治療について

対象疾患(カッコ内は主な担当科)

気管支喘息
呼吸器・アレルギー内科
  1. 喘息とは
    気管支喘息は,空気の通り道である気道が狭くなることによって, “ゼーゼー”,“ヒューヒュー”と鳴ったり,息が苦しくなったり,咳を繰り返す疾患です。これは、気道に慢性的な炎症が存在するために、気道の反応性の亢進(ちょっとした刺激で気道の反応が起こる)と可逆性の気道閉塞が認められるためにこのような症状が起こります。これらの症状は夜間から早朝に起こりやすく、軽い症状のものから,ひどくなると死ぬほど苦しい症状のものまであります。軽い症状なら自然に症状がなくなってしまうこともありますが、症状が軽くても何度も繰り返していると重症化して気道の状態が完全には元に戻らなくなります。喘息の気道の炎症はアレルギーによるものが基本であり、これには抗原を感作する樹状細胞や免疫をつかさどるTリンパ球、Bリンパ球、そして組織障害性の強い肥満細胞、好酸球などの働きが関係しています。このアレルギーによる気道の炎症は小児喘息のほとんどの人でみられますが、成人ではアレルギー以外にも感染や喫煙による気道の上皮の障害などが原因となって発症する人が増えてきます。
  2. 喘息と遺伝
    アレルギーによる気道炎症が基本となっている喘息は、ある程度の確率で遺伝すると言われています。両親にアレルギー性の喘息があると,50〜80%の子どもに喘息が遺伝し,お父さんかお母さんのどちらかに喘息がある場合は30%,両親ともなければ10%程度であるといわれています。ただし、喘息の素因が子供に伝わったとしてもすべての人が発症する(喘息の症状が出る)わけではありません。この遺伝的素因と住環境,大気汚染,ストレス,食生活などの環境要因の両方が重なることで発症すると言われています。
  3. 喘息は治るかとの疑問
    小児喘息は思春期になると治るとよくいわれています。事実,60%程度の人は思春期までにほぼ無症状になりますが,一度治ったと思った子供の約半数は成人になって再発します。つまり、小児喘息のあった人は、元々無症状にならない40%の人と一度治ったと思っても大人になって再発する30~40%を合わせて70-80%の人が成人喘息として喘息と付き合わなければなりません。これに対し,成人になって喘息を発症したいわゆる成人喘息では,その90%が慢性的に経過して治癒することはありません。したがって、喘息は,一生つき合っていく必要のある「慢性の病気」であることを自覚して,治療を継続することが大切です。
  4. 喘息の治療
    喘息は気道の炎症があるために気道反応が亢進して、気道が閉塞する病気ですので、治療の基本は炎症を抑えることです。この炎症を抑えるために最も効果の高いものが,「吸入ステロイド薬」になります。吸入ステロイド薬は重症では高用量が必要ですが、症状が出なくなると減量していくことになります。また、ロイコトリエン受容体拮抗薬もアレルギー性の炎症を抑制することに有用です。そして、気道が狭くなっていればβ2(ベーターツー)刺激薬などの吸入薬を併用することが、多くの患者さんの基本的な治療薬となります。これらの薬を使っても症状が治まらない重症の喘息では、近年、アレルギーの抗体であるIgEや炎症を起こすIL-4やIL-5といった物質を抑制する生物学的製剤が使用されます。また、これらが使用できない患者さんや、使用しても効果のない患者さんでは、気管支鏡という内視鏡を気道に挿入して、気道に熱を伝えることで気道が閉塞しにくいようにする気管支熱形成術という治療法もあります。この気管支熱形成術は当院では国内で最も早く導入して良好な実績を残しています。
  5. 喘息の検査
    喘息は生涯続く慢性の疾患ですので、正確な診断が必要です。また、病型や重症度も正しく判断して、病状に応じた適切な治療を行うためにも検査は必要です。
    1. スパイロメトリー:気道の閉塞の程度を判定するのに有用です。
    2. 気道可逆性検査:気管支拡張薬を吸入して気道の閉塞が解除されるかどうかを見ることによって喘息の診断や気道の状態を見るのに有用です。
    3. 気道過敏性試験:気管支収縮する作用のある薬を吸入して、気道の閉塞が認められれば喘息の診断が確定します。
    4. 呼気一酸化窒素濃度測定:気道のアレルギー性炎症の強さを判定するのに有用です。
    5. 血液検査:ダニやカビ、花粉などに対する抗体があるかどうか特異的IgEを測定することで、アレルギー型であるかどうかの病型の判断や生活環境の整備に役に立ちます。
    6. 高分解能CT:肺に気腫性病変(肺気腫)や気管支拡張症などがあるかどうか判定します。
    以上、当院では喘息に関するあらゆる検査、治療が可能ですので、喘息でお困りの際は受診いただきますようにお待ちしています。

