RESEARCH研究

研究内容

当教室ではメタボリック症候群に関連した疾患に関して、肝臓と小腸の脂質胆汁酸代謝の観点から以下の研究を展開しています。

1.酸化ストレス防御遺伝子を調節する転写因子Nrf2を標的とした非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症機構の解明と治療応用

肝におけるメタボリック症候群の表現型としてNASHという疾患概念が提唱され、NASHの病態の進展と酸化ストレスの関連性が指摘されています。私たちは酸化ストレスに対して抗酸化作用を有する酵素群による応答システムを制御している転写因子Nrf2に着目して、Nrf2とNASH進展との関連性およびNrf2を標的としたNASHへの治療応用を試みています。

2.脂質代謝と酸化ストレス制御間のクロストーク機構に及ぼす食餌中脂質組成の役割

Nrf2系による酸化ストレス制御と脂質代謝のクロストークについて検討しています。食餌中脂質の質的差異は、肝臓では脂肪酸分解やコレステロールの排泄や異化にNrf2系が介在していることが明らかになりました。小腸ではコレステロール吸収量の変化はLXRαの標的遺伝子を制御しており、Nrf2はLXRαを介した脂質代謝制御に関与していることが解明されています。

3.胎生期から成長期の栄養環境が脂質吸収に及ぼす影響

近年、胎児期に曝露された栄養環境がエピジェネティクス制御を介して成人期に発症する肥満やメタボリック症候群に関与するのではないかと考えられています。母親世代の脂肪摂取の違いが仔マウスの脂質代謝にいかなる後成的影響を引き起こすか解明するために研究を行っています。

4.食餌中の油脂の違いがTICEに及ぼす影響

小腸はコレステロールを吸収する臓器であるが、近年の研究によれば小腸には血中から直接小腸管腔にコレステロールを排泄している経路(TICE; trans-intestinal cholesterol excretion) の存在が明らかとなっています。私たちは食餌成分がこの経路をコントロールしている可能性について、摂取脂質の量や組成の違う食餌を調整してTICEに如何なる影響を及ぼすか検討しています。

5.胆汁鬱滞による脂質代謝異常に対するTICEの役割

私たちは総胆管結紮モデルを用いて、胆汁鬱滞のTICEへの影響と小腸上皮細胞におけるトランスポーターの変動を検討しています。