では理想的ですが、弁の状態によっては、形成術が不可能な場合も存在します。そのような場合には人工弁置換術が行われます。人工弁には、カーボンを材質とした機械弁とブタやウシの弁や心膜を材質とした生体弁があります。機械弁は、耐久性に優れた特性を持ちますが、血栓(血の塊)ができやすく、血栓により弁の動きが鈍くなったり、血栓が血流に乗り梗塞が生じやすいリスクがあるため、血栓を生じないようにするための抗凝固薬を必要とします。一方で、生体弁は、血栓をつくりにくく、抗凝固薬を必要としませんが、耐久性に劣る欠点があります。どの方法が良いか、どの弁が良いかは、年齢や状態、背景を念頭に入れ、それぞれの患者さんに最も適したものを選択しています。当院では、可能な限りMICSと呼ばれる小切開法を用いて、患者さんの負担を軽減する方法でこれらの手術を行うようにしています。

機械弁 生体弁
機械弁 生体弁
最近用いられている人工弁の例
このページの最上段へ

低侵襲心臓外科手術 MICS(Minimal Invasive Cardiac Surgery)

低侵襲心臓外科手術は、MICS(ミックス)と呼ばれ、通常の心臓手術が胸骨全正中切開法(左図)を用いて行われるのに対して、小切開肋間開胸法(右図)や胸骨部分切開法を用いて行います。胸骨を切開しない分、出血量が少なく、術後の胸郭動揺が少なくなり、呼吸状態の改善、合併症の軽減、運動機能の早期回復につながります。創が小さく美容上の満足度も高くなります。ただし、創が小さい分、手術の難易度は上がるため、全例には行えず、一定の条件を満たす必要があります。当院では、更に条件を満たせば、MICSよりもさらに小さい創で行うダヴィンチを用いたロボット支援下の手術も行っています。

このページの最上段へ

経カテーテル的大動脈弁移植術(TAVI)

TAVI(transcatheter aortic valve implantation)は、大動脈弁狭窄症患者さんの傷んだ大動脈弁内側にステント付き生体弁をカテーテルを用いて留置する新しい治療法です。実施には厳しい施設基準がありますが、当院は2016年12月にTAVIの施設認定を受け、2017年2月から治療を開始しました。従来のように大きく胸を切らず、人工心肺装置を使用しない低侵襲な手術方法で、高齢で合併疾患を持たれている患者さんには特に有効な治療法です。

このページの最上段へ

大動脈疾患(だいどうみゃくしっかん)

大動脈瘤

大動脈が瘤状に拡大したものを大動脈瘤といい、拡大とともに破裂するリスクが大きくなります。発生する部位により胸部大動脈瘤、上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤、下行大動脈瘤、腹部大動脈瘤などと呼ばれます。破裂が切迫したり、破裂してしまうまで症状がなく、破裂した場合の死亡率が非常に高いのが特徴です。従って、破裂する前の手術が必要になります。手術するタイミングは、破裂率が急激に大きくなり、手術した場合の危険率を上回る時期が選ばれ、一般的には、直径4cmから5cmを超えれば手術が勧められます。また、直径だけでなく、患者さんの状態や瘤の形状も考慮して適応は決められます。

このページの最上段へ

大動脈瘤の治療

人工血管置換術

瘤の存在する大動脈を人工血管に置換する手術です。重要な臓器への枝分かれが終わった場所に生じる腹部大動脈瘤の手術では、ほとんどが単純に大動脈を遮断するだけで手術が可能ですが、重要な枝を出す手前に存在する胸部大動脈瘤では単純遮断だけでは様々な臓器が虚血による障害を受けるため、手術中の血流を維持するための補助的な装置を使用する必要があります。大動脈瘤を確実に治すという意味では最も良い方法と言えます。

ステントグラフト内挿術

ステントグラフトと呼ばれる金網付きの人工血管を折りたたんで、カテーテルと呼ばれる細い管に乗せて病変部まで運び、膨らませることで、動脈瘤入口の正常血管から動脈瘤出口の正常血管までステントグラフトで橋を渡す方法です。大動脈の血流はステントグラフト内を流れるため、動脈瘤壁に圧力がかからず、破裂を予防できますが、動脈瘤の場所や性状によってはできない場合があります。カテーテルで治療できるため、創は小さく、身体の負担は少なくできます。ただし一回で治らなかったり、再発したりする確率は、人工血管置換術よりも高く、そのため、長期にわたる経過観察が必要になります。

