第14回

ONCOGENE EXPRESSION（癌遺伝子発現）　　

　　　　　　　　　　註：Pre Test原文を筆者一部改変---１）機能，2)変異例

a.GROWTH FACTORS（増殖因子）

1. SIS

　　1)β chain of platelet-derived growth factor(PGFB)　血小板由来成長因子のβ鎖

　　2) astrocytom（星細胞腫） and osteogenic sarcomas（骨原発肉腫）

b.GROWTH FACTOR RECEPTORS（増殖因子レセプター）

1. ERBB1,ERBB2^＊

　　1) receptor for epidermal growth factor(EGF)---上皮成長因子のレセプター

　　2) breast cancer（乳癌） and squmous cell carcinoma of the lung（肺扁平上皮癌）

＊：ERBB２はHER2とも呼ばれ，細胞膜表面にある受容体型チロシンキナーゼ．

2. RET

1) receptor for neurotrophic factores---グリア細胞由来神経栄養因子レセプター

2) multiple endocrine neoplasia 2（多発性内分泌腫瘍２型）

　　　 and familial medullary thyroid carcinoma（家族性甲状腺髄様癌）

3. FMS

1) receptor for colony-stimulating factor (CSF)---コロニー刺激因子のレセプター

2) Leukemia（白血病）

4.KIT

　　1) receptor of stem cell(steel) factor---幹細胞増殖因子レセプター　　

　　2) gastrointestinal stromal tumors(GIST胃消化管間葉性腫瘍)

　　　 and leukemias（白血病）

c.ABNORMAL MEMBRANE PROTEIN KINASE（膜タンパクキナーゼ異常）

1. ABL

　　1) nonreceptor membrane tyrosine kinase（非レセプター型膜チロシンキナーゼ）

　　2) chronic myelocytic leukemia (CML　慢性骨髄性白血病);

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　on chromosome 9　à　t (9;22)-----染色体転座

d.GTP-BINDING PROTEINS（GTP結合タンパク）

1. RAS: H-ras, K-ras, N-ras

　　1) product is p21 (protein)　遺伝子産物はp21と呼ばれる．

　　2) adenocarcinoma(腺癌)

e.NUCLER REGULATORY PROTEINS（核内調節タンパク）

1)転写因子

2)

・C-MYC ---> Burkitt's lymphoma（バーキットリンパ腫）; on chromosome 8 à t (8;14)

・N-MYC ---> neuroblastoma（神経芽腫）

・L-MYC ---> small cell carcinoma of the lung（肺小細胞癌）

f.CELL CYCLE REGULATORS（細胞周期制御）

　　　2)

・Cyclin D1 --->　mantle cell lymphoma（マントル細胞リンパ腫）

・Cyclin E ---> breast cancer（乳癌）

・CDK4 ---> glioblastoma （膠芽腫）and melanoma（悪性黒色腫）

参考：

http://ja.wikipedia.org/wiki/癌遺伝子

http://en.wikipedia.org/wiki/Oncogene

腫瘍関連遺伝子は癌遺伝子（oncogene)と癌抑制遺伝子（tumor suppressor gene）とに大別されます．

初めに，ウィルス由来の癌遺伝子が研究されていました．ヒトをはじめ，多くの高等動物のゲノムに，ウィルス由来の癌遺伝子と非常に相同性の高い塩基配列が保存されていることが明らかにされました．地上の生物の発生とウィルスとの深く長い関わりが示唆されますよね．

癌は遺伝子の体細胞突然変異により生じます．癌細胞では，癌遺伝子の活性化，癌抑制遺伝子の不活化により，無秩序な増殖が生じるとされています．ゲノムの安定性を維持する遺伝子の不活化も，突然変異の蓄積を介して癌の発生に関わります．

癌遺伝子は，細胞の増殖のシグナル伝達に関与する遺伝子と，アポトーシスに抑制的作用する遺伝子からなります．

(種類)

1.細胞増殖因子をコードする遺伝子，

2.増殖因子受容体をコードする因子，

3.細胞内のシグナル伝達因子をコードする遺伝子，

4.核内の転写調節因子をコードする遺伝子，

5.アポトーシスに抑制的作用する遺伝子

正常細胞内で働いている癌遺伝子が癌遺伝子としての機能をもつためには，相同染色体上にある2つの対立遺伝子のどちらか一方が活性化されれば充分とされています．上記の癌遺伝子の染色体上の位置は既に解明されています．

癌遺伝子の活性化には，以下の2つの機序があります．

1.点突然変異（poit mutation）などにより遺伝子産物そのものの機能が変わる場合．

2.遺伝子増幅や遺伝子再構成などにより遺伝子の発現量が増加する場合．

[参考画像]

症例：75歳，男性．胃のGIST

a. b.

a.HE染色．紡錘形細胞の錯綜する増殖がみられる．b.c-kit(CD117)の過剰発現がみられる．

[演習問題]

腫瘍と癌遺伝子発現の組合せで正しいのはどれか．

a. 慢性骨髄性白血病-----c-myc

b. 星細胞腫-----k-ras

c. 胃消化管間葉性腫瘍-----c-kit

d. マントル細胞リンパ腫-----cyclinD1

e. バーキットリンパ腫-----c-sis

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　正解：c.d