インフォームドコンセント

脳血管造影という検査について

脳血管造影検査を受けられる患者さん、御家族の皆様へ

脳は、首の側方を指で押さえるとその脈を触れることのできる左右の総頚動脈と首の骨(頚椎)の中を貫く左右の椎骨動脈とによって心臓から血液の供給を受けています。脳血管造影検査は、これら頚動脈や椎骨動脈にカテーテルと呼ばれるビニールやテフロンでできた管を挿入し、造影剤を注入することによって頭部の血管のみを写し出す検査です。

脳腫瘍、頭蓋内出血などの脳血管の偏位をきたす病変、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、頚動脈海綿静脈洞瘻、脳血管の閉塞、狭窄、モヤモヤ病、血管攣縮などの脳血管自体の病変、脳腫瘍の中でも異常血管を伴う病変、その他の脳血管奇形、脳循環の異常など、数多くの脳神経外科に関連する疾患がこの検査の適応になります。

近年、MRIの発達に伴い、MRIを用いた血管造影(MRA)が登場し、脳ドックなどで利用されてきています。しかし、その画像の描出能力には限界があり、詳細な血管の状態を把握するには、現在のところ脳血管造影に優る検査法はありません。

一方、カテーテルや造影剤を直接体内に入れるため、CTやMRIなどの検査に比べ侵襲的な検査となります。また、頻度は少ないものの検査中や検査後に起こり得る合併症も皆無とは言えません。

そこで、脳血管造影検査の目的、方法、起こりうる合併症、検査を受けるにあたっての注意点について述べます。

(目的)病巣の検索、異常血管の有無および状態の把握、手術の適応の可否および範囲の決定、術後のフォロ-アップなど。

(方法)太ももの付け根(大腿動脈)や肘(上腕動脈)、手首(橈骨動脈)などからからカテ-テルを挿入し、レントゲン下に頚動脈や椎骨動脈を撮影する方法(セルジンガー法といいます)が一般的です。

○まず、検査室に入る前に造影剤の利尿効果による脱水の予防のために点滴をとります。水分摂取も検査の2時間前までなら構いません。

○病室から検査室へはストレッチャ-(搬送用ベッド)あるいは車椅子で移動します。検査室に入室するとまず検査台へ移り、心電図計と血圧計を装着します。次に、穿刺部位に消毒をします。消毒した場所以外は清潔な布で覆います。

○穿刺部位に局所麻酔をします。麻酔した皮膚に約5mmの切開を加え、シ-スと呼ばれるカテ-テルよりひとまわり太い管を挿入します。シ-スを入れることにより、カテ-テルの動きをスム-ズにし、操作性を向上させます。

○シ-スを鞘にする形でカテ-テルを通し、目的となる血管(頚動脈、椎骨動脈)までガイドワイヤ-を用いて、誘導していきます。

○カテ-テルが目的の血管に達するとレントゲンの撮影準備に入ります。固めの枕に変え、額をバンドで固定し、頭部の動きによる撮影時の画像の乱れを防ぎます。多少窮屈に思うかもしれませんが、できる限り頭を動かさないようにしてください。撮影する際は、そのタイミングを技師がマイクを使って話します。指示に従ってください。撮影中、頭の上でフィルムを巻取る音がしたり、注入された造影剤の刺激で頭の中や顔に熱感を感じることがありますが、一時的なもので心配はいりません。

○造影検査が終了するとカテ-テルとシ-スを抜き取ります。抜き取ると同時に止血するために担当医が穿刺部位を手で圧迫します。(10分〜15分) 
止血を確認後もさらに4時間は穿刺部位の圧迫が必要です。大腿動脈穿刺の場合は砂嚢(砂の袋)で圧迫し、上腕動脈穿刺や橈骨動脈穿刺の場合はガーゼや圧迫機材を用いて圧迫します。検査後4時間は穿刺部位を曲げたり、動かしたりすることは厳禁です。出血の原因となります。具体的には大腿動脈穿刺の場合は検査後4時間はベッド上安静が必要で、座ったり、穿刺側の足を曲げたりすることは厳禁です。また、上腕動脈穿刺や橈骨動脈穿刺の場合は検査後、歩行は可能ですが、肘や手首を曲げることは厳禁です。穿刺部位やその周辺に濡れた感じがするときはすみやかに医師や看護婦に知らせて下さい。

○ 検査中、検査後を問わず頭痛、胸痛、嘔気、めまい、手足のしびれや脱力感や冷感、呂律がまわりにくいなど何か身体に異変を感じた時は我慢することなく医師や看護婦に知らせて下さい。