腹部大動脈瘤に対する
ステントグラフト治療
胸部下行大動脈瘤に対する
ステントグラフト治療

人工血管置換術とステントグラフト内挿術は患者さんにより向き不向きがあるため、術前検査の結果から最も良い方法を選択しています。

このページの最上段へ

大動脈解離

大動脈壁は3層構造になっています。内側の膜に亀裂が入り、大動脈の壁内に血液が流入することで壁が裂ける病気を大動脈解離と言います。心臓から遠い場所で大動脈解離が生じた場合は手術をしなくてもよい場合が多いのですが、心臓に近い大動脈が解離した場合、心筋梗塞や心タンポナーデ、心不全といった致死的合併症を生じやすく、緊急手術の適応となります。

大動脈解離の治療

心臓から遠い場所での大動脈解離は降圧安静療法が最も行われます。心臓に近い場所での大動脈解離は緊急人工血管置換術が行われます。

急性大動脈解離と手術の一例

急性大動脈解離と手術の一例

このページの最上段へ

補助人工心臓

心臓病の最終過程は心不全です。心不全の末期には、薬物での治療が限界になります。
このような場合には人工心臓による心臓の補助が必要になります。
近畿大学心臓血管外科では補助人工心臓を常備していて、どのような場合にも迅速に装着できる体制を整えています。

左室補助装置 BVS5000 植込み型補助人工心臓システム
左室補助装置 BVS5000 植込み型補助人工心臓システム
このページの最上段へ

末梢血管疾患(まっしょうけっかんしっかん)

主に手足の動静脈に生じる疾患を末梢血管疾患と言います。代表的なものに末梢動脈疾患、閉塞性動脈硬化症や下肢静脈瘤があります。

末梢動脈疾患、閉塞性動脈硬化症

主に足の血管が動脈硬化により狭窄し、血流が不足することによって痛みやしびれが出る病気です。重症化すると安静にしていても痛みを感じたり、足に潰瘍ができたりし、切断に至ることもあります。

末梢動脈疾患の治療

カテーテル治療(経皮的血管形成術-PTA-)

カテーテルと呼ばれる細い管を用いて、動脈の狭窄部を風船やステントと呼ばれる金網で広げる方法です。

バイパス術

人工血管や自家静脈を用いてバイパス術が行われます。

このページの最上段へ

先天性疾患(せんてんせいしっかん)

代表的なものとして心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)、心房中隔欠損(しんぼうちゅうかくけっそん)、動脈管開存(どうみゃくかんかいぞん)、心内膜床欠損(しんないまくしょうけっそん)、ファロー四徴(ふぁろーしちょう)、大血管転位(だいけっかんてんい)、大動脈縮窄(だいどうみゃくしゅくさく)などがあります。
「呼吸が荒い心不全の症状が強いもの」、「チアノーゼ(顔色が紫色)が強いもの」の2つのタイプに大別することができます。手術には以下があります。

  • 解剖学的根治手術 : 正常の心臓の状態、またはそれに近い状態に修復する
  • 機能的根治手術 : 正常の心臓とは異なるが血液の流れは正常に近くなるように修復する
  • 姑息手術 : 症状緩和や将来、根治手術が可能となるような状態にするための当面の手術

などがあります。

当院の特色としては、上記疾患に加えて開設からの歴史が古く、近年では小児科と連携し、特に胎児診断症例が増加傾向であるということです。

@成人先天性心疾患  歴史が古いことから、当院での術後もしくは他院からの紹介で成人先天性心疾患症例(再手術なども含めて)が3分の1を占めています。合併疾患の治療に加え他科との連携や成人まで対応可能なスタッフが充実していることも大きな特色です。

機械弁 生体弁
ファロー四徴症術後 肺動脈+肺動脈弁置換症例

A胎児診断症例
小児科と産婦人科など周産期グループで連携し、胎児の状態に応じて緊急時にも対応しております。
血管輪症例

術前 術後
術前 術後

心房中隔欠損(しんぼうちゅうかくけっそん)

頻度の多い先天性疾患です。成人になるまで気付かないこともあります。症状は軽いですが、放置すると将来、重症な合併症を招き経過が悪くなります。
精密検査をして中等症以上であれば学童期までに欠損口を閉鎖します。手術のリスクは1%以下です。他に合併症がない限り、手術後は正常人と同等の経過を辿ります。

このページの最上段へ

心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)

最もよくみられる先天性心疾患です。重症の場合は乳児期に手術をする必要があります。5歳ぐらいまでに自然に閉鎖することがあります。症状が軽く、発育に支障のない場合には、その時期まで経過を見ます。
症状が軽い場合は学童期までに手術をします。
自然閉鎖の兆候がなく、欠損口と逆流する血液量が一定以上であれば手術が必要です。逆流する血液量が少なくても、欠損口の位置によっては、また、感染性心内膜炎を合併する場合には手術が必要です。
欠損口が小さく合併症がない場合は手術の必要はありません。

心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)

このページの最上段へ

動脈管開存(どうみゃくかんかいぞん)

