分子生物学 (2021年度)

■ 教員名 ■
西尾 和人   (教授)
坂井 和子   (講師)
デベラスコ マルコ(講師)
藤田 至彦   (医学部講師)
倉 由吏恵   (助手)
大森 亨    (非常勤講師)
西郷 和真   (遺伝子診療部 副部長・脳神経内科 准教授)

■ 授業概要・方法等 ■
1.
分子生物学は、全ての生物に共通して存在する遺伝物質DNAを基盤として生命の諸現象を解明しようとする学問である。講義や実習を通して、細胞生物学や遺伝学を統合的に理解し、生命現象の基本から諸疾患の病因等医学的事象に至るまで分子生物学的な理解を深め、臨床へ向けての礎とする。本講義では生命科学等において一年次に学習した分子生物学の基礎および細胞生物学の更なる深い理解を得ることを目的とする。特に、全身および環境の視点から、生化学、生理学を含む他基礎医学領域の現象等と繋がりを把握することが重要である。臨床医学との垂直統合として、遺伝子の変化と遺伝性疾患の関係や、体細胞変異により生じる表現型の変化について学習する。

2.
一般的な講義形式の授業や実習に加えて、学習の動機・印象付け、問題抽出・解決能力、自己学習・ 討論の習慣が身に付くべく、アクティブラーニング双方向授業を実施する。

3.
講義内容には、基礎医学分野における分子生物学、細胞生物学の習得を効果的にするために、臨床医学との垂直的統合として、臨床医学における疫学・診断・治療の内容も一部含まれる。また、基礎医学間の水平的統合として、生化学、薬理学、正常な組織、生理学の内容も学習の効果を促進する範囲内で解説する。

4.
主にゲノム生物学の教員が講義を行うが、臨床医学との垂直的統合として、臨床系の臨床遺伝専門医や学外講師による講義を実施する。

5.
主としてパワーポイントスライドを用いて講義を行うが、併せて授業内容を要約した資料を配布する。資料はあくまでも講義の参考資料であり、講義内容を網羅するものではないことに留意する。講義を聴講すること により、学習のポイントを把握し、ノートをとることを推奨する。本試験については、基本的には、分子生物学、細胞生物学の内容を出題し、臨床の疫学、診断や治療 に特化した内容は出題しない。

6.
学生からの質問は随時受け付けるが、学生がより積極的に質問できる時間として課題演習・Q&Aを設ける。それ以外の時間も積極的な質問を推奨する。

7.
講義内容の理解状況を確認するための小テストを行い、カリキュラムの習得度を評価する。

8.
実習については、出席とレポート提出は必須である。

9.
必要な学習のためには、過去問のみの学習では不充分である。理論的に理解するためには、講義と併行してしっかりした教科書を読んで復習することが望ましい。

10.
小テストは講義の習得度を評価するための形成試験であり、講義を聴講することにより習得できる範囲の記述式試験とする。
 

■ アクティブ・ラーニングの形態 ■
実験・実習科目・ディスカッション、ディベート・反転授業(知識習得の要素を授業外に済ませ、知識確認等の要素を教室で行う授業形態)・グループワーク・プレゼンテーション