参考URL:https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/index.html

歯科金属アレルギー
歯科口腔外科
  1. 歯科金属アレルギーとは
    金属アレルギーと聞くと、ネックレスやピアスなどで皮膚にかぶれが出るという症状を想像されることが多いかと思います。口腔内の歯科治療で使われている金属が原因となって、顔や全身にアレルギー症状を発症することもしばしば見られ、これを歯科金属アレルギーといいます。歯科金属アレルギーの症状は、口腔粘膜炎や舌炎、口唇炎など口腔内の症状だけでなく、手や足、全身にも炎症が生じることもあり、「なかなか治らない全身の蕁麻疹が歯科金属アレルギーとわかり、その金属を除去したら症状が治った。」というケースもあります。
  2. 歯科金属アレルギーの原因
    口腔内の歯科金属は常に唾液にさらされ、これがイオンとなり溶け出し、抗原となってⅣ型アレルギーの形で、反応が出現するとされています。
    現在の歯科治療で使用されている金属は、金銀パラジウム合金が主流であり、その主成分としては、金、銀、パラジウム、銅等となっています。様々な調査においてもやはり、金とパラジウムによるアレルギー反応が多いことが報告されています。また、ニッケル、クロムもアレルギー陽性率の高い金属元素とされており、これは取り外しの義歯や歯科矯正用の装置に含まれていることが多いです。
  3. 検査・診断
    口腔内にどのような金属が使用されているかを口腔内チェックやレントゲンなどにて検査します。また、歯科金属アレルギー自体の検査には、金属アレルギーのパッチテストを行うことが一般的です。試薬のついたパッチシールを体に貼り、皮膚の変化をチェックし、所見をもとに、アレルギーがあるかどうかの判断をします。この検査は、当院では皮膚科に依頼し実施しています。
  4. 治療
    歯科金属アレルギー反応の原因となっている金属が特定できれば、まずは口腔内から原因物質を取り除くことから始めます。治療では、仮の歯などで、口腔内や全身に出ていた症状が改善するかを観察していきます。治癒するまでに数カ月以上と、とても時間がかかることも少なくないことから、定期的な経過観察が必要となります。症状の改善が確認できれば、アレルギーを示さない安全な材料(レジン・チタン・セラミックス・ジルコニア等)を慎重に選んだ上で修復します。場合によっては、自費治療となることもあります。

参考URL:https://www.jda.or.jp/park/relation/metalallergy.html

アトピー性皮膚炎
皮膚科
  • アトピー性皮膚炎は,増悪と軽快を繰り返すそう痒のある湿疹を主病変とする疾患です。患者さんは他のアレルギー疾患にもかかることがあります。
    日本人の罹患率は,小児期が13~10%, 20歳代が10.2%,30歳代が8.3%,40歳代が4.1%,50 + 60歳代が2.5%です。近畿大学は東京大学などと共同研究として報告しました。
    乳児期のアトピー性皮膚炎患者さんは,顔面,頭部にそう痒をともなう湿疹反応が生じやすくなります。幼児期や学童期になると,頚部,肘窩,膝窩などにそう痒をともなう湿疹反応が生じてきます。思春期や成人期では,顔面,頚部,胸部,背部など上半身に病変部が生じやすくなります。いずれの時期でも,病変部が全身に拡大して重症化することがあります。

    近畿大学病院では患者さんごとの臨床症状や生活習慣を確認し,患者さんの希望を尊重して診療しています。
    初診時,皮膚の症状やかゆみにともなう精神的ストレスの評価や,血液検査などを実施します。皮膚症状やストレスの度合い,症状の経過などから重症度を判断します。接触皮膚炎や悪性リンパ腫,疥癬などアトピー性皮膚炎に似た皮膚疾患があります。パッチテストや皮膚生検,検鏡などいくつかの検査を追加し,正しい診断を心がけています。
    診療は患者さんごとの悪化因子の検索と対策を基本としています。また,スキンケア,アレルギー反応や痒みの制御を行います。炎症部位のアレルギー反応を抑える目的でステロイド外用剤や免疫抑制作用のある外用剤を用います。皮膚の乾燥を防ぐ目的で全身にワセリンなどの保湿剤をさらに外用します。抗ヒスタミン剤内服はアレルギー反応と痒みを抑制します。
    重症患者さんには教育プログラムにもとづく入院診療を実施し,生活習慣の改善とスキンケアの方法を指導しています。入院療法は悪化因子に対し,強力な対策をたてることができます。医師の指導のもとで適切なスキンケアを実践していただきます。多くの患者さんはアトピー性皮膚炎が良くなることを実感してもらえます。

