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病理学講座について

病理学講座について

 近畿大学医学部病理学講座は、医学部の創立時から30年の長きに渡って第1病理と第2病理の2教室が併存する形で運営されてきましたが、7年前に2教室が統合され、現在は1講座として運営されています。

 歴代の教授は、第1病理が岡本耕造先生、鈴木庸之先生、伊藤浩行先生で、第2病理が橋本重夫先生です。橋本先生がご退官になられた後、2教室は統合され、伊藤浩行先生が統合された病理学講座の主任教授になられました。私は平成22年4月よりその後を引き継がせて頂きました。

 現在の病理学講座には、私を含めて総勢9名のスタッフ(MD6名、DMD1名、PhD2名)*が在籍しています。佐藤隆夫病院教授は、医学部付属病院病理部の部長を務めています。その他のスタッフは医学部基礎講座の一員として病理学的研究を遂行するとともに、病理診断等の病理部関連業務を請け負っています。

 病理学はよく基礎医学と臨床医学とを橋渡しする学問であると言われますが、それは病理学的研究が、ヒトの疾患において罹患部に出現する病変そのものを研究対象とするからです。病理学的研究では、次の手順が王道とされます。

  • 先ず、病変を組織形態学的に理解する(=病理診断を下す+α)。
  • 次いで、病変を形作る種々の細胞について遺伝子発現などの分子生物学的な解析を行う。
  • 組織形態学的理解(1.)と分子生物学的理解(2.)の両者に立脚した実験モデルを細胞培養系や実験動物で構築する。
  • 実験モデルを用いて、病変内に存在する細胞間にどのような相互作用があるのか、個々の細胞がどのような生理活性を有するのかを解析する。
  • 病変を形成する細胞が、疾患に固有の病態生理形成にどのような役割を担っているのかを突き止める(或いは推論する)。
  • もう一度病変を観察して、結論(或いは推論)に納得出来なければ、実験モデルを再構築する。

 このように病理学的研究の実験手法はよく確立されているのですが、実際に研究を遂行するに当たっては、分子・細胞・組織という異次元の事象を個別的に解析する実験力と統合的に見抜いていく洞察力とが必要です。私は、この幅広くものを見るという点とヒトの病変に立脚しているという点がサイエンスとして非常に奥行きのある研究分野だと感じています。分子生物学花盛りの昨今ですが、少しゆったりとマクロ的視野に立った医学研究は如何でしょうか。病理学的研究の醍醐味に触れてみたいとお考えの研究者の方は、是非我々の研究室を覗いてみて下さい。皆様のご訪問をお待ちしております。

平成22年6月1日
近畿大学医学部病理学講座 主任教授 伊藤彰彦

 

  *平成24年4月現在、MD6名、PhD4名です。

  *平成25年4月現在、MD6名、PhD5名です。

  *平成27年6月現在、MD6名(兼務含む)、PhD4名です。

  *平成28年4月現在、MD8名(兼務含む)、PhD3名です。

  *令和3年4月現在、MD6名(病理診断科含む)、PhD4名です。