○検査結果は、医師がお話しします。不明の点は主治医までご連絡ください。 

合併症について

X線装置の進歩、カテ-テル、造影剤など道具や材料の質の向上によって脳血管造影の安全性はかなり確立されてきており、以前は危険性が高いと思われていた患者さんにも比較的安全に造影検査が行われるようになってきています。しかし、前述の如く合併症の発生が皆無とは言えません。考えられる主な合併症としては 

1)脳梗塞
検査中、カテ-テルは動脈の内腔を進んでいきますが、そのとき動脈の壁をこすることにより壁に沈着しているコレステロ-ルや内皮が剥がれたり、血液の塊が脳の血管をつめる結果、脳梗塞になる可能性があります。一般的に脳梗塞による恒久的神経脱落症状の頻度は0.3%程度と言われていますが、高齢者、動脈硬化の強い患者さんはそうでない人に比べ危険性は高くなります。我々は、場合により検査前に薬剤によって血液が固まりにくくなるようにしていますが、それにもかかわらず梗塞をおこすと場所によっては意識障害や手足の麻痺など重篤な神経症状を残したり、最悪の場合は生命にかかわる可能性もあります。

2)出血
直接動脈を穿刺するため多少の出血は伴います。通常貧血を呈するほどの出血はなく、特別検査前に輸血を準備することもありません。また検査後、止血が不十分であったり、安静が保たれなかった時などに穿刺部周辺に皮下血腫を作ることがあります。

3)感染
生体は皮膚、粘膜などに被われ外からの微生物の侵入を防いでいます。動脈を穿刺することにより皮下組織が一部露出されます。我々は無菌的検査を心がけていますが検査時の微生物の侵入を100%ゼロにすることは現在の医学水準からは困難です。したがって感染が起こったと考えられた場合には、こうした微生物を殺す薬剤すなわち抗生物質を投与します。多くの患者さんでは、感染の問題は生じませんが、患者さんの抵抗力が弱かったり、抗生剤の効き目が悪かったりすると、皮下膿瘍、敗血症などの感染性合併症を生じる可能性があります。

4)コレステリン塞栓症
大動脈内に存在する粥状硬化巣がカテーテル操作や血液が固まりにくくなる薬剤の投与などにより、崩壊、流出し、粥腫内の微細なコレステロール結晶が全身臓器に塞栓を起こすことがあります。塞栓が起こった場所により症状は多彩ですが、腎機能障害や足の血流障害によるチアノーゼや壊死などが起こりえます。最悪の場合、全身臓器にコレステリン塞栓症がおこると多臓器不全となり、命に関わることもあります。

5)穿刺部末梢の循環障害、正中神経麻痺
穿刺部位は検査後も約4時間の圧迫が必要です。これにより穿刺部位より末梢の血流が悪くなり、循環障害が起こることがあります。また、上腕動脈穿刺の場合、上腕動脈のすぐ近傍を走行する正中神経が穿刺の際などに損傷される危険性があります。正中神経麻痺がおこると、手指の運動障害、痺れなどが起こります。

6)薬剤などによるショック
人によっては造影剤、抗生物質、麻酔剤などの薬剤に対し過敏な反応を示し(薬剤アレルギーによるショック)、予想し得ない副作用を生じることがあります。

7)その他予想外の合併症
我々は検査中、検査後のこうした合併症の発生の防止に努め、もしそれらの徴候が認められれば検査の中止を含め適切な処置が施せる様に準備を万全にして検査に臨んでいますが、残念ながら予想のできない事態が起こってこうした合併症を生じることがあります。これらの合併症を生じ、最悪の場合は死亡したり、重い神経後遺症を残す可能性があります。


病院長               殿

検査同意書

このたび、脳血管造影の検査を受けるに当たり、担当の医師より以下の項目につきまして十分に説明を受けました。

   1.検査の目的
   2.検査の方法
   3.検査を受けることによる、予期される臨床上の利益および
     危険性または不便
   4.当該疾患に対する他の検査法の有無およびそれらの方法に
     関して予測される重要な利益および危険性
   5.今回の検査の受諾は、本人または家族の自由意志によるもの
     であり、受諾を随時拒否・撤回できること。
     また、これによって不利な扱いを受けないこと。

上記の内容を理解し、承知した上で、自ら検査を受けることに同意いたします。また、同意説明文および同意書の控えも確かに受領しました。

(同意年月日:平成  年  月  日)

               本人 署名:                     

              代諾者署名:                     

(説明年月日:平成  年  月  日)

説明医師: 所属  脳神経外科  氏名