    重症患者さんには,外来診療で注射薬のデュピクセントによる新規治療法も適用となることがあります。厚生労働省から最適使用推進ガイドラインが提示され,施設要件と患者要件が示されています。近畿大学病院アレルギーセンターは施設要件に準拠しています。重症患者さんには,デュピクセントの期待される効果と有効率,生じうる副反応などを説明しています。希望され,患者要件を満たす場合にデュピクセントによる治療を開始しています。これまで難治であった患者さんも,デュピクセントの登場により外来診療で寛解した状態を目指せます。
    近畿大学病院アレルギーセンターでは,喘息などさまざまなアレルギー疾患を併発している患者さんに,それぞれの分野に精通した医師が連携して統合的に診療しています。また,地域の先生とも連携して診療しています。受診を希望される患者さんは地域の先生からアレルギーセンターへご紹介いただくようお願い致します。症状が落ち着き,患者さんが希望されましたら,地域の先生に紹介させていただいています。
    気になることがございましたら,近畿大学病院アレルギーセンターまでお問合せください。

参考URL:https://allergyportal.jp/knowledge/atopic-dermatitis/

小児食物アレルギー
小児科
  • 「小児食物アレルギー」
    食物アレルギーはこどもに多く、有症率は幼稚園・保育園で約10%、小学校で約5%と報告されています。食物アレルギーとは、原因食品を食べて身体に不利益な症状が生じる病気で、その症状は皮膚のかゆみや腫れ、咳やゼーゼー、嘔吐や下痢など多岐にわたります。これらの症状が同時に出て急速に進行する状態をアナフィラキシーと言い、時に生命の危機に関わる状態になります。
    食物アレルギーの検査は多くの場合、はじめに血液検査(特異的IgE抗体)が行われますが、これのみで診断に至らない場合が多いことに注意を要します。食物アレルギーの最も確実な診断方法は、実際に原因食品を摂取して、アレルギー症状誘発の有無を確認する食物経口負荷試験(負荷試験)です。負荷試験でアレルギー症状が誘発されなければ、結果は陰性と判断されます。すると、その食品の一部または全てを摂取することができるようになります。

    実は食物アレルギーは他のアレルギー疾患と違い、疾患そのものを治癒させる治療薬はありません。対応の基本は、原因食品の除去とエピペンをはじめとするアレルギー症状誘発時の治療薬を備え、誘発症状時の対策を講じることです。負荷試験は検査ですが、結果が陰性であった場合、それまで食べられなかった食品を少なくとも一部は食べられるようになり、治療と同様の効果を得る場合もあります。近年では、食べられる範囲を食べることが食物アレルギーの予防や治療に繋がることもわかってきました。
    近畿大学病院小児科では、1年に約400 件の負荷試験を実施しています。また、食物アレルギーを持つこども達が安全に園・学校生活を過ごせるために、園・学校に出向きアレルギー講習会を随時開催しています。

参考URL:https://allergyportal.jp/knowledge/

アレルギー性結膜炎
眼科
  • 【症 状】
    アレルギー性結膜炎とはI型アレルギー反応によって引き起こされる、結膜の増殖性変化を伴わない疾患と定義されています。結膜への抗原侵入により肥満細胞からの化学伝達物質(ヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエンなど)が遊離することによって、毛細血管拡張、血管透過性亢進などを引き起こし、結膜炎症状が出現します。発現時期から季節性アレルギー性結膜炎と通年性アレルギー性結膜炎に分類され、季節性は花粉が主であるのに対し、通年性はハウスダストやダニなど常在性のものが原因となっていることが多いです。眼症状としては、かゆみが最も代表的なもので、その他、流涙、眼脂、異物感、眼瞼腫脹などがあげられます。

  • 【検 査】
    特異的な検査法はなく、診断は臨床的に行われます。眼局所で起こっているアレルギー性反応を証明する方法としては、結膜分泌物中に好酸球というI型アレルギーのときにでてくる炎症細胞を見つける方法が確実です。また、血液検査や皮膚テストで、アレルゲンを調べることも大切です。

