ABOUT US教室について

教室理念

私共薬理学教室は、医学部学生への基礎医学教育と、社会貢献を目指して創薬研究を行っています。薬理学というのは基礎医学から臨床医学への架け橋となる学問です。学生にはこれまでの基礎医学の知識をもとに、病態生理と薬の作用機序を教育し、研究では医学部の特色を生かした、未知の病態生理の解析による原因因子の特定を行っています。これまでに他施設との共同研究の結果、実用化に向けた薬開発と特許取得を達成してきました。現在注目しているのは、ホメオスタシスの担い手たるメディエーターとそれに調節される好中球・マクロファージが中心になり、関与する傷害、修復・再生の機序です。この調節機序の基礎的な知見が得られたところで、血管新生や内在性組織幹細胞による臓器再生ついての研究を行っています。さらには、がん幹細胞に対する抑制効果についても研究を開始しています。生体に備わるホメオスタシスを活性化する治療法の開発が重要と考えています。

教授メッセージ

私たち薬理学教室では、近年、疾患病態形成に関与する炎症反応を抑制したり、障害を受けた臓器を再生・修復するための薬創りに、国内外の研究室とともに挑戦してきました。その結果、ホメオスタシスの活性化こそが安全かつ経済的な治療法となり、世界的に推奨される予防医学にも大きく貢献するものと考えるようになりました。ですから我々は、ホメオスタシスの担い手としての好中球・マクロファージによる血管障害や再生効果を促進あるいは抑制調節するメディエーターの探索研究をしています。具体的には、最近注目されるようになった起炎症因子Damage-associated molecular patterns(DAMPs)の全身性炎症症候群に対する生理活性を検討して、その複雑な生体反応に新しいカッティングエッジを見出すことで抗体分子を用いた標的治療に取り組み、創薬研究へと展開したいと考えています。生体内には複雑なDAMPs-抗DAMPs系が存在するとの仮説のもとに、新規DAMP分子の同定にも取り組んでいます。
私の人生における臨床医時代は大変充実していましたが、普段の疑問を自分なりに解決したいと思ったことから、研究生活が始まっています。このころに、何気なく使われている知識が、多様な研究とその貴重な成果の上に成り立っていることを知りました。自分も臨床医学に貢献する研究をしようとして、20年ほど前に創薬を特に志向する環境に身を置きました。私たちに要求されることは、様々な知見から創薬に役立つ事柄をよりぬいて、それをもとに研究して、最後には安全でよく効く薬を開発することです。炎症病態の基礎解析から創薬に及ぶ研究を行う過程で新しい知識を得ることは、私たちにとって興奮に満ちたものです。国際的な論文や学会で発表するときには、様々な研究者との交流が生まれる瞬間を実感できます。若い意欲ある学生諸君、研究者の参加をお待ちしています。

高橋 英夫
TAKAHASHI Hideo
主任教授