RESEARCH研究

研究内容

血液グループ

血液グループでは、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血器悪性腫瘍を中心に、その病態形成や進展にかかわる分子機構の解明、さらには新規治療薬の開発を目標に、現在以下のような研究を行っています。

<単一細胞遺伝子発現プロファイルを用いた腫瘍幹細胞の同定とその特性解析>

正常組織と同様に、急性白血病などの造血器腫瘍においても“腫瘍幹細胞”と呼ばれる幹細胞が存在し、その腫瘍組織の維持だけでなく、治療への抵抗性や再発に強く関連していることが明らかにされています。幹細胞以外の腫瘍細胞は限られた分裂能しかなく、いずれ細胞死を起こしていくことから、腫瘍を治癒させるには腫瘍幹細胞のみを死滅させれば十分であるとも考えられます。しかしながら、正常な造血幹細胞と腫瘍幹細胞それぞれの幹細胞としての能力(自己複製能や多分化能)における分子機構の違いや、これらを識別可能な表面マーカーについては未だ不明な点が多く残されています。
私たちは、腫瘍幹細胞と正常な細胞の遺伝子発現プロファイルを単一細胞レベルで比較することにより、腫瘍幹細胞に特異的な表面抗原や細胞内の機能分子(細胞内シグナル伝達分子、転写因子、細胞周期にかかわる分子など)を同定することを試みています。さらに、それらを標的とした新たな分子標的薬を開発したいと考えています。

膠原病グループ

膠原病グループでは、(1)全身性エリテマトーデス(SLE)におけるループス腎炎、(2)強皮症などの膠原病性肺高血圧症の早期発見と治療法の確立、ならびに(3)関節リウマチに対する生物学的製剤や免疫抑制剤を用いた適正治療の確立をテーマとして以下のような基礎的ならびに臨床的研究を行っています。

<ループス腎炎の病態と治療法の研究>

SLEでは抗DNA抗体などの種々の自己抗体が原因となって、あらゆる臓器や組織に炎症が引き起こされる結果、特に腎臓では蛋白尿や血尿の出現、腎機能の低下が起こります。私達はこの現象に関わるリンパ球の異常、抗DNA抗体の特殊性、炎症を持続させるメカニズムの研究を行い、これらの研究成果に基づいた治療法の開発を行っています。ステロイドホルモンや種々の免疫抑制剤などの既存の治療薬とは異なる薬剤として、HMG-CoA還元酵素阻害薬、アンギオテンシン変換酵素抑制剤(ACEI/ARB)と並んで、ビタミンAの類縁化合物であるレチノイン酸を用いたループス腎炎の治療法を開発し、一部で臨床治験を開始しています。