【導入講義・遺伝子の構造と機能】
1. 核・染色体・DNA・クロマチンの構造を説明できる。
2. 染色体の複製・分配について説明できる。
【DNAと染色体】
1. 遺伝子発現の仕組みの概要を説明できる。
2. DNAやヒストンの修飾について説明できる。
【モデル生物】
1. 微生物モデルとして大腸菌や酵母の有用性を理解する。
2. 動物モデルとしてハエ・線虫・ゼブラフィッシュ・マウスの有用性を理解する。
【DNAの複製】
DNAの複製過程・誤対合修復について説明できる。
【DNAの修復・組換】
1. 一塩基・多塩基変異の原因・修復・疾患との関連について説明できる。
2. 相同組換えや動く遺伝因子について説明できる。
【遺伝子倫理】
1. 遺伝子に関する生命倫理、個人情報の取り扱いについて説明できる。
2. インフォームドコンセントと遺伝子検査の関連について説明できる。
3. ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関わる倫理指針・ヘルシンキ宣言について説明できる。
【安全・実習講義】
実習の具体的な内容や方法・技術・危険性について説明できる。
【DNAの転写】
1. mRNAの合成と成熟プロセス・転写機構を説明できる。
2. エクソン、イントロンについて説明できる。
【ゲノムの進化】
1. 進化に関係する遺伝子の変化について説明できる。
2. 遺伝子ファミリーについて説明できる。
3. 相同遺伝子と生命の系統樹について説明できる。
【RNAの翻訳】
1. 翻訳過程でのtRNA、mRNA、アミノ酸の関係を説明できる。
2. コドンとゆらぎについて説明できる。
3. タンパクの折りたたみや分解の仕組みについて説明できる。
【遺伝学の基礎】
1. 遺伝に関する用語を理解する。
2. 各種遺伝病の遺伝パターンについて説明できる。
3. 家系図を作成できる。
4. 集団遺伝学の基礎について概説できる。
【遺伝性疾患、家系図】
遺伝様式を理解し、家族歴から基本的な家系図が作成できる。
【遺伝子発現調節】
1. 転写を調節するDNA構造、機能について説明できる。
2. 転写基本因子やプロモーターについて説明できる。
【細胞内輸送】
1. 分泌・膜タンパクの生成・小胞への輸送について説明できる。
2. 細胞内区画について説明できる。
3. エンドサイトーシス、エキソサイトーシス、オートファジーについて説明できる。
【細胞周期】
1. 細胞周期制御系を説明できる。
2. S期・M期の仕組みを説明できる。
3. 有糸分裂や細胞質分裂について説明できる。
4. 細胞周期とその制御の仕組み・チェックポイントの役割を説明できる。
【遺伝性腫瘍とカウンセリング】
遺伝カウンセリングの意義と方法を説明できる。
【遺伝子とがん】
1. がん遺伝子・がん抑制遺伝子について説明できる。
2. がんの発生、増殖、浸潤、転移について説明できる。
3. がんにおける遺伝子発現の変化について説明できる。
4. 遺伝子の増幅、欠失およびその検出について説明できる。
5. 各種のがんにおける特徴的な遺伝子変異について説明できる。
【シグナル伝達(1)・細胞死】
1. 細胞表面にある受容体について説明できる。
2. 細胞間および細胞内シグナル伝達の仕組みを説明できる。
3. アポトーシスについて説明できる。
【シグナル伝達(2)(3)】
1. Gタンパク連結型および酵素連結型受容体を介するシグナル伝達の仕組みを説明できる。
2. マップキナーゼカスケードについて説明できる。
【細胞骨格】
1. 中間径フィラメント・アクチンフィラメントについて説明できる。
2. 微小管の構造について説明できる。
3. 筋収縮について説明できる。
【生殖細胞と受精】
1. 減数分裂について説明できる。
2. 配偶子(精子、卵子)の形成過程、受精のメカニズムを説明できる。
【核酸・蛋白質の操作】
1. 細胞の単離と培養について説明できる。
2. 遺伝子・タンパクの発現と機能の解析方法について説明できる。
3. 制限酵素、PCR、塩基配列決定について説明できる。
【遺伝病、先天性疾患】
1. 各種遺伝病の概念・分類・発症メカニズムについて説明できる。
2. 突然変異の分類について説明できる。
3. 疾患の遺伝様式について説明できる。
4. 生殖細胞と体細胞における変異の違いを説明できる。
5. 各種の遺伝病に特徴的な遺伝子変異について説明できる。
【Interactive Education】
医療現場で外国人とのコミュニケーションを円滑に進行できる。
【遺伝子検査】
遺伝子検査の方法・必要性について説明できる。
【遺伝情報に基づく医学】
1. 遺伝医学関連情報へのアクセスができる。
2. 遺伝カウンセリングの意義と方法を説明できる。
【バイオインフォマティクス】
1. 遺伝医学関連情報へのアクセスができる。
2. 医学分野に係わるゲノム解析技術を理解する。

【成績評価方法および基準】
定期試験(80%) ・ 小テスト(10%) ・ 実習レポート(10%)

【試験・課題に対するフィードバック方法】
小テストや実習レポートの要点と概要は翌回の授業時間に解説する。 

【教科書】配布テキストを使用します。
参考文献 ;[ISBN]9784524261994 『Essential細胞生物学(原書第4版)』 (南江堂 : 2016) 

【研究室・メールアドレス】研究棟5階ゲノム生物学教室;genome@med.kindai.ac.jp

【オフィスアワー】火曜日の授業終了後19:00位まで。