ゲノム医療センターについて

当センターは2019年9月19日付けで国の指定する「がんゲノム医療拠点病院」に認定されているため、300個以上の遺伝子を一度に調べることができます。(これを「がんゲノムプロファイリング検査」と呼びます。)多くの遺伝子を調べることでより良い治療薬を見つけることが期待されます。またMET遺伝子選択的な検査、遺伝子数を絞ったゲノムパネル検査、ゲノムの不安定性を調べる検査なども行っています。

他にもがん患者さまの診察から検査の実施、検査結果の注釈づけ、患者さまへの結果説明、カウンセリング等を行っています。特に大切な取り組みとして「エキスパートパネル」があります。
すなわち個々の患者さまのゲノム検査の結果を、様々な科の多くの医師(内科、外科、婦人科、泌尿器科、小児科、病理科、遺伝専門医など)、看護師、薬剤師、遺伝カウンセラーなどが供覧し、どのような治療方法があるか議論しています。エキスパートパネルは隔週で行われ、いつも熱心に治療方法等について検討を行っています。このような議論を通じて得られた結論を、患者さまにお伝えしています。あるいは講演や研修を通じて広くゲノム診療について啓発活動を行っています。

ゲノム医療部門

ゲノム医療について

医学の進歩により、がんの発生に関連ある複数の遺伝子の変化が明らかになってきました。
例えば、変化した遺伝子から作られる異常なタンパク質の中には、がん細胞の増殖を促進するものがあります。その遺伝子の機能を阻害することで、著明な効果を示す「分子標的薬」という治療薬が実用化され、実際に患者さんの治療に用いられています。

最近分かってきたことは、異なる種類のがんでも、同一の遺伝子変異等の遺伝子変化が認められることがあり、がん種にとらわれずに遺伝子検査の結果に応じて、がんの原因遺伝子を標的にした治療戦略が有効な方がいらっしゃるということです。そのために、日本においても遺伝子検査を普及させ、がんの原因遺伝子を検索する動きが広がりました。

しかし、従来の遺伝子検査方法では、1つの検査で1つの遺伝子の変化のみを検査するため、少量のがん組織から、複数の遺伝子異常を同時に、かつ迅速に測定することが困難なこともありました。そこで、2000年代以降に「次世代シークエンサー(NGS)」という装置が登場したことにより、がん組織から一度に複数のがん関連遺伝子を調べ、適切な薬剤を探すことが可能となりました。次世代シークエンサーを用いて、がん組織内の多数の遺伝子変化を一度に解析する検査法を「がん遺伝子パネル検査」と呼びます。

この「がん遺伝子パネル検査」を受けて頂くことにより、承認薬にかかわる遺伝子変化情報だけでなく、未承認薬の有効性を予想することもできるとされています。すなわちがん遺伝子パネル検査により、治療法が限定されている患者に対しても、治療選択肢の幅が広がると期待されています。
このように、がん遺伝子パネル検査によって、個々の患者のがんの遺伝子変化を明らかにし、解析結果に応じて治療方針を決定していく医療が「がんゲノム医療」です。

スタッフ紹介

教授
中川 和彦
(ナカガワ カズヒコ)

職種 医師(腫瘍内科)
専門 肺癌、新抗癌剤の臨床試験、分子標的治療
兼務 がんセンター長
緩和ケアセンター・がん相談支援センター合同委員会委員長
ACP委員会委員長
コメント がんを中心に抗がん剤の化学療法、早期臨床試験等を専門分野としており、がん患者の緩和医療、患者・家族とのコミュニケーションの促進を図ることによる全人的癌診療の実現に努めています。

准教授
米阪 仁雄
(ヨネサカ キミオ)

職種 医師(腫瘍内科)
資格 がん薬物療法専門医、内科認定医
担当業務 肺がんなど様々ながん患者さんの薬物治療、ゲノム検査の説明、検査結果に基づく治療法の説明・相談、エキスパートパネルの管理運営
コメント ゲノム診療を通じてより良い治療を患者さんに提供できるよう日々取り組んでいます。

医学部講師
髙濱 隆幸
(タカハマ タカユキ)

職種 医師(腫瘍内科)
資格 がん薬物療法専門医、呼吸器専門医、内科認定医
担当業務 遺伝子パネル検査の実施、エキスパートパネルの管理運営、がんゲノム医療の実践

白石 直樹
(シライシ ナオキ)

