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28. PAX(PAIRED BOX) GENES

[重要用語]

PAX2 ---> renal-colobomasyndromeHuman PAX2 mutation syndrome*

PAX3 ---> Waardenburg syndrome (white forelocks of hair(髪の白い前髪); eye colors dont match)

PAX5 ---> lymphoplasmacytoid lymphoma$

PAX6 ---> aniridia(無虹彩)and Wilms syndrome&

PAX8 ---> follicular thyroid carcinoma(甲状腺濾胞癌)

PAX9 ---> congenital absence of teeth(歯の先天的欠損)

訳者註:

*:腎,視神経の低形成,膀胱尿管逆流現象(VUR)や高周波域の聴力障害,中枢神経の奇形,胃生殖器の異常を合併する.#

$lymphoplasmacytoid lymphoma2008年のWHO分類では,mature B-cell neoplasm, lymphoplasmacytic lymphomaとされています.PAX5B細胞への分化の開始に必須なtranscription factorです.しかし,形質細胞は陽性とはなりません.

#参考文献

1.佐藤忠司,田代克弥他.日本小児腎臓病学会雑誌, Vol. 13 (2000) , No. 2 pp.125-130.

2. Renal coloboma syndrome. http://www.inheritedhealth.com/condition/Renal_Coloboma_Syndrome/697

3. 中野 万智子, 柳田 英彦他.新規のPAX2遺伝子変異を有し, 精神発育遅滞を伴った腎コロボーマ症候群の1例.日本小児腎臓病学会雑誌,Vol. 21 (2008) , No. 2 pp.212-216

&Wilms tumor aniridia syndromeのこと.第11番染色体の短腕の欠失がみられる.

 

 

 [解説および参考資料]

Pax遺伝子(ペアードボックス遺伝子: Paired box gene - ペアードボックスと呼ばれる領域をもつ遺伝子群

PAXグループ
Pax (paired box)はセットの転写因子をコードする小さいが、発生上で重要な役割を担う遺伝子ファミリーです。哺乳動物では、(オルソログ存在下では虫・ハエ・カエ ル・魚・鳥なども)9つのPaxファミリーが報告されています。Pax遺伝子は、胚において組織の発達や細胞の分化の制御、細胞増殖の促進、細胞系統の規定、移動性、生存を制御します。発生が完全であるときは、Pax遺伝子の発現は減少しますが、ある組織では、Adultステージまで発現が持続する、あるいは再発現します。Adult組織には、組織特異的再生機構が存在し、ストレスにより誘発される細胞死に対する防御反応があります。
Pax遺伝子ファミリーは全て、 paired box DNA結合ドメインと呼ばれる領域を含みます。このファミリーはまずオクタペプチド領域あるいはホメオドメインの有無によって1-6のグループに分けられます。サブグループIPAX2/PAX5/PAX8)およびIIPAX3/PAX7)は、様々な腫瘍で発現しているため、腫瘍マーカーとしても用いられています。これら遺伝子の発現をノックダウンすると、腫瘍細胞が死ぬことから、重要な役割が示唆されます。また、PAX2では、癌において染色体の転位を引き起こすことが報告されています。

 

参考:PAX gene family      http://ghr.nlm.nih.gov/geneFamily/pax

 

[参考画像]

a.  

b.

 

c.

a: Waardenburg syndrome 3歳,女児. b:B cellにおけるPAX5の役割.

a.参考:A Karaman, C Aliagaoglu: Waardenburg syndrom type 1.  Dermatology Online Journal 2006.12 (3): 21. (この文献によるとWaardenburg syndrom(WS)には4型あり,WS1WS3においてPAX3 mutationが知られているとのことである.)

b.参考:César Cobaleda , Alexandra Schebesta, Alessio Delogu & Meinrad Busslinger. Pax5: the guardian of B cell identity and function. Nature Immunology 8, 463 - 470 (2007) Published online: 17 April 2007 | doi:10.1038/ni145

http://www.nature.com/ni/journal/v8/n5/fig_tab/ni1454_F2.html

c.PAX5免疫染色:77歳,男性.頚部リンパ節腫大.病理診断:malignant lymphoma, diffuse large B-cell lymphoma.腫瘍細胞の核に一致して陽性となる.

 

演習問題]

胚における組織の発達や細胞の分化の制御、細胞増殖の促進、生存などを制御するPax遺伝子の異常が知られている疾患はどれか.

a.Waardenburg syndrome

b.lymphoplasmacytic lymphom

c. Wilms syndrome

d. 甲状腺濾胞癌

e. 腎コロボーマ症候群

                                                     正解:a.b.c.d.e.