RESEARCH研究

2017 研究業績・論文発表

論文

墳本 一郎、赤木 將男、森 成志、井上 紳司、朝田 滋貴、松村 文典

Anteroposterior Rotational References of the Tibia for Medial Unicompartmental Knee Arthroplasty in Japanese Patients.

The Journal of Arthroplasty 2017年10月号 P3169-3175
IF:3.055点
人工膝関節手術の際、設置するインプラントの正面と患者さんの膝の正面を一致させることはとても重要です。一体「膝関節の正面」ってどこだろう?膝関節の前と後ろを大まかにはイメージできても、ここが「正面」だとピンポイントで確定するのは難しいと思います。当教室では、人工膝関節手術用の正面同定法を2004年に開発し、現在ではanteroposterior (AP) axisとして全世界で広く用いられています。今回、より低侵襲で高機能な単顆型人工膝関節用の正面同定法を開発し報告しました。単顆型人工膝関節手術においても、インプラントの正面と膝の正面を従来よりも高い精度で一致させることが可能となり、インプラントの耐久性向上、脱臼の予防、術後膝運動機能の向上に寄与するものと考えられます。

宮本 裕史, 橋本 和喜, 池田 光正, 赤木 將男

Effect of correction surgery for cervical kyphosis on compensatory mechanisms in overall spinopelvic sagittal1 alignment.

European Spine Journal. 2017年9月号 P2380-2385
IF:2.563点
中位下位頸椎の脊柱後弯の進行は、水平視障害を引き起こす可能性があり、脊椎の他の部分や骨盤部分での代償が行われている可能性があります。しかしながら、その正確なメカニズムは不明でした。本研究では、頚椎後弯の矯正手術が全脊椎の矢状面アライメントの代償機構に与える影響が調査されました。結果、水平視機能を維持するために、上位頸椎における脊柱前弯症が増加し、中位下位頸椎におけるより大きな脊柱後弯を生じることが判りました。中頸椎の頸椎後弯の矯正は、上位頸椎のアライメントの正常化をもたらしました。なぜなら、外科的介入後に、水平注視を得るための頭頸部接合部の補償機構がもはや必要ではなくなったからです。

森竹 章公, Kawao N, Okada K, Tatsumi K, Ishida M, Okumoto K, Matsuo O, 赤木 將男, Kaji H

Plasminogen activator inhibitor-1 deficiency enhances subchondral osteopenia after induction of osteoarthritis in mice.

BMC Musculoskeletal Disorders. 2017年9月号 P392
IF:1.739点
凝固した血液を溶かす線溶系機構の阻害剤であるプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)が骨代謝に関係していると報告されている。一方、軟骨下骨の減少は変形性関節症発症の病態生理にとって重要であると指摘されている。当科では、PAI-1ノックアウトマウスを用いて、PAI-1の欠損が、マウスにおいてOAの誘導後に軟骨下骨減少を加速することを示し、 PAI-1はマウスにおけるOA誘発後の骨吸収およびその後の軟骨下骨減少症の増強を抑制し得ることを明らかとしました。

橋本 和喜, 宮本 裕史, 池田 光正, 赤木 將男

Radiologic features of dropped head syndrome in the overall sagittal alignment of the spine.

European Spine Journal. 2017年6月号 P1-18
IF:2.563点
首下がり症候群は、立位または座位で顎と胸部が接してしまう稀な病態です。当科で手術加療を行った首下がり症候群の患者20人の術前術後のX線画像を測定し、首下がり症候群における特徴を明らかとしました。結果、首下がり症候群はsagittal vertical axis (SVA)陽性の症例と、陰性の症例の2群に分かれることが明らかとなりました。SVA陰性群では、手術加療後の脊椎アライメントは正常に近づきましたが、SVA陽性群では手術後に水平視力が得られたものの、胸部および腰椎の補償がまだ不十分であったため、背骨全体の矢状アラインメントの異常が残存していました。

柿木 良介, Duncan SFM, Ikeguchi R, Ohta S, Nankaku M, Sakai H, Noguchi T, Kaizawa Y, 赤木 將男

Motor and Sensory Cortical Changes after Contralateral Cervical Seventh Nerve Root (CC7) Transfer in Patients with Brachial Plexus Injuries.

Journal of Hand Surgery Asian-Pacific Volume 2017年6月号 P138-149
腕神経叢全型引き抜き損傷に対して、対側第7頸髄神経根移行術が、ヨーロッパ、中国で盛んに行われている。我々の経験した対側第7頸髄神経根移行術患者4名に近赤外線トポグラフィーを用いて、患側上肢の再建知覚、運動を支配する大脳半球を8年間経過観察した.その結果再建上肢の運動、知覚機能が回復するにつれて、再建運動、知覚機能は、もともと患側上肢を支配していた健側大脳半球にその活動部位がもどることがわかった。

西村 俊司, 橋本 和彦、丹 彰浩、Yagyu Y、赤木 將男

Successful treatment with denosumab in a patient with sacral giant cell tumor of bone refractory to combination therapy with arterial embolization and zoledronic acid: A case report.

