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脳内出血という病気の病態と治療について

脳内出血とは

脳内出血という病気は脳の実質内に出血を起こした状態で外傷性と非外傷性があります。非外傷性脳内出血は一般に突発性といわれ、脳卒中発作の約10%を占めます。そして出血源の明らかな症候性と、出血源のわからない原発性脳内出血に分けられます。症候性は動脈瘤や脳動静脈奇形の破裂、血液疾患、出血性素因などでおこってきます。原発性脳内出血は高血圧性脳内出血に代表されます。ただし原因が全く不明なこともあります。ここでは高血圧性脳内出血について説明いたします。

高血圧性脳内出血について

脳の実質内の出血の約60%を占めるといわれており出血により頭蓋内圧亢進をきたし、さらに脳室内、くも膜下腔にも出血する重篤な疾患です。死亡率は全体で26%に達するといわれています。また生存者の70%は何らかの後遺障害を残します。原因としては高血圧に動脈硬化が加わったときに出血の危険性が非常に高くなるとされています。病理学的には脳血管に変性がおこり血管壊死や小動脈瘤ができて出血すると理解されています。脳は周りを頭蓋骨という固い殻で守られていますが、高血圧性脳内出血の場合にはそれが圧の逃げ場をなくすことになり、そのために正常な脳組織が圧迫され損傷されます。こうなると死亡率はさらに高率になります。高血圧性脳内出血はおもに大脳半球におこりますが、小脳や橋などにもおこります。症状は出血の生じた場所によりますが意識障害や片麻痺、失語症など様々です。

また、頭蓋内には脳脊髄液という液体が脳室とクモ膜下腔を常に満たしています。脳脊髄液は脳室内で作られ脳の中心部を通り最終的に脳の表面のクモ膜下腔で吸収されます。一般的には一日約500ml生産され、同量が吸収される仕組みになっています。しかし今回の出血により、脳脊髄液の流れがせき止められることにより、頭蓋骨の内に脳脊髄液が過剰に貯まる状態(水頭症と呼ばれます)を合併しています。この様な状態を放置しておきますと、脳室という脳脊髄液を貯める大きな部屋が拡大し、頭蓋内圧が高くなり、脳を内側から圧迫し脳の機能低下をもたらし、最後には脳に致命的な損傷を与えてしまいます。

治療法について

1)開頭により血腫を除去する方法
治療のまず第一の目的は救命です。血腫が大きく脳ヘルニアの状態であれば、まず脳内にある血腫を除去する必要があります。これにより脳への圧迫の根本原因を取り除きます。そうすることにより二次的に生じてくる脳浮腫を軽減できる可能性があります。そのためには開頭による頭蓋内血腫の除去が必要になります。これは頭蓋骨を広範囲に除去し脳の中の血腫を取り除く方法です。開頭以外の方法としては、内視鏡を使用した小開頭による血腫除去術があります。どちらの方法で行うかは血腫の部位、サイズおよび脳ヘルニアの状況などを総合的に判断して決定します。

2)CTを用いて定位的に血腫を取り除く方法
早急な減圧は必要ではないが、出血部位によっては機能回復が問題となってきます。小さな血腫の場合にはいずれの治療法でも最終的な機能の回復に差はありません。しかし、血腫の量が比較的多い場合には機能回復に差が出てくることがあります。そこで、CTを用いて定位的に血腫を取り除くことによって、血腫による脳への圧迫を早期に除去することで機能回復を早めることが可能です。また、高齢者や基礎疾患があるために全身麻酔がそれ自体危険な場合でも、比較的少ない侵襲で手術を行うことができます。

3)水頭症をきたした場合
急性水頭症により頭蓋内圧が高くなった場合に、緊急的に脳室にチューブを挿入し、体の外部に脳脊髄液を排出することにより一時的に水頭症を改善し頭蓋内圧をコントロールするものです(脳室ドレナージ)。この方法はチューブが体から直接出たままなので、永久にと言うことはなく、通常、状態が落ち着くまでの一時的な治療です。したがって、脳出血によって生じた症状はこの手術によって回復することはありません。

