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20.Tumor markaers 腫瘍マーカー

[重要用語]

a. α-Fetoprotein(AFP)

 ・liver cancer (hepatocellular carcinoma–肝細胞癌)

 ・germ cell tumors胚細胞腫瘍 (e.g. york sac tumors卵黄嚢腫瘍, embryonal carcinoma胎児性癌, NOT seninoma)

b.β-HCG(Human Chorionic Goadotropin.)

 ・gestational trophoblastic disease妊娠性絨毛性疾患(e.g. choriocarcinoma絨毛癌, hydatidiform mole胞状奇胎)

 ・dysgerminoma

 ・seminoma精上皮腫 (10% of case)

c. Prostate-Specific Antigen(PSA) and Prostatic Acid Phosphatase(PAP)

 ・adenocarcinoma of prostate(前立腺癌)

d. Carcinoembryonic Antiges(CEA)-癌胎児性抗原

 ・adenocarcinoma(腺癌) of colon, pancreas, stomach, and breast (nonspecific marker非特異的抗原)

e.CA 125

 ・ovarian cancer(卵巣癌)

f.CA 19-9

 ・pancreatic cancer and colon cancer.(膵癌,結腸癌)

g. CA 15-3

 ・breast cancer(乳癌)

h. S-100

 ・melanoma(悪性黒色腫)

 ・neural tumors(神経腫瘍)

 

[解説および参考資料]

外科病理では,免疫組織学的な手法を使って染色し検索することは日常の診断では毎日行われており,非常に重要なツールです.この場合,酵素抗体法が基本となる手技ですが,それには,

1. 酵素抗体間接法,酵素標識法

2. PAP

3. ABC(avidin biotin peroxidase complex)

4. LSAB(labeled streptavidin biotin)

が基本です.

最近では,デキストランに特異抗体と多数のペルオキシダーゼを結合させてone stepで行えるようにしたEPOS法やデキストランポリマーを二次抗体とし感度をあげるEnvision法なども行われるようになりました.(今回はテーマでありませんので略)

 

腫瘍マーカーを染めた後の検鏡に際してどこを注意してみていくかと言いますと...

染まっていれば陽性というものではありません.陽性となるべき部位が陽性であるかどうかをチェックしながら陽性と判断することになります.

 

腫瘍マーカーの局在部位とその種類

1. 細胞膜が陽性:

 CEA, CA19-9, CA125など,EMA, 白血球共通抗原,リンパ球表面マーカー,EGFマーカー,c-erb B-2産物

2. 核が陽性

 エストロゲン・プロゲステロンレセプター,増殖細胞核抗原(PCNA)Ki-67, c-myc産物,p53,Rb産物

3. 細胞質が陽性

 1)びまん性陽性(つまり粗面小胞体や細胞質が陽性となる場合)

    hCG, S-100蛋白,免疫グロブリン

 2) ゴルジ野(ゴルジ装置)が陽性

    プロラクチン,免疫グロブリン

 3) 顆粒状に陽性(分泌顆粒が陽性となる)

    ホルモン,クロモグラニン,EGF,αFP

 4) 線維状(中間フィラメントが陽性となる)

    ケラチン,ビメンチン,デスミン,GFAP,ニューロフィラメント

 

腫瘍マーカーの種類

1. 血中でdetectできる腫瘍マーカー: 

  a) CEA, αFP, hCGなど

   b) 免疫グロブリン(Ig G, A, M,カッパ, ラムダ)

   c) ホルモン

  d) 酵素

  e) モノクロナール抗体で検出可能な抗原(CA125, CA19-9, CA15-3など)

2. 細胞組織内でのみdetectできる腫瘍マーカー

   a) リンパ球表面マーカー

  b) 中間フィラメント

  c) レセプター(ステロイドレセプター,インテグリン,EGFR)

  d) 組織特異抗原(サイログロブリン)

  e) 間質成分(ラミニンなど)

 

これらをうまく組み合わせて

小型細胞性悪性腫瘍診断のフローチャート

多形細胞性悪性腫瘍のフローチャート

大細胞性悪性腫瘍のフローチャート

などが実際に利用されています.

その他,予後推定因子(例えば乳癌のエストロゲンレセプターなど),治療効果に関する因子(多剤耐性因子MDRなど)の検索にも利用されています.

 

ここでは,基本的なことだけに言及しました.

腫瘍マーカーの実際の診断への応用に関してはまたいずれ別項目を取る必要性があると考えます.

 

参考:

・外科病理診断学 金芳堂

・外科病理マニュアル 文光堂

[参考画像]

 

a.  b.

 

c.   d.

 

a.GFAP(正常大脳,神経膠細胞), b.: S-100(断端神経腫), c.:AFPAFP産生腺癌,胃癌)

d.EMA77歳,女性,肺癌(腺癌))

 

 

演習問題]

症例は72歳,男性.胃の幽門前庭部に隆起性病変が認められ手術的に提出された.図はHE染色(a)とα-fetoprotein免疫染色(b)を示す.正しいのはどれか.

(a)    (b)

 

a.特殊型胃癌(胎児消化管類似癌)

b.胃絨毛癌

c,胃カルチノイド

d.印環細胞癌

e.消化管間質腫瘍(GIST)

                                   正解:a