第17回
17. CARCINOGENS-1
[重要用語]
a. Chemicals(化学物質)
1. INITIATORS (イニシエーション)
・tabacco smake (喫煙)---> many tumors
・benzene (ベンゼン)---> leukemias(白血病)
・poly vinyl chloride (ポリ塩化ビニル)---> angiosarcomas of the liver(肝血管肉腫)
・beta-naphthylamine (ベータナフチールアミン)---> cancer of the urinary bladder(膀胱癌)
・azo dyes(アゾ色素) ---> tumor of the liver(肝腫瘍)
・aflatoxin (アフラトキシン)---> hepatoma(肝細胞癌)
・asbestos(アスベスト) ---> mesothelioma(悪性中皮腫) and lung tumors(肺腫瘍)
・arsenic(砒素)---> skin cancer(皮膚癌)
2.PROMOTERS (プロモーター)
・saccharin (サッカリン)---> bladder cancer in
rats
・hormones (estrogen)
[解説および参考資料]
今回は,皆さんよくご存知のtwo hit theory (Berenblum)についてです.
現在は,これが発展し,multi-step theory (多段階説)として認められております.
つまり,イニシエーション,プロモーション(狭義),プログレッション(progression)です.後者の2つは広義のプロモーションともいわれます.
これらの過程には,前回までに出てきましたとおり,癌遺伝子の活性化や癌抑制遺伝子の不活化が段階的にみられることが次第にわかりつつあります.
要約しますと...
1. イニシエーション
・発癌物質は生体内に取り込まれると,チトクロームP-450(薬物代謝酵素)によって活性化される.
・DNAと結合して,発癌物質・DNA付加体を形成する.
・一部はそのままの形でDNAと結合しDNA付加体を形成する.
これらによってDNAは傷つけられる(DNA損傷)
・放射線や紫外線は細胞構成分子から発生するラジカルによってDNA損傷を招く.
・損傷を受けたDNAの多くはDNA修復酵素の働きによって修復される.
・しかし,一部は,未修復のままか修復の誤りを起こしDNAの塩基配列の変化をもたらす.(これを,突然変異といいます)
・そして,変異細胞が形成される.(これは不可逆性)
・多くの変異細胞は死に至りますので,実際に癌化する変異細胞はわずかと考えられている.
2. プロモーション(狭義)
・変異細胞が増殖をしてはじめて前癌細胞となる.(増殖が必須)
・これには,比較的長時間を要する.
・癌化して潜在癌となるまでが狭義のプロモーション.
3. プログレッション
・細胞はさらに増殖し,浸潤傾向が出現し,より悪性となり臨床癌となる.
二段階発癌が知られているもの:
皮膚,肝臓,胃,大腸,乳腺,膀胱,甲状腺など.
発癌プロモーター(上記以外):
フェノバルビタール(肝,甲状腺),NaCl(胃),胆汁酸(大腸),アスコルビン酸ナトリウムなど数々のNa塩(膀胱)
[参考画像]
a. b.
c. d.
悪性中皮腫:
a. HE染色標本.b.アルシャン青染色(ヒアルロン酸が青く染色される). c.カルレチニン染色陽性. d. 胸水中に剥離した中皮腫細胞集塊(PAP染色,細胞診)
[演習問題]
発癌物質と腫瘍の関連性の強い組合せである.正しいのはどれか.
a. ベンゼン---膀胱癌
b. ポリ塩化ビニル---肝細胞癌
c. アフラトキシン---肝血管肉腫
d. アスベスト---胸膜悪性中皮腫
e. ヒ素---皮膚ボーエン病
f. ベータナフチールアミン---白血病
正解:d.e