Molecular Clinical Oncology. 2017年3月号 P307-310
骨巨細胞腫は、一般には手術で治療される良性腫瘍です。しかし、仙骨部の骨巨細胞種の手術加療は非常にリスキーで困難です。保存的治療法として選択的動脈塞栓術とゾレドロン酸の投与が報告されています。当科では、選択的動脈塞栓術とゾレドロン酸投与の両治療によっても改善を得なかった32歳女性の仙骨部の骨巨細胞種対して、デノスマブを月に1回、3か月間皮下注射して、高い治療効果を確認しました。3回目の投与後、速やかに臀部の痛みは減少し、患者は歩行可能となりました。10ヶ月でのCT撮影では腫瘍周辺に骨硬化が現れ、12ヶ月後に行った針生検では腫瘍細胞は確認できませんでした。本症例の結果は、選択的動脈塞栓術やゾレドロン酸投与に応答しない外科的切除不能の骨巨細胞種に対して、デノスマブ治療が有効であることを示しています。

池田 光正, 宮本 裕史, 橋本 和喜, 赤木 將男

Predictable factors of deep venous thrombosis in patients undergoing spine surgery.

Journal of Orthopaedic Science. 2017年3月号 P197-200
IF:1.133点
深部静脈血栓症は、下肢の関節置換手術の主要な術後合併症の1つで、肺塞栓症のような致命的な合併症を引き起こす原因の一つとして知られています。しかしながら、脊椎手術後の深部静脈血栓症の発生率についてはほとんど知られていません。脊椎手術において、深部静脈血栓症の発生を予測させる術前の要素について調査を行いました。当科で施行した脊椎手術194例を調査した結果、29.7%にあたる57人で手術後に深部静脈血栓症が発見されました。結果、性別が女性、歩行が不能、手術前の血清D-dimer値が1.4μg/ ml以上の患者は術後に深部静脈血栓症を生じるリスクが高く、周術期に下肢静脈の超音波検査を行うことが望ましいと考えられました。

墳本 一郎, 赤木 將男

The Development of a Novel Bone Filler, Titanium Wire Ball.

Acta Medica Okayama. 2017年2月号 P19-24
IF:0.800点
骨欠損を伴う骨折の外科的治療の際、欠損部に人工の骨充填剤を充填する手法が良く用いられています。しかし、充填剤の硬さについては現在まで大きな関心が払われてきませんでした。現在使用されている骨充填剤は非常に硬く、充填部分周囲に新な骨折を引き起こすことがしばしばありました。そこで当科では、人の海綿骨と同じ硬さを持つ新しい骨充填剤を開発しました。新しい骨充填剤は直径0.14mmの純チタン線の両端を中央部に埋め込んで折り曲げ、直径4mm、内部空隙率83%、内部空隙300〜500μmのボール状に加工してあります。当科では、この新しい骨充填剤を成人白人ウサギの下腿骨に移植し、組織学的にその結果を評価しました。移植の4週間後、充填剤の内部は新しく出来た骨組織で充満し、移植部周囲の骨と完全に結合していました。

橋本 和彦, 小田 豊, 中村 文久, 柿木 良介, 赤木 將男

Lectin-like, oxidized low-density lipoprotein receptor-1-deficient mice show resistance to age-related knee osteoarthritis.

European Journal of Histochemistry. 2017年2月号 P2762
IF:2.306点
レクチン様酸化低密度リポタンパク質(ox-LDL)受容体-1(LOX-1)/ ox-LDLはアテローム性動脈硬化に大きく寄与することが知られている一方で、軟骨変性にも寄与している可能性があります。本研究の目的は、LOX-1 / ox-LDLシステムが変形性関節症と関連しているかどうかを、LOX-1ノックアウト(LOX-1 KO)マウスを使用して明らにすることです。結果、LOX-1 KOマウスにおけるOAの罹患率は、12カ月齢および18カ月齢での野生型マウスのそれより低くなりました。関節軟骨細胞における肥大分化マーカーの発現レベルは、LOX-1 KOマウスでは野生型マウスよりも有意に減少しました。軟骨細胞におけるLOX-1 / ox-LDL系が加齢性膝OAの病因に役割を果たすことを示しました。

柿木 良介, 橋本 和彦, 田中 寛樹, 赤木 將男

Suspension Arthroplasty Combined with Ligament Reconstruction of the Thumb Carpometacarpal Joint to Salvage Two Failed Arthroplasties: A Case Report.

Journal of Orthopaedic Case Report 2017年1月号 P50-53
母指CM関節症に対する2度のsuspension関節形成術後に、再度母指中手骨の中枢移動を起こして、疼痛が再燃した患者に対し、長橈側手根伸筋腱の半切腱を用いて、第1、2中手骨間靭帯形成とsuspension関節形成を行い、良好な結果を得たので,その手術手技を中心に報告した。