池田光正准教授(日本脊椎脊髄病学会指導医)、石濱嘉紘医学部講師、家村駿輝助教、鳥海賢介助教の4人態勢で日々の診療業務を行っております。
脊椎グループでは、頸椎から腰椎、仙椎にわたる全ての脊椎における圧迫性病変、硬膜髄外腫瘍を対象として系統的な治療を行っています。
近年増加中の骨粗鬆症性に関連した病態は、低侵襲の椎体形成術から骨折椎体を取り除きインプラントを挿入する椎体置換術と多様な病態に対応しています。本治療の成功のカギを握るのは、基礎となる骨粗鬆症自体の診断(ステロイド、副甲状腺機能亢進,骨軟化症(VD不足を含む)及び治療が重要になります。当科では骨粗鬆症全般の診断、治療を行っています。
池田光正准教授は骨粗鬆症を研究テーマに学位取得、その後も臨床、研究を継続(論文、研究)し、治療に反映しています1.2.3)。青山医師は、さらに進めCTにて椎体骨構造学を解析し骨粗鬆化を評価し、手術加療に反映しています4)。
特に、当科では術中にCTをリアルタイムに撮影することが可能なハイブリッド手術室を有しています(写真)。ハイブリッド手術室は、術中に撮影したCT画像と連動したナビゲーションシステムを用いて手術を施行しています。透析による破壊性頚椎脊椎関節症や首下がり症、高度頚椎後弯を呈する脊髄症に対する脊柱変形を矯正する場合に高い成果を挙げています。特に、頚椎変形矯正、胸腰椎の後側弯変形には椎体にインプラント(椎弓根スクリュー)を刺入、ロッドを設置しインプラントによる矯正を行います。椎弓根スクリュー刺入は,通常レントゲン(透視)を用いた2方向で刺入を行いますが、当科では先に述べたナビゲーションにより適正に刺入、その場で迅速に刺入位置を確認できます。鳥海助教は、ナビゲーションによる上位頚椎の血管損傷を回避し、小さな頚椎に安全にスクリューを刺入する研究を報告しています5.6)。
【基本的治療方針】先に述べた手術治療は、まず外来での診察所見と主訴(患者の症状)を詳細に検討し、画像で症候を確認します。症例によってはブロック等で保存的加療を行います。画像診断だけで手術の是非を決定することは行いません。保存的治療に抵抗する症例に対し手術を行います。
上肢の痛みやしびれ感を愁訴とする頚椎症性神経根症、代表的疾患として頚椎椎間板ヘルニアが挙げられます。本疾患は投薬などの保存的治療で治る場合が多いため、まず十分な保存的治療を行います。しかし、頚椎症の脊髄に圧迫性病変を有する頚椎症性脊髄症では、四肢の運動障害(手指の細かい動きの障害)を呈している場合、歩行障害が強い症例、膀胱直腸障害を認める場合は早期の手術をお勧めしています。また上記の症状が軽度でも転倒により、頚髄が通過する脊柱かが狭窄している場合は、転倒した際にその衝撃で脊髄損傷をきたします。外傷性脊髄損傷にも積極的に治療介入をしております。
頸椎手術は、その圧迫の部位や程度によって前方手術か後方手術(まれに前後方同時手術)が選択されます。頸椎にズレや配列異常を伴っている場合は除圧術(脊髄の圧迫を取る手技)単独では成績が不良となることが分かっており、当科では積極的に脊椎インストゥルメンテーションを用いた脊椎再建術を行っています。頚椎椎弓根スクリューを用いた頸椎後方再建固定術は、2022年まで在籍していた我が国の頚椎椎弓根スクリュー固定のエキスパートの一人で宮本裕史の仕事を引き継ぎ、数多くの臨床経験を有しています。
胸椎部は肋骨が付着しているため、頸椎や腰椎と比べて安定しており、通常はぐらつきなどが生じにくい解剖学的特性があります。よってこの部位で問題が生じる場合は腫瘍、感染、靭帯骨化症などの重篤な疾患が多く、技術的困難さを伴います。当科では前・後方手術ともに対応可能であり、難易度の高い全脊椎摘出術や前・後方一期的同時手術なども積極的に行っています。骨粗鬆症性椎体骨折は,下位胸椎の第11,12胸椎に好発します。骨折後の偽関節には低侵襲の椎体形成術を行います。さらに骨折後の脊柱変形に対しては脊椎短縮術。椎体置換術ならび後方固定術を行います(写真)。
脊椎手術の中で最も頻度の高い部位となります。配列異常のないケースでは除圧術のみで対処し、単一高位の圧迫性病変に対しては内視鏡手術で対応します。配列異常を合併している場合はインストゥルメンテーションを用いた後側方固定術あるいは後方進入椎体間固定術を行います。近年、成人の脊柱変形が大きな問題となっております。腰がまがり起立保持、歩行困難となります。本病態に当科では各種矯正骨切り術など積極的に手術治療を行っています。
頚椎症性脊髄症椎弓形成術(後方からの除圧)
高度変形頚椎にナビゲーション支援のもと至適位置に頚椎椎弓根スクリューを刺入
骨折椎体内をバルーンで拡張し骨折椎体にセメント注入を行い翌日から離床へ
骨粗鬆症性椎体骨折後脊柱変形に対し短縮術および後方固定(左1. 2)
不安定性を伴う腰部脊柱管狭窄症に対する後方椎体間固定術(右1. 2)
骨折椎体に不安定性認める。椎体高に合わせたインプラントを挿入し後方から固定。
2023CSRS-euro 口演発表。左から鳥海、青山、池田
2023CSRS-euro鳥海、宮本、青山、池田(右端)敬称略
2023年日本脊椎脊髄病学会 青山、鳥海、池田、家村駿輝先生(PL病院)