第20回インターネット病理勉強会　　（Ｈ11

第23回

21.PROTEIN-ENERGY MALNUTRATION (PEM)タンパク質カロリーの栄養失調

[重要用語]

a.Kwashiorkorクワシオルコル

　・dietary protein deficiency食事のタンパク欠乏 (without calorie deficiencyカロリー欠乏は伴わない)

　・anasarca (generalized edema　全身水腫)

　・fatty liver脂肪肝 (due to decreased apoproteins and decreased VLDL synthesis)

　　　　　　　　アポプロテイン減少とVLDL合成増加

　・abnormal skin and hair皮膚，毛髪異常

　・defective enzyme formation 酵素形成の欠陥 --> malabsorption吸収不良 (hard to treat)

b.Marasmusマラスムス

　・dietary calorie deficiency食事のカロリー欠乏 (without protein deficiencyタンパク質欠乏は伴わない)

　・genaralized wasting全身性るい痩("skin and bones")

[解説および参考資料]

1．クワシオルコル kwashiorkor

発展途上国の小児にみられる栄養障害で，蛋白質の摂取不足によりおこる．主に離乳期の幼児にみられ，成長遅延，浮腫，無欲状であるが，著明なるい痩はみられない．皮下脂肪は比軟的臭く保たれているが，腹筋の萎縮のため腹部は突出する．毛髪は赤みや黄みを帯びて，細くまばらになる．最初の症例がアフリカのガーナで認められ，現地語で黄金色の子供を意味するkwashiorkorは，この特有な毛髪の状態によるものといわれている．皮膚には色素の沈着や脱色素（flaky paintとよばれる）がみられる．肝には脂肪が沈着し腫大する．脂肪の多い泥状の下痢がみられ，種々の感染症を合伴することが多い．

肝臓では，門脈域周囲に脂肪沈着が見られ腫大する．膵，唾液腺，小腸分泌腺，骨格筋の萎縮が見られると言われます．

アフリカのGold Coastの医師Dr Cicely Williamsが1936年に詳細な記述を残しています．

［関連サイト］　http://en.wikipedia.org/wiki/Kwashiorkor

2．マラスムス（消耗症）marasmus

発展途上国で，とくに食糧事情の悪い地域の小児にみられる．蛋自質とカロリー摂取の欠乏により生じる栄養失調である．著明なるい痩，脱水，下痢，腹部膨満，発育遅延がみられる．皮下脂肪はなくなり，筋肉も萎縮している．浮腫はみられない．無欲状態となり死に至るものである．臓器の萎縮が見られるにも関わらず，マクロ所見，病理組織学的所見に著変はないと言われ，肝臓にも脂肪変性は見られないとされています．

蛋白質，炭水化物，脂肪，ビタミン，塩類などすべての食品成分が極端に不足することが原因とされ，しばしば，"balanced starvation"といわれます．

［PEMの組織所見］

・クワシオルコル：小腸粘膜萎縮，陰窩の分裂消失．

・共通する所見：骨髄低形成，赤芽球数減少による貧血．大脳萎縮，ニューロン数減少，白質のミエリン化の障害．胸腺・リンパ節の萎縮．

［感想］現在でも世界には飢餓で苦しんでいる人は多く，乳幼児の映像を見るたびに心が痛みます．病理医としては何にも役立つことができません．日本に生まれて良かったとするだけで良いか．医学教育を受けたものとして，何かすべきではないか．（筑後）

参照図書：

　・新病理学総論

　・Anderson's Patrhology

　・病態病理学（改訂17版）

［関連サイト］　http://en.wikipedia.org/wiki/Marasmus

[参考画像]

a. b.