献体運動にご理解を

献体運動にご理解を

ご挨拶

医学部長・解剖学教授

「近畿大学白菊会」の献体登録制度をより広くご理解いただくために

近畿大学は総合大学の基礎の上に立って医学の教育・研究および診療の向上を目指して、医学部を設置しており、国民の福祉を高め、広く人類に貢献するよう努力致しているものであります。
本学の教育・研究は我々の努力はもとより、広く社会の各方面のかたがたのご支援やご協力無くして充分にこれを全うすることは困難と存じます。
殊にすべての医学・医療の基礎となる人体の構造と仕組の理解には、実際に人体について学び、研究しなければなりません。そのためには、自分の死後、ご遺体を正常解剖の為に役立てようと発意された篤志家のかたがたのご協力なくして医学教育の基礎を究めることはできません。
本学医学部内には、篤志のかたがたが天寿を全うされた後、ご遺体をご寄贈下さるよう予め登録して頂く「篤志献体登録制度」を儲け、ご協力をお願い致しております。
広く社会の皆様の医学への深いご理解と、ご協力のしるしとして、
献体登録をしてくださいますようお願い申し上げる次第であります。
大変厄介なお願いではありますが、何卒よろしくご配慮・
ご協力をお願い致します。

医学部長・解剖学教授

四天王寺第101世管長 出口常順

生命の起源がまだ科学的に証明されておらず、はっきり判らないのと同じ様に、死後の世界につきましても、こうだと説明することはできません。そこに、生命というものの偉大さと尊厳さが潜んでいるように思われるのであります。
仏教の世界では困難ということを大切に致します。(原)因があれば(結)果がありますけども、そこに縁というものがなければ、生命は生まれてはこないのであります。
今、四天王寺に一輪の大きな原始蓮が咲いておりますが、この種子は鹿島の丸木舟にあった弥生式土器の中で発見されたものといわれております。この種子には生命を宿し花を咲かせるだけの因をもってはおりますが、この種子を土中に植え、水や太陽の光という縁を与えてやらなければ。果即ち花を咲かせることはなかったでありましょう。
かように、私たちの生命世界は因・縁・果というものによって支配されておるのであります。一方、生命を全うした後に私たちはどうなっていくのか、今現在生きている私たちにとって大変大きな問題ではありますが、残念ながらよく判らないのであります。私たちがいくらお経を読み、研究を重ねましても判らない。このことを判っておられますのはお釈迦さま只一人であります。したがって結論的に云ってしまいますと、私たちの死して後のことは、このお釈迦さまにゆだね、そのお導きに従うしか、道がないということであります。そしてそうすることが最も正しいことであろうかと思います。
このお釈迦さまのありがたいお導きをいただくために、私たちは、生命ある間は、生きとし生けるものをいつくしみ、全てに感謝しながら謙虚な気持ちで生きていくことが大切かと思われます。善行を施しておけばきっといい結果にめぐりあえるにちがいないのです。
また、無縁の衆生を有縁にお導きするのも大切なことであります。誰もが、何かのご縁で顔見知りになれば、朝夕のあいさつを交わし、話し合いが生まれ気心がお互いに知れます。そこにはいさかいやいがみあいが無くなり、心安らかな平穏な日々が生まれるでありましょう。魂の世界でも全く同じことであります。
四天王寺では、近畿大学医学部へご献体されましたかたがたの御魂を有縁仏として菩提をお弔いし、年一回盛大な法要を催してそのご高志に対し、安らかなお眠りを年次御魂をおなぐさめしております。
死してなお、生あるものに益をもたらす献体というご行為は、これ以上の崇高なものはなく、慈悲の極みであろうかと存じます。合掌

