RESEARCH研究

研究内容

脳白質病変の術後認知機能障害および脳虚血障害への関与についての基礎研究

脳白質病変(myelinated axons の障害が主体)は慢性脳低灌流が原因であり、神経細胞体障害を主とする灰白質病変とは異なり、両者の障害は独立に起こる可能性がある。また、脳白質障害は認知機能障害と密接に関連している。脳白質障害を主とする慢性脳低灌流ラットを用いて、全脳虚血における白質病変保護の重要性(Brain Res. 2009; 1279: 139-146)や術後認知機能障害のメカニズムについての研究を行っている(Stroke 2001;32:2920-5; Neurosci Lett 2004;354:26-9; J Anesth 2018; Jan 25. doi: 10.1007/s00540-018-2458-z)。

周術期の不整脈発生に関する臨床研究

麻酔関連薬剤は様々な心筋チャネル(特にIkr)や受容体に作用し、心筋伝導系に影響を与え、状況によっては不整脈を誘発する可能性がある。揮発性麻酔薬セボフルランが、高齢者(Anesth Analg 2010; 110: 775-779)や慢性高血糖患者(PLoS One 2017 Dec 1;12(12), doi: 10.1371/journal.pone.0188555)では特にQTc延長作用が大きいことや、術前に、J波症候群の各型がどのような頻度で存在し、その周術期における影響はどうなのか(J Cardiothorac Vasc Anesthesia 2015; 29: 1533-1536、日本麻酔科学会第62回学術集会臨床循環部門最優秀演題賞)を調べ報告してきた。

糖化最終産物のマクロファージへの作用や細胞組織障害に関する基礎研究

糖尿病における細胞・組織障害のメカニズムの一つとして、糖化最終産物(advanced glycation end products : AGEs)の関与が示唆されている。AGEsは還元糖と蛋白質の非酵素的糖化反応により不可逆性に生成される。慢性的な高血糖状態などで体内に蓄積し、糖尿病患者では高値を示す。マクロファージはAGEs を貪食し、動脈硬化の進行などに関与している。AGEsのマクロファージ貪食作用への影響や細胞・組織障害メカニズムに関して研究している。(Scientific Reports 2018; Apr 12;8(1):5901. doi: 10.1038/s41598-018-24325-y)

間葉系幹細胞の老化や障害に対するmiRNAの関与に関する基礎研究

miRNAは 21 – 25 塩基の機能性no-cording RNA であり、遺伝子発現を調節し器官形成、癌、感染症などの病態に深く関与している。高度先端総合医療センター再生医療部(福田教授)との共同研究で、miR-155 が BCL2 associated athanogene 5(BAG5) を低下させ、この結果 PTEN-induced kinase (PINK1) の不安定化が引き起こされてマイトファジーが抑制されること(Biochem Biophys Res Commun. 2020; 523: 707-712)、老化骨髄間葉系細胞では、miR-142が高発現しているためペルオキシソームの分解が抑制され、劣化ペルオキシソームが蓄積すること(Scientific Reports.2020; 10: 3735, doi:10.1038/s41598-020-60346-2)、を見出している。