西村俊司 (骨軟部腫瘍認定医)
橋本和彦 (骨軟部腫瘍認定医)
近畿大学整形外科腫瘍グループでは大阪南部、和歌山県北部の患者さんを中心に年間100例以上の骨軟部腫瘍の治療を行っております。
良性骨軟部腫瘍としては骨軟骨腫、内軟骨腫、骨嚢腫、脂肪腫、血管腫、神経鞘腫、腱鞘巨細胞腫などの疾患を中心に治療しております。
悪性骨腫瘍では骨肉腫、軟骨肉腫、Ewing肉腫など、悪性軟部腫瘍では未分化多型肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫などを中心に多岐にわたる組織型の治療を行っています。悪性骨軟部腫瘍の治療成績は、近年大幅に進歩しました。それに伴い当施設での患者様の予後や術後機能も、大幅に改善しています。
例えば、整形外科の原発性悪性骨腫瘍の代表である骨肉腫は、術前・術後化学療法の確立・普及により、1970年代には5年生存率は約10%であったが、最近では65-75%にまで到達しています。術前に腫瘍の縮小化を図ることで患肢温存率も90%超えまで上昇しました。当グループでは当院腫瘍内科と連携し、各組織型の悪性腫瘍に応じた化学療法レジメンを用いて術前後の補助化学療法を行っています。また、悪性軟部腫瘍を中心に術前後の放射線治療も行っております。巨大な悪性軟部腫瘍に対しては術前に放射線治療を行い、腫瘍の縮小化を図り、広範切除術(腫瘍および周囲正常組織を含めた切除)を行いやすくします。術後に放射線治療が必要な場合も同様です。このために当院放射線科と連携し、治療にあたっております。
当グループの特徴はこういった他科との密な連携関係にあるといえます。悪性腫瘍全体で最も多い疾患は転移性の悪性骨軟部腫瘍です。当院腫瘍内科との連携により、多数の転移性骨軟部腫瘍症例の治療を行っております。原発不明癌に対する生検術にはじまり、四肢骨の転移性骨腫瘍に対する髄内釘挿入術および腫瘍型人工関節置換術を行っております。また、骨修飾性薬剤を併用することで転移性骨腫瘍の増大を防ぎます。さらに必要に応じて放射線治療を追加します。このように他科と月1回の悪性腫瘍合同カンファレンスをはじめ随時連携をとり悪性骨軟部腫瘍の個々の患者さんにとって最善の治療を行っております。
以下に再建例を示します。
処理骨:大腿骨骨肉腫に対して液体窒素処理骨を用いた再建
大腿骨骨肉腫に対して腫瘍型人工関節を用いた再建
骨盤骨肉腫に対して腫瘍型人工関節を用いた再建
上腕骨骨肉腫に対してClavicula pro humero法を用いた再建
乳癌の両側大腿骨転移性骨腫瘍に対して髄内釘を用いた再建