第15回インターネット病理勉強会

第16回

ANTIONCOGENES　癌抑制遺伝子の種類と賦活化機構について

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（註：Pre Test原文を筆者一部改変）

[重要用語]

TUMOR SUPPRESSOR GENES（腫瘍抑制遺伝子）

　　・RB1 ---> retinoblastoma（網膜芽腫） and osteogenic sarcoma (osteosarcoma骨肉腫)

　　・p53 ---> many tumors and the Li-Fraumeni syndrome＊

　　・WT-1 ---> Wilms tumor and aniridia（無虹彩症）

　　・NF-1 ---> neurofibromatosis type 1（神経線維腫症1型）

　　・NF-2 ---> neurofibromatosis type 2（神経線維腫症2型）; product of NF2 is merlin

　・APC/beta-catenin ---> familial adenomatous polyposis coli（家族性大腸ポリポーシス）　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　/colon cancer

　　・PTEN ---> Cowden syndrome#

註：＊Li-Fraumeni syndromeはp53片側アレルの生殖細胞変異をもつ家系．

#: What is Cowden syndrome?　　　　http://ghr.nlm.nih.gov/condition/cowden-syndrome

[解説および参考資料]

細胞の癌化を抑制する働きをする遺伝子を癌抑制遺伝子といいます．これは，腫瘍形成を抑制する正常遺伝子産物の欠損であり，両側アレルの変異や欠失が必要となります．

大きく２タイプに分類されます．

1) gatekeeper型癌抑制遺伝子：欠損が直接増殖異常を引き起こす．

2) caretaker型癌抑制遺伝子：ゲノム不安定性や遺伝子変異の蓄積を介して間接的に癌化を促進する．

上記の例はすべてgatekeeper型癌抑制遺伝子に分類されます．

caretaker型癌抑制遺伝子の例としては，

・家族性乳癌---BRCA-1/2

・ポリポーシスを伴わない遺伝性大腸癌(HNPCC)---ミスマッチ修復遺伝子hMSH2, fMLH1

・色素性乾皮症---DNA損傷を修復する遺伝子の変異

・ブルーム症候群，ウェルナー症候群---ヘリカーゼの欠損による染色体不安定性

癌抑制遺伝子は相同染色体上に対立遺伝子として存在しております．ですから，遺伝的に片方の癌抑制遺伝子に異常がある場合には一回の変異が起こるだけで癌が発症するように働くと考えられています．遺伝性腫瘍の家系では，発症頻度が高く，発症年齢が低い理由がここに求められているわけです．

また，一般の散発癌では，対立遺伝子の両方に異常がある必要があります．これを，Knudsonの2ヒットモデルと言います．

参考：主な癌抑制遺伝子

参考図書：

　　　　病理学キーワード　'97　病理と臨床　臨時増刊号

　　　　スタンダード病理学

　　　　http://medmerry.blog80.fc2.com/blog-entry-548.html

[参考画像]

a. b.

a. 網膜芽腫（眼球腫瘍の割面像）．　b.網膜芽腫（組織所見，HE染色，x400），c.眼球の割面所見（白色領域が腫瘍）　　

[演習問題]

神経芽細胞腫と関連性の強い癌抑制遺伝子はどれか．

a. RB

b. p53

c. APC

d. WT1

e. NF1

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　正解：a