01 膝の痛みや不具合の原因は?
Q1. 加齢、O脚、太り過ぎ、原因はいろいろ
軟骨には神経がありませんが、すり減る際に破片や屑が生じ、それが刺激となって炎症を起こし(滑膜炎)、膝が腫れて水がたまったり、壊れた半月板が骨と骨の間に挟まったりして痛みが生じます。
Q2. 症状は良くなったり、悪くなったり
ある時期、膝が腫れて水がたまっても、軟骨のざらざらが削れると痛みが取れ、腫れも取れて水も引くなど、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返します。湿布を貼って、ヒアルロン酸の注射をして、痛み止めの薬を飲んで、そうやって痛み抑えながら5 年10 年、何とか保っている人もたくさんいます。
いよいよ軟骨がなくなってくると、軟骨の下にある骨が傷んできます。骨にも自然の修復能力がありますが、その能力を超えてストレスがかかると骨は壊れます.動くたびに痛くてたまらなくなるのです。軟骨がなくなり、つまり、骨が摩耗し陥没を繰り返しながら、関節は少しずつ壊れていきます。関節の荷重面が下がって、膝が曲がってしまいます。それが内側にだけ起こる(片減り)と、さらにO脚がひどくなります。特に骨が弱い骨粗しょう症の人は、骨の傷みがどんどん進み関節は変形していきます。
この段階になると手術を決意される方が多いですね。
近年、人工膝関節の成績や人工関節に対する認識度が高くなってきました。痛みが取れてきれいに歩けるようになった人を見て、良さが口コミで伝わることが多いですね。昔に比べるとずいぶん浸透してきました。60 歳以上の人に行うというのが一つの基準になっていますが、それは人工関節の耐用年数が20 年くらいということからです。当院で手術を受ける方の平均年齢は74 歳、海外では60 歳くらいで、日本は遅めです。
手術の日程が決まったら、医師は患者さんそれぞれの手順計画をたてます。CTをとりそのデータを用いて、例えばO脚に変形している骨に対してどういう風にどういう角度で切ったらいいか、内側と外側でどのくらいの厚みの骨を切れば真っすぐに入るかなどを細かく計算します。骨の変形の度合いは人によって違いますから、それを基準に合わせ込んで、人工膝関節が最もうまく機能してくれるような手術方法の準備をします。そして、その計画通りに手術を行います。 手術時間は1時間半から2時間程度。患者さんにとって術後の痛みが少なく、早くリハビリテーションができるような丁寧な手術を心がけています。
入院はおおよそ2週間。手術後にベッド上でじっとしていると、いろいろな合併症の問題が生じます。重大なのが、肺塞栓症、いわゆるエコノミークラス症候群です。それを防ぐためにも、手術の翌日から車いすでトイレに行き、午後からはリハビリを開始、歩く訓練をします。リハビリの先生方が積極的に運動を指導してくれます. 手術は少し大きなケガをしたと考えてください。入院中の2週間で歩けるようになりますが、ケガが治れば動けるようになります。手術前にできていたことは、もっと楽にできるようになるでしょう。
退院する時には、杖をついて歩いて帰ります。大ケガをした後ですから、しばらくは慎重に転ばないようにしてください。退院後、2週間で受診してもらいますが、その時に杖をついてくる患者さんは半分くらいです。診察をして、問題がなければ、「何でもやってください」「どんどん歩いてください」「どんどん使ってください」と指導します。正座はできませんが、基本的にしてはいけない動きはありません。