ABOUT US教室について

教室理念

以下の5点を主な教育理念としています。

  1. 大きな夢のある子どもたちの未来を脅かすことのない診療を意識すること。
  2. 教室のすべての医局員がそれぞれの個性を生かす、働きがいのある教室であること。
  3. 南大阪の基幹病院として、地域医療に貢献すること。
  4. 教育機関であることに常に誇りをもち行動する教室であること。
  5. 教室での得られた診療・研究結果を社会に還元すること。

教授メッセージ

私が生まれた1974年、約210万人であった出生数は、現在90万人をきりました。少子高齢化社会が加速する中、厚労省が打ち出す基本方針の中に「健康寿命の延伸」「人生100年時代」という言葉を目にします。人生100年時代構想では、「子どもたちの誰もが経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる社会」を目指し、主に経済社会に重点を置いた政策がすすめられています。当然、経済的援助があって医療は支えられていますが、子どもたちが心身ともに健全であることが大切であり、それを支えるのは私たち小児科医です。

現在、低出生体重児(2500g未満)の出生数は全出生数の約10%を占めています。早産・低出生体重児では、将来、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病をかかえるリスクが高いことや、精神発達障害、注意欠陥多動なども発症しやすいことが知られています。

また、周産期・小児期医療の進歩により多くの子どもたちが救命されてきた一方で、生まれつきの病気やその合併症を抱えながら思春期・成人期を迎える患者さんが確実に増加しています。さらに、私の専門とする腎疾患領域では、早産・低出生体重で生まれた子どもたちが学童期以後に腎障害を認めることや、思春期以降には自然に治るとされていたネフローゼ症候群がなかなか治らず大人になっている患者さんも経験しています。

これらから言えることは、「健康寿命の延伸」「人生100年時代」の実現には、大人からスタートするのではすでに遅く、全ての子どもたちが自分の夢に向かって進むためには、胎児期や出生後の成育環境にもより注意を向け、長期的な観察が必要であるということです。

私たち近畿大学医学部小児科は特定機能病院として高度な医療を提供するとともに、早産児から思春期のお子さままで対応し、重症度や特殊な疾患に偏ることのない医療の提供にも心がけています。前任である竹村 司先生の教えは「子どもたちとその家族の悩みを共有し、現在、将来ともに副作用に悩むことのない安全な医療を提供すること」でした。その教えに基づき、小児疾患の本質を個々に見極め、患者さんごとに最良の治療方針を提供しています。また、それらを集約することにより臨床研究を行いエビデンスレベルの向上を目指しています。また、奈良県生駒市の近畿大学奈良病院、大阪南医療センター、市立貝塚病院、富田林病院、市立藤井寺市民病院などと密に連携し、それぞれの特徴を生かした医療環境を展開しています。これらの医療機関では、循環器専門医、腎臓専門医、アレルギー専門医が各分野における専門外来を行い、専門医のいない医療機関においても、特殊な疾患をもつお子さまの継続的な診療に努めています。大学病院だけでなく、これらの施設や近隣小児科クリニックでの臨床教育も重視しています。

私たちの医療は患者さんから成り立っています。そして、患者さんが教育者です。小児科診療の特徴は、患者さんの年齢層が幅広いことだけではなく、対応する症状や疾患が非常に幅広い分野にわたることです。時に敬遠されるこの特徴が小児科診療の醍醐味であり、日々の診療や研究を行う上での糧となります。子どもの数は確かに減っています。しかし、社会がその子どもたちをマイノリティ(少数派)にしていい理由はどこにもありません。また、その子どもたちを支える小児科医も同じくマイノリティでなく、私たちには大切な子どもたちを守るという非常に重要な使命があります。これからも子どもたちから学び、その成果を子どもたちや社会にきちんと返していきたいと思います。

杉本 圭相
SUGIMOTO Keisuke
主任教授