職種 臨床検査技師
資格 認定病理検査技師、遺伝子分析科学認定士、細胞検査士、がんゲノム医療コーディネーター修了
担当業務 各種遺伝子パネル検査の検体処理、ROSE、Oncomine Dxの院内内製化を行っています。

稲垣 千晶
(イナガキ チアキ)

職種 医師(腫瘍内科)
資格 総合内科専門医、がん薬物療法専門医、消化器病専門医、内科認定医
担当業務 遺伝子パネル検査の実施、ゲノム検査の説明、検査結果に基づく治療法の説明と実践

中川 裕月
(ナカガワ ユヅキ)

職種 臨床検査技師
資格 遺伝子分析科学認定士、がんゲノム医療コーディネーター
担当業務 各種遺伝子パネル検査の検体処理、Oncomine Dxの院内内製化

教授
福岡 和也
(フクオカ カズヤ)

職種 医師(臨床研究センター)
資格 認定内科医、呼吸器専門医・指導医、気管支鏡専門医・指導医、日本臨床薬理学会・指導医
担当業務 エクスパートパネルへの参画。当院において実施される治験を含む臨床研究の管理・統括

診療実績

検査名 2020年 2021年 2022年 2023年 合計
FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル 123 205 195 225 748
FoundationOne® Liquid CDx がんゲノムプロファイル - - 12 31 43
オンコマインDx Target TestマルチCDxシステム 9 133 138 153 433
myChoice診断システム - 9 18 13 40

前年の7月~その年の6月を集計対象とする。

FoundationOne® CDx /FoundationOne® Liquid CDx
がんゲノムプロファイル検査数
オンコマインDx Target TestマルチCDxシステム検査数

遺伝子診療部門

遺伝子診療について

近年、医学の進歩により一部の「遺伝性腫瘍」すなわち、がんになりやすい体質であるかどうかが、遺伝子を調べることで分かるようになりました。みなさんの中にも「がん家系」と言う言葉を耳にしたことのある方は多いと思います。近年、このことはあながち間違いでないことが分かってきました。

また、治療の選択肢を広げるために、「がん遺伝子パネル検査」が保険収載で行われるようになり、治療の選択肢を広げる目的で行った検査の結果から、遺伝性腫瘍の可能性があることもわかってきています。 遺伝性腫瘍はご本人だけではなく、ご家族のがんの発症にも関わります。そのため、「遺伝性腫瘍であるかどうか知りたいけど、家族へどのようにして伝えたら良いのか?」「本当に遺伝性腫瘍なのか?」「子ども達もがんになるの?」など疑問や不安をもつ患者さまが多くいらっしゃいます。

遺伝カウンセリングはそのような疑問や不安の内容を傾聴し、正確な情報提供を行います。そして、今後どのような解決方法があるかを患者さまと一緒に相談する場とお考え下さい。 遺伝子診療は、遺伝カウンセリングを通して患者さまの気持ちに寄り添った医療につなげていきます。

スタッフ紹介

臨床教授
西郷 和真
(サイゴウ カズマサ)

職種 医師
資格 臨床遺伝専門医、指導医、責任指導医
担当業務 遺伝診療、遺伝カウンセリング

池川 敦子
(イケガワ アツコ)

職種 遺伝カウンセラー
資格 認定遺伝カウンセラー
担当業務 遺伝カウンセリングやダウン症児の赤ちゃん体操を行っています。

小田 いつき
(オダ イツキ)

職種 遺伝カウンセラー
資格 認定遺伝カウンセラー
担当業務 遺伝学的検査前後や遺伝性疾患について情報提供や意思決定支援を遺伝カウンセリングで行ってます。

診療実績

がんゲノムプロファイリング検査の二次的所見

  2021年 2022年 2023年
二次的所見検出数 31 35 41
二次的所見の遺伝カウンセリング数 24 16 29

2023年は9月までを対象とした

がんゲノムプロファイリング検査の二次的所見件数

遺伝性腫瘍とHBOCの遺伝カウンセリング数

  2021年 2022年 2023年
遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリング数 351 370 299
HBOCの遺伝カウンセリング数 183 162 85

2023年は9月までを対象とした

遺伝性腫瘍とHBOCの遺伝カウンセリング数