四天王寺第101世管長 出口常順


白菊会とは

医学の基礎である解剖学教育における正常解剖のために、自分の死後、遺体を「無条件」「無報酬」で提要することが献体であり、その人々の篤志を推進して積極的に良医づくりに参加することが献体運動であります。
近畿大学医学部では「近畿大学白菊会」と称する献体について篤志を持つかたがたの会があります。この会は会員の健康保持と増進および相互の懇親をはかり、かつこの献体運動を推進していくことを目的としています。
真の良医を育成するというこの運動の主旨を一部の篤志家の皆様ばかりでなく、より広く社会の皆様がたに正しく理解していただきたいと思います。
献体されたご遺体によって医学を修め、育成された医師達は必ずや社会全体に貢献致します。私達の子どもたちや孫たちのよりよき時代のために献体運動の輪を広げていきたいものと念じています。

献体の意義

今日ほど「医の倫理」が強調され、「良医」の育成が強く要望されている時はありません。医師・歯科医師になろうとする学生が、医学・歯学の勉強をはじめるに当たり、「解剖学実習」で、「より良い医師・歯科医師になるために、自分の身体を使って十分に勉強して下さい」という願いをこめて献体されたご遺体によって学習をすることにより、学生は、人体の解剖学の知識を習得すると同時に、献体に対する感謝の気持と、その期待に応える責任と自覚をもつという点で、大きな精神的教育を受けています。

解剖の種類

解剖には、大きく分けて次のような種類があります。
1.人体の構造をしらべるための解剖(正常解剖)
2.死後、すぐ病変をしらべるための解剖(病理解剖)
3.変死体の死因をしらべるための解剖(法医解剖または司法・行政解剖)
献体に直接関係があるのは上記1.正常解剖で、医学・歯学教育の基礎といわれております。医学教育の最初にまず履修する「解剖学実習」がこれに当たります。亡くなった直後に病院で行う病理解剖とは違い、正常解剖は、医学・歯学系大学の解剖学教室で行われます。
良い医師・歯科医師を育てるためには、全身の構造を学ぶ「解剖学」の教育を充実させることが絶対に必要なことなのです。

歴史と現状

昭和51年(1976)度に第1期生が3年生となり解剖実習が開始されることに関連して、近畿大学医学部献体者供養塔建立が島五郎教授などの努力によって具体化し、同年4月27日大阪市四天王寺において、供養塔建立の開眼法要が行われた。昭和51年(1976)11月5日四天王寺において近畿大学教職員物故者法要と兼ねて慰霊祭が行われた。その後も、毎年11月初旬に四天王寺で慰霊祭が行われていたが、同寺は医学部から遠く、より多くの教職員・学生などの参加を望むため、医学部における解剖体慰霊祭を要望する声が高まってきた。谷村教授着任後、昭和54年(1979)8月解剖体委員会が設立され、正常解剖体蒐集の体制の確立、献体登録団体近畿大学白菊会の充実とともに、解剖体慰霊祭の立案がその任務とされた。昭和54年(1979)10月22日、第1回の近畿大学医学部解剖体慰霊祭が医学部大講堂で、特定の宗教にとらわれず、超宗教で厳粛にとり行われた。翌日には、正常解剖献体者の御遺骨を四天王寺の供養塔に納め冥福を祈った。
その後毎年5月中旬の土曜日に取り行っていたが、現在は11月初旬に行われる四天王寺の法要のみ実施している。
近畿大学白菊会は、設立にむけて、教職員の努力がなされ、昭和50年(1975)6月に最初の登録がなされた。その後、少しづつ登録者が増して、昭和52年(1977)度には最初の定願者が記録された。谷村教授赴任後に、前記の解剖体委員会が設立され、白菊会の発展に力を注ぐことになった。昭和55年(1980)6月には10頁からなる白菊会パンフレットが完成した。それには献体運動、慰霊祭、慰霊法要と納骨堂、献体登録の手続きなどの他に、「献体という行為は慈悲の極みであろうかと存じます」という四天王寺第101世管長出口常順師の談話が掲載されている。これらに伴ない献体登録者の数は増加し、解剖実習体の100%を占めるに至っている。

