医療関係者へ

頭部外傷

慢性硬膜下血腫まんせいこうまくかけっしゅ

慢性硬膜下血腫とは

 慢性硬膜下血腫とは、下図のように、脳と頭蓋骨の間に血液が少しずつ貯留する病気です。一般的には、60歳以上の高齢者に多く、頭を打ったあとや、しりもちなどで脳が揺り動かされたあと、2週間から3ヵ月の期間に起こります。忘れたころに起こってくることもよくあります。男性高齢者に多くみられますが、比較的若い人や頭を打った記憶のない人にみられることもあります。

慢性硬膜下血腫の症状

慢性硬膜下血腫の症状は多彩です。

などの症状があります。一般的に、脳卒中(脳梗塞、脳出血)とは違い症状はゆっくりと出現し、進行していきます。

慢性硬膜下血腫の原因

外傷以外で起こりやすい原因

慢性硬膜下血腫の病態

 基本的には、脳梗塞や脳出血とは違い、脳の外側に血が貯まる病気です。血が貯留することで、脳を外側から圧迫し、多彩な症状が出てきますので、血腫を除去することで、基本的には後遺症を残すことなく症状は改善します。

慢性硬膜下血腫の診断

診断は、主にCT撮影やMRI撮影で行います。

慢性硬膜下血腫の治療

 治療としては、血腫が少量であれば、飲み薬による治療を選択します。飲み薬は、漢方薬(五苓散、柴苓湯)やその他の薬を複合的に使用します。
 しかし、血腫の量が多い場合は、局所麻酔下での手術(穿頭血腫ドレナージ術)を行います。

手術方法

  1. 局所麻酔後、頭皮を3cm程度切開します。
  2. 頭蓋骨に直径1.5cmほどの小さな穴をあけます。
  3. その穴からチューブを血腫腔内に挿入し、血腫を除去します。
  4. 基本的には、血腫腔内にチューブを残して手術を終了し、病棟で1日程度、血腫の排出をはかります。
  5. 翌日、CT撮影にて血腫が排除されているのを確認し、チューブは抜去します。その後、1週間程度で抜糸を行い退院していただきます。
    ※経過の良い人は、術後2-3日で退院し、抜糸は外来で行うことも可能です。

頭蓋骨にあけた1.5cmの穴

何度も再発する人に対しては、カテーテルを使用した治療を行うこともあります。

手術方法

  1. 足の付け根の動脈より針を刺して、脳を包む膜の血管までカテーテルを進めます。
  2. そこでカテーテルから硬膜を包む膜の血管を詰めてしまいます。

慢性硬膜下血腫の再発

 一般的に、血腫の再発率は10-20%と言われています。
 ただし、血液をサラサラにする薬を飲まれている場合や、超高齢な方、転倒を繰り返す人、脳萎縮が強い人、肝臓や腎臓の機能が悪い人はさらに再発率が高くなります。

慢性硬膜下血腫の注意点

 軽い頭部外傷が発症の原因となることが多く、また、高齢者(60歳以上)、アルコールをよく飲む人、血液をさらさらにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を内服している人は発症のリスクが上がります。普段の生活でしりもちをついたり、転倒して頭を打たないように気をつけましょう。

報道関係者の方へ(コメント可能な医師)

医学部講師 吉岡 宏真