研究室紹介
薬理学を通じて、生命と疾患を理解する
当教室では、基礎研究を通じて生命現象と疾患の成り立ちを理解し、より優れた治療法・診断法の開発へと結びつける薬理学を実現したいと考えています。研究と教育を通じて、教室員それぞれが独自の視点と強みを活かしながら、未来の医療に貢献する成果を生み出すことを目標としています。
膜輸送体から見えてきた、がん治療の可能性
私自身はこれまで、アミノ酸トランスポーターLAT1(SLC7A5)をはじめとする膜輸送体(トランスポーター)に着目し、がん細胞や病変組織における栄養獲得、代謝制御、細胞増殖、微小環境形成との関係を研究してきました。LAT1は多くのがんで高発現し、がん細胞の増殖に必要な大型中性アミノ酸の取り込みを担うことから、診断・治療の新たな標的として注目されています。抗がん薬として開発が進むLAT1阻害薬について、その抗腫瘍効果がどのように生じるのかを、アミノ酸取り込み、タンパク質合成、細胞周期、エネルギー代謝、腫瘍血管新生などの観点から詳細に解析してきました。また、LAT1の構造解析研究にも携わり、基質認識や阻害薬結合の仕組みを分子レベルで理解し、より精密な創薬へとつなげる研究にも取り組んできました。
膜輸送体研究で、治療・診断の可能性を拓く
膜輸送体は、栄養素、イオン、代謝物、薬物などの生体内分布を制御する重要な分子群であり、がん、代謝性疾患、神経変性疾患、炎症性疾患など、さまざまな病態にも多面的に関与しています。そのため、膜輸送体は「物質を運ぶ分子装置」としてだけでなく、シグナルや代謝の制御をつかさどる、病態への有効な介入点としても捉えることができます。当教室では今後、まだ機能が十分に明らかにされていないさまざまな膜輸送体について、基質輸送の実体を解明するとともに、それらが細胞機能や組織恒常性の維持、さらには疾患の発症・進展にどのように関与するのかを明らかにしていきます。そして、膜輸送体を標的とした新しい治療法・診断法の開発につながる研究を推進します。