胎内では開存しているものが生後数時間以内に自然に閉鎖します。しかし、閉鎖せず開存する場合があります。新生児期に薬物で閉鎖を試みることがあります。それ以降も開存する場合には、大小に関わらず閉鎖術が必要です。カテーテルでの閉鎖も試みられていますが手術が原則です。

このページの最上段へ

ファロー四徴症(ふぁろーしちょうしょう)

チアノーゼ(紫色の顔色)を認める先天性心臓病の代表です。
6ヶ月から2歳ぐらいの間に根治手術を行います。
しかし、新生時期、乳児期早期に症状が強い場合や、根治手術を行う条件を満たさない場合は、動脈と肺動脈をつなぐシャント手術を、まず行います。それ以後に根治手術を行います。
リスクが皆無とはいいませんが、比較的安全度の高い手術ができるようになりました。
手術後に肺動脈弁閉鎖不全や狭窄などが残る場合があります。

このページの最上段へ

大血管転位症(だいけっかんてんいしょう)

チアノーゼの心疾患の代表的なもののひとつです。
大動脈と肺動脈が完全に入れかわった状態で、赤ちゃんは長く生きることができません。
新生時期に肺動脈と大動脈をつなぎかえる手術をします。
(大血管スイッチ手術=ジャテン手術)

大動脈と肺動脈を切断 新しい大動脈の繋ぎ換え 肺動脈の繋ぎ換えと冠動脈の移植
大動脈と肺動脈を切断 新しい大動脈の繋ぎ換え 肺動脈の繋ぎ換えと冠動脈の移植
このページの最上段へ

総肺静脈還流異常(そうはいせいみゃくかんりゅういじょう)

正常の肺静脈は左心房へ繋がり、肺で酸素を多く取り入れた血液(動脈血)の全てが左心房へ還流します。肺静脈の全てが上下大動脈や右心房に繋がり、動脈血が異常に還流する状態を総肺静脈還流異常といいます。
新生児期に緊急、または準緊急的に手術をする代表的な疾患です。

このページの最上段へ

左室低形成症候群(さしつていけいせいしょうこうぐん)

大動脈、左心室、僧帽弁が欠如または高度に発育不良な状態です。
緊急的に手術をしなければ、生後まもなく死亡します。
手術は何回かに分けて行う必要があります。
Norwood手術を行い、その後、何度かに分けて、最終的に機能的根治手術に至ります。まだ、手術の成績は不良ですが、当科では成功例があります。

Norwood手術

このページの最上段へ

機能的根治手術(きのうてきこんちしゅじゅつ)とは

先天性心疾患は、欠損部や狭窄、大血管の接合異常を修復して正常の心臓にする、または、その状態に近づけるのが最終的な目標ですが、複雑な心臓奇形ではそのような目標に至れない場合があります。
しかし、そのような場合でも、心臓の構造は修復できないまでも、血液の流れは正常状態に近づけることができます。(下線部修正しています)
そのような手術を機能的根治手術といいます。当科でも多くの機能的根治手術を行い、成果を挙げています。

機能的根治手術の例

機能的根治手術の例

このページの最上段へ

不整脈(ふせいみゃく)

ペースメーカー : 脈拍が遅くなりすぎると脳の循環が不良になったり、心臓への負担が強くなり心不全に至ることがあります。
そのような場合、ペースメーカーによって症状が改善します。また、突然死の原因となる重症心室性不整脈に対して、特殊なペースメーカ(ICD)を植え込むことで、突然死を防ぐことが出来ます。
その他にも特殊なペースメーカーによる両室ペーシング(CRT)で重症な心不全を改善することも可能です。

MAZE手術 : 心房細動は心臓の能力を低下させたり、脳梗塞など血栓塞栓症の原因になりますので、厳重な治療が必要です。
Maze手術という手術によって規則正しい脈に戻すことが出来ます。

ペースメーカーの例 MAZE手術
ペースメーカーの例 MAZE手術
このページの最上段へ

末梢動脈疾患(まっしょうどうみゃくしっかん)

閉塞性動脈硬化症 下肢の動脈が狭窄、閉塞することで、様々な症状が出現します。

  • 1. 足先が冷たい
  • 2. 歩くにつれて足が痛くなり、歩けなくなる
  • 3. じっとしていても足が痛い
  • 4. 足の色が悪くなる

放置すると下肢を切断しなければならない場合もあります。
薬物治療、カテーテルによる血管形成術、バイパス手術によってほとんどの場合、治療が出来ます。
糖尿病、高血圧、透析など、全身の病気に伴う場合もあり、これらでは下肢切断に至る可能性が高くなります。
当科では積極的に下肢を守る治療(救肢治療)を行っています。

拡大画像を見る
拡大画像を見る
拡大画像を見る
拡大画像を見る
このページの最上段へ
このページの最上段へ

Copyright (C) 近大医学部心臓血管外科 All Right Reserved.

近畿大学医学部 心臓血管外科