  • 【治 療】
    治療にはアレルギー反応をおさえる抗アレルギー点眼薬を使います。抗アレルギー点眼薬は、I型アレルギー反応をおさえる点眼薬のことで大きく2種に分類されます。一つ目は、肥満細胞の中にあるケミカルメディエーターを抑えるケミカルメディエーター遊離抑制薬で、二つ目はアレルギー症状を起こすヒスタミンが、血管や神経にある受容体に結合しないようにするヒスタミンH1受容体拮抗薬です。抗アレルギー点眼薬はほとんど副作用がなく、安全に使うことのできる薬ですが、花粉の飛ぶ量が多いときや目の具合によっては、症状が治まらないこともあり、その場合にはステロイド点眼を追加します。ただし、ステロイド点眼には副作用として眼圧が高くなる場合があるので、眼圧の定期チェックが必要です。また、抗原回避を目的として、花粉に接触しないように枠に工夫された防塵眼鏡を使用したり、外出後に人工涙液などによる洗眼をしたりすることも有効です。

参考URL:https://allergyportal.jp/knowledge/allergic-conjunctivitis/

アレルギー性鼻炎
耳鼻咽喉・頭頸部外科

アレルギー性鼻炎は、くしゃみ・水様性鼻汁・鼻閉を主な症状とするアレルギー疾患です。季節性アレルギー性鼻炎 (スギやヒノキなど、飛散期のみに症状が出る)と通年性アレルギー性鼻炎(ハウスダストやダニなど1年中抗原のあるもの)に分けられます。
検査は鼻鏡検査・鼻汁中好酸球検査・血液検査・誘発テストなどがありますが、主に行われるのは鼻鏡検査・血液検査です。鼻鏡検査では実際に鼻粘膜の色調や腫脹の程度により、評価します。血液検査ではどのような抗原でアレルギー反応が起こっているかを調べることが可能です。
治療は①抗原回避・除去、②薬物療法、③手術療法、④免疫療法などがあります。


  • ①抗原回避・除去
    スギやヒノキなどに対してはマスク・眼鏡などで抗原からの暴露を避けることが重要になります。ダニやハウスダストに対してはこまめな室内の清掃や除湿を行うことが肝要となります。
  • ②薬物療法
    薬物療法は症状に応じて、様々な内服薬や点鼻薬を併用して治療を行います。眠気などの副作用が強く出る薬剤もあり、運転などに制約が出てくる場合もありますが、そのような副作用を軽減させた薬剤もあります。
  • ③手術療法
    鼻中隔湾曲症や肥厚性鼻炎などの鼻腔形態異常が強く、鼻閉症状がある場合には、鼻中隔矯正術や下鼻甲介手術を行います。鼻汁分泌を支配している後鼻神経を切断する手術も適応となる場合があります。
  • ④免疫療法
    抗原が判明している場合にその抗原を少しずつ投与することで症状の軽快を図り、アレルギーを抑える治療です。これまでは主に皮下注射で行っておりましたが、最近は特にスギとダニでは舌下投与で治療を行うことができます。
    また、重症のアレルギー性鼻炎の人にはIgE抗体に対する治療なども最近適応となりました。2週または4週毎に注射を行います。

参考URL:http://www.jiaio.umin.jp/common/pdf/guide_allergy2021.pdf

アレルギー複合疾患を有する症例、および難治性アレルギー性疾患についてはアレルギーセンターで合同症例検討を行い、精査、加療を行います。

検査

気管支喘息 各種アレルゲン検査、呼吸機能検査、精密肺機能検査、気道過敏性テスト、呼気NOの測定(気道のアレルギー性の炎症の評価)、呼吸抵抗測定:IOS(Impulse Oscillometry System)、運動誘発検査、高分解能CT検査(喘息に類似した病気との鑑別に有用)、FACSスキャン(リンパ球の種類を詳しく調べる検査)、ACTH負荷副腎皮質予備能検査
食物アレルギー 食物負荷試験、皮膚テスト
アトピー性皮膚炎 各種皮膚テスト(皮内テスト、プリックテスト、光テスト、パッチテスト、誘発テスト)、皮膚生検
アレルギー性鼻炎
好酸球性副鼻腔炎
鼻汁中好酸球測定、血清中抗原特異的IgE濃度測定、鼻茸組織内好酸球数測定、副鼻腔CT
アレルギー性結膜炎 細隙灯顕微鏡検査
歯科金属アレルギー 歯科パノラマレントゲン、被疑金属除去

病気の理解を深め、治療効果を高めるための充実した患者教育プログラム

アレルギー疾患の知識を深めるための市民公開講座(年1回 2021年度実績)

研究・教育・啓発その他

アレルギー疾患の予防・予知治療に関する調査・研究
アレルギー性疾患の病態解析と臨床研究
アトピー性疾患・アレルギー性疾患の専門医療スタッフの教育、育成(医療従事者向け講習会年1回 2021年度実績)

アレルギー疾患ポータルサイト(外部リンク)

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