献体頂くには

篤志献体登録制度

篤志(とくし)とは志が厚く、社会事業や福祉などに熱心に協力されるかたのことを指します。

①登録にはご家族の同意が必要です。
肉親者とは、配偶者・親・子・兄弟姉妹で生存している人全部です。ご家族や身寄りのないかたは登録できません。献体が実行できるのは肉親者(ご遺族)でありますから、充分にお話し合いの上、皆さんの同意を得て下さい。
②登録申込(入会)方法
ご家族の同意を得られ、かつ近畿大学白菊会が設けている全ての条件を満たしていることが必要です。必ずご本人が直接白菊会までご連絡ください。申込書と同意書をお渡ししますので、必要事項をすべて記入捺印してご提出ください。
③会員証
近畿大学白菊会会員になると、会員証(大・小)が発行されます。会員証には会員番号、死亡時の連絡方法などが記載されていますので、大切に保管してください。会員証がお手元に届くまでは、まだ会員様ではないのでご注意ください。
会員証見本

※近畿大学白菊会における個人情報の内容と利用目的について

近畿大学白菊会会員ならびに同意者の個人情報の主な内容と利用目的は以下の通りです。またこれらの個人情報の管理や利用は「学校法人近畿大学個人情報保護規程」に基づき適切に取り扱います。

  1. 近畿大学白菊会が保有する主な個人情報
  2. ①会員本人
    氏名・性別・生年月日・本籍地・現住所・電話番号・家族構成・病歴
    ②同意書
    氏名・生年月日・会員との続柄・現住所・電話番号
  3. 主な利用目的
  4. ①慰霊法要の案内
    ②解剖体記録

献体の実行

会員が天寿を全うなさった場合には、近畿大学医学部内の白菊会(TEL:072-366-0221 内線2153、時間外の場合は交換手に白菊会担当とお告げ下さい。)へ電話でご連絡下さい。休日はもちろんのこと、勤務時間外でも結構です。その時、ご遺体のお引き渡しについて打合せをした上で、大学からお迎えに参ります。

死亡されてから遺骨返還まで

葬儀について

ご遺体をお迎えに上がるまでに、通夜・葬儀、またそれに準ずる儀式を行うことは全く問題ございません。
ご遺族のかたがたが納得行く形でお送りください。出棺時に大学がご用意させて頂いた専用車でお迎えに参ります。
なお、大学への搬送費用と火葬費用は近畿大学が負担致しますが、通夜・葬儀の費用は自費となります。

遺骨返還の時期と方法

会員が亡くなられ献体されたのち、ご遺骨をご返還するまで1年から3年を要します。
準備期間:解剖が可能になるまでの期間
献体されたご遺体は、直ちに教育に供することはできません。まず「固定」という準備期間が必要で、そのため約5ヶ月を要します。
その後、教育・研究のために解剖させて頂くわけでありますが、献体されたご遺体については、その都度、別々に解剖されるのではなく、一定期間(10月~12月)に行われる関係上、長期を要することをご理解頂きたく存じます。
解剖が終了しましたら大阪狭山市の火葬場におきまして丁寧に火葬し、ご遺骨はご遺族にお届け致します。
なお、ご遺骨のご返還につきましては、大学からご返還日時の打合せの連絡があります。

献体に感謝して


慰霊法要と納骨式

近畿大学では、年に一度大学をあげての盛大な慰霊法要を、四天王寺(大阪)において厳粛に行い、ご献体者を近畿大学への功労者として、そのご貢献への感謝の祈りをいつまでも続けております。またご遺骨はご希望により、当寺院の地下納骨堂にお納め申し上げ、その霊を丁重に永代供養致しております。
四天王寺はご承知の通り、聖徳太子建立の寺院で、わが国仏教の原点ともいわれ、また病人や貧しい人たちの救済をおこなった慈悲深い史寺であり、どの宗派にも関係なく安住が得られるものであります。

ご入会の条件

1.登録にはご家族の同意が必要です。

2.大阪府にお住まいの方を対象とします。

3.過去もしくは現在、感染症(B型・C型肝炎、HIV)にかかったことがある方、内臓疾患の摘出歴のある方、
  ドナー登録をされている方はお断りしております。


入会ご希望の方は近畿大学白菊会(TEL:072-366-0221 内線:2153)までお問い合わせ下さい。


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