4)脳室内血腫の場合
脳室内血腫の予後は良くないと言われています。血腫により脳幹、視床下部などが障害をうけることが原因と考えられます。水頭症も合併することが多いため、脳室ドレナージを行い、血腫を排出させることとなります。また、血腫を積極的に除去するため内視鏡を用いて血腫を取り除く方法があります。

5)内科的に止血剤や抗浮腫剤を用いて行う方法
この場合の治療効果は薬に対する反応次第ですがあまり効果は期待できません。

手術の危険性について

1)脳内合併症
開頭による頭蓋内血腫の除去をおこなうためには、血腫に至るまでに直接傷害を受けていない脳を一部削除して血腫に到達しなければならないことがしばしばあります。また、手術中には脳浮腫の為に脳が広範囲に腫れてくるような事態が起こる可能性もあります、そのような場合には直接傷害を受けていない脳を一部切除することになる場合もありえます。そのために術前には存在しなかった神経症状が出現する可能性があります。次に予期せぬ出血が起こる可能性もあります。血腫を除去することによってとりあえず止血されていた血管から出血したり、他の血管から出血して止血ができない状態になり血腫が大きくなることもありえます。

2)手術後に起こりえること
まず最初に念をおしておかなければならないのは、この手術の目的があくまでも救命であるということです。開頭により血腫を取り除いても脳の腫れが強くそのために脳が圧迫され死亡することもあります。また、術後意識が回復せず、いわゆる植物人間になる可能性もあります。また意識の回復が見られても麻痺などのためそのまま寝たきりの状態になる可能性もあります。

3)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。開頭手術により脳、硬膜、皮下組織などが露出されてしまいます。我々は無菌手術を心がけていますが、手術の際微生物の侵入を100%ゼロにすることは現在の医学水準からは困難です。従って、術中、術後にわたりこうした微生物を死滅させる薬剤すなわち抗生物質を投与します。多くの患者さんではこうした治療により術後感染の問題は生じませんが、患者さんの抵抗力が弱かったり、抗生剤の効き目が悪かったりすると術後、細菌性髄膜炎、脳膿瘍、皮下膿瘍、硬膜外膿瘍などの感染性合併症を生じる可能性があります。また、意識障害の強い患者さんの場合、喀痰の排出が不十分で容易に肺炎などの肺合併症を起こしてそのことが命取りになる場合もあります。

4)麻酔、輸血、薬剤などによるショック、肝炎の感染の危険性
開頭手術のためには麻酔薬、抗生物質をはじめ様々な多くの薬剤を使用します。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応ショック(薬剤アレルギー)や予期せぬ副作用を生じることがあります。手術時、皮膚切開などからの出血をできるだけ少なくすることを心がけますが、出血量が多くなると輸血をする必要があります。輸血用の血液は病院で用意します。これらの血液はすべてB型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、エイズウィルス、梅毒の検査がすべて陰性のものです。しかし、これらの検査は100%完全ではなく稀に輸血によってこれらの感染症にかかることがあります。

5)糖尿病、高血圧、肺気腫、胃潰瘍、パーキンソン病、内分泌疾患、精神疾患など様々なこれまで顕在化していなかった疾患が手術を契機として発症することがあります。また、これまで既往疾患として持っておらる病気がより重くなることもあります。   

6)手術時間が長くなり同じ体位をとり続けると、手術台などの器具に接触している手足、体部、胸部などに褥創を生じることがあります。また、眼球部が圧迫を受けると失明することもあります。

7)開頭する際、頭蓋骨を一部切除する可能性もあり、手術後頭蓋骨が変形し美容上問題を生じることがあります。

8)その他予想外の合併症
我々は厳重な術中、術後管理にてこうした合併症の発生を防止するよう努力しますが、残念ながら予想できない事態が起こってこうした合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡したり、重い神経後遺症を生じる可能性もあります。

予期した手術計画に相違して、手術侵襲が拡大する可能性について

開頭術以外の方法で治療を行っている際に、頭蓋内出血を生じ出血が止まらないときなどの緊急に対処が必要な場合、止血するために開頭手術(頭の骨を大きく開ける手術)に変更することがあります。

我々の計画している治療法を拒否され別の治療法を選択されても、拒否したことにより不利益は被りません。また、いったん我々の予定している治療法に同意された後でもこれを拒否され別の治療法を選択されてもその理由で患者さんが不利益は被ることはありません。