第13回
NEOPLASMS(腫瘍)
BENIGN (良性)
・grow slowly 発育は緩徐
・remain localized 限局性発育
・may have well-developed fibrous capsule 線維性被膜がみられる
・do not metastasize 転移はみられない
・ well-differentieted
histologically 高分化な組織像
MALIGNANT (悪性)
・grow rapidly 発育急激
・locally invasive 局所浸潤性
・irregular growth with no capsule 被膜形成のみられない不整増殖
・capable of metastasis 転移する
・ variable degrees of
differentiation (well differentiated, mederately differentiated, poorly
differentiated) 分化度は様々(高分化,中分化,低分化)
[解説および参考資料]
特に説明はいらないと思われますが,もう少し違いを整理してみますと以下のようになります.
・腫瘍の肉眼的性状
性状 |
良性腫瘍 |
悪性腫瘍 |
発育速度 |
遅い |
速い |
発育形式 |
拡大性(膨張性) |
浸潤性 |
被膜 |
ある(ことが多い) |
ない(ことが多い) |
正常組織との境界 |
明瞭 |
不明瞭 |
周囲組織との癒着 |
少ない |
多い |
形態 |
整 |
不整 |
硬度 |
硬い |
軟らかい |
色調 |
一様 |
多彩(出血や壊死などのため)( |
転移 |
ない |
多い |
再発 |
少ない |
多い |
(この肉眼分類は非常に大事です.特に,外科を専攻する方や実際に解剖に立ち会った場合,このことがどれだけ大事かわかってきます)
・組織学的性状*
性状 |
良性腫瘍 |
悪性腫瘍 |
境界 |
明瞭 |
不明瞭 |
腫瘍細胞 |
少ない |
多い |
間質 |
多い |
少ない |
細胞形態 |
均一 |
大小不同 |
細胞核 |
均一 |
大小不同 |
細胞異型 |
軽度 |
高度 |
構造異型 |
成熟型 |
未熟型 |
成熟組織との類似性 |
類似性が高い |
著しく異なる |
分化度 |
高い |
低い |
核分裂 |
少ない |
多い |
出血・壊死 |
少ない |
多い |
*:あくまで腫瘍の良悪での比較であり,悪性腫瘍であっても間質量,細胞形態,核の所見,分化度,分裂数,出血・壊死の有無などは異なってくる.
ここで,腫瘍の定義を整理します.
腫瘍とは:
1. 身体の細胞に由来する。
2. 自律的増殖:
まわりからの制約を受けずに独自に勝手気ままに振る舞う。
3. 過剰な増殖。
4. 無秩序,無目的な増殖。
5. しばしば無制限。
6. 発育に必要な栄養は宿主に依存。
7. 宿主の抵抗,ホルモンの影響を受けることあり。
癌の命名法: (日本癌学会)
1. 癌,[ガン]は悪性腫瘍を総称する
2. はじめに[癌]のある単語は悪性腫瘍一般を意味する。
(例:癌化,癌悪液質........)
3. 中間に[癌]がある単語も一般悪性腫瘍を意味する。
(例:発癌率,抗癌剤.....)
4. 異常の1.2.3で特に癌腫,肉腫を指定する事が必要なときには[癌]のかわ
りに癌腫,肉腫の語を挿入する。(例:癌腫化,抗肉腫剤.....)
5. 単語の最後に[癌]がある時は癌腫を意味する。 しかし,癌腫としても良
い。(例:子宮癌,扁平上皮癌......)
肉腫を指定するときには必ず肉腫をつける。(例:骨肉腫.....)
6. 良性腫瘍あるいは癌腫,肉腫以外-omaで終わる腫瘍はすべて[-腫]とする。
(例:骨腫,腺腫.....)
7. 従来,慣用的に人名を冠した[-腫瘍]と呼ばれている腫瘍はいずれも[-腫]
とする。 (例:Grawitz腫,Wilms腫.....)
参考:筑後講義用ノート
[参考画像]
a. b.
c. d.
a. 大腸絨毛腺腫(弱拡大),b.大腸絨毛腺腫(強拡大),c.大腸癌(中分化型腺癌,潰瘍形成がみられ,筋層を越える浸潤が認められる.),e.大腸癌(中分化型腺癌,核異型,構造異型が著しい.)
[演習問題]
悪性腫瘍の一般的な細胞学的特徴はどれか.
a. 核が大型である.
b. 核/細胞質比が大きい.
c. 核クロマチンが濃染.
d. 核小体が大きい.
e. 核クロマチン数が多い.
f. 細胞質は好塩基性である.
g. 核分裂像の頻度が高い.
h. 異常な核分裂像がみられる.
i. 同一組織集団内で染色体数,染色体形状に異同が多い.
j. 細胞の形状,大きさ,核数,核の大きさが不揃い.
正解:すべて
(参考:組織病理アトラス 第4版,文光堂, 1995年)