第6回
Cardinal signs of
inflammation(炎症の徴候)
・rubor-->redness(発赤)
・calor---> heat(発熱)
・tumor--> swelling(腫脹)
・dolor--> pain(疼痛)
[解説および参考資料]
以上は,いわずと知れたCelsus(30 BC〜39AD)の炎症の四徴候です.後にGalenusがFunctio laesa----> functional disturbance(機能障害)をつけ加え現在では炎症の五徴候といわれています.
*炎症のミニ歴史(上記の後)
Harvey,Malpighi---->毛細血管循環
Rokitansky-------->浸出液を重視
Cohnheim-------->急性炎症の特徴は血管中心の組織反応と考えた.
Metchnikoff------>細胞貪食作用が主体で,防御反応の主役.
Menkin----->ケミカルメディエーター(leukotoxin)を初めて分離
1930年代にプロスタグランディンの発見
Rocha ,Silva(1949年)----->ブラジキニン分離
急性炎症の転帰;(以下の順に起こるとされる.)
●局所に起炎性刺激が作用
●いろいろな程度に変性・壊死が起こる
●化学伝達物質(chemical mediator)が放出される
●最初,一過性に小動脈が収縮し虚血を起こす(蒼白)
●うっ血と化学伝達物質により,細静脈壁の透過性が亢進
●血液成分が血管外に出る(この液のことを浸出液という)
●血管の透過性が著しく亢進すると血漿中のフィブリノーゲンが滲出しフィブリンが析出する
●静脈内の血液が濃縮される
●血流は次第に緩やかとなりついには静止する
●白血球は血管腔の辺縁部を流れるようになる
●白血球の血管内皮細胞への付着(細胞接着分子が重要)
●血管内皮細胞の接合部からアメーバ状に偽足を出して侵入する
●基底膜を通過し,血管外に出る(遊出)
●これらの細胞は炎症の原因となった病原体,異物などの周囲に集まる。
(炎症細胞浸潤という)
・好中球,マクロファージは細菌,異物などを貪食(防御と清掃作用)
・貪食後崩壊してタンパク分解酵素などを放出し壊死組織を融解させる。(膿瘍)
・この際血管透過性や白血球浸潤を促す化学伝達物質が遊離し炎症反応は増強される
●血管透過性が著しく亢進すると赤血球も血管外に(漏出性出血)
●血管内皮細胞の障害あるいは血流の静止により血栓形成のことあり.
●次第に治癒の方向へ;
・循環障害,滲出性病変が次第に消えていく
●線維素が多い箇所では肉芽組織による器質化が起こり,周囲の組織と癒着してしまう
●最終的には修復機転が働く;
・吸収,排除,器質化,被包化など(異物処理がおこる)
●周囲の健全な箇所から再生が起こり欠損部が修復される
慢性炎症:
1)萎縮;細胞の代謝が長期間抑制されるため
2)循環障害は軽度,遊出細胞はリンパ球,形質細胞,マクロファージが主体
3)進行性病変が起こる;
異物処理機構,欠損組織の修復,化生,細胞・組織の増殖(増殖性炎)
(この部分は筑後講義ノートから)
【関連サイト】
http://ja.wikipedia.org/wiki/炎症
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~byouri2/text/inflammation/inflammation.htm
[参考画像]
a. b.
c.
a.胸水中の炎症細胞(ギムザ染色)(好中球,リンパ球,中皮細胞含む)
b.急性虫垂炎の組織中にみられた膿瘍. c.慢性甲状腺炎(リンパ球,形質細胞の浸潤と線維増生がみられる)
演習問題
炎症細胞とその細胞が産生するケミカルメディエータの組合せで正しいのはどれか.
a. 好塩基球-----ヒスタミン
b. 白血球-------プロスタグランディン
c. 好中球-------リソソーム酵素
d. マクロファージ----一酸化窒素
e. リンパ球-----サイトカイン
正解:a.b.c.d
参考:標準病理学(第4版)p37,2010.