センターのご案内

センター責任者ご挨拶

センター長代理を務めます小児科の和田紀久です。
近畿大学病院地域周産期母子医療センターは産婦人科の産科部門と、小児科が運営するNICU(新生児集中治療室)が中心となって、お母さんと赤ちゃんのための医療を提供する部門です。
大阪府が指定する周産期母子医療センターには高度な周産期医療を行う総合周産期母子医療センターと、より軽症例を対象とする地域周産期母子医療センターとがあります。近畿大学病院周産期母子医療センターは、大阪の人口に基づいて6つの施設が総合周産期母子医療センターに指定された後に設立されたため、地域周産期母子医療センターとなりました。しかし、高度な周産期医療を行い、新生児の内科疾患以外にも対応し、教育、研究機能を有する、総合周産期母子医療センターに勝るとも劣らない高度医療機関です。疾患によっては総合周産期母子医療センターからも患者さんが紹介され、特に妊婦さんの重症合併症に関しては南大阪で高度な医療を提供しています。胎児診断にも積極的に取り組んでおり、出生直後から医療を必要とする赤ちゃんを産科医と新生児、小児循環器、小児外科の専門医らが一団となって守る体制になっています。
お産は安全で当たり前、ではありません。リスクのない妊娠分娩であっても、結果的に数パーセントの赤ちゃんは出生直後に何らかの医療が必要になります。我々の周産期母子医療センターでは正常分娩も広く受け入れています。分娩の合併症や新生児の異常に即座に対応ができる大学病院で、安全で満足なお産をして頂けるよう、スタッフ一同日々頑張っています。

センター⻑代理 和⽥紀久

産婦人科診療部長のご挨拶

みなさん、ようこそ近畿大学病院地域周産期母子医療センターへ。当センターは南大阪唯一の大学病院として、正常妊娠(普通のお産)から、さまざまな母体疾患合併妊娠をはじめとした重症妊娠までを取り扱っています。

妊娠出産は女性の生涯でもっとも感動的なイベントです。同時にときに重大な事態にもかかわる大変な出来事です。われわれは妊婦さんがそれぞれの状態に応じてもっとも安全で、かつ満足のいくマタニティー経験ができるように、外来での検診から入院出産までをセンタースタッフ全員でサポートいたします。

産婦⼈科診療部長 松村謙⾂

当センターの役割

当センターは、国から地域周産期母子医療センターの認定を受けています。妊娠中や出産前後、出生後に高度な医療が必要な妊婦さんや赤ちゃんに対し、院内のさまざまな診療科や他の施設と協力しながら、南大阪圏や大阪府下のみならず、近畿圏の周産期医療を支えています。

スタッフと診療体制

当センターの産科部門では、松村主任教授のもと、15名の産婦人科医師と20名の助産師が診療に当たっています。また新生児部門には9床のNICU(新生児集中治療室)と18床のGCU(継続保育室)があり、新生児専門の小児科医師が診療に当たっています。
産科部門では、正常な妊娠経過をたどっている妊婦さんも、合併症をお持ちの妊婦さんも、どなたでも安心して出産いただけるよう、外来通院中から、医師と助産師が協力して診療に当たっています。合併症をお持ちの妊婦さんについては、専門診療科と緊密に連携して診療に当たっています。
また、出産前後の妊婦さんや赤ちゃんに、緊急対応が必要な状態が生じた際は、小児科小児外科救命救急科集中治療部脳外科麻酔科放射線科など、院内の複数科の医師が協力し、即座に治療に当たる体制を整えています。
出生後の赤ちゃんは新生児科の医師がケアに当たります。妊娠中からお腹の中の赤ちゃんに何らかの疾患が疑われる場合は、産科部門の胎児エコー外来、新生児部門の胎児心臓病外来でしっかりと管理し、出生後はNICUで集中治療を行います。

受け入れへの取り組み

当センターは、大阪府が誇る産婦人科診療相互援助システム(OGCS)と新生児診療相互援助システム(NMCS)に参画し、24時間体制で、リスクが高い妊産婦さんや赤ちゃんの受け入れを行っています。OGCSとは産科救急・母体搬送を円滑に行うための連絡調整システムのことで、妊産婦さんに搬送の必要性が出た場合、搬送を依頼したい施設がコーディネータである大阪府立母子医療センターに連絡し、受入病院を探す仕組みです。当センターの産科部門は「近畿大学産婦人科 周産期コール」を持ち、OGCS搬送やOGCS以外の搬送依頼の連絡を、病院事務を通すことなく担当医師が直接受け、スムーズに受け入れる体制を整えています。さらに、緊急時の時間を問わない院内の協力体制は、他の追随を許さないと自負しています。
万が一、当センターでの受け入れが困難な場合は、OGCS、NMCSにて迅速かつ確実に、他施設への搬送を行います。搬送が完了するまでは、妊産婦さんと赤ちゃんに負担がかからないよう、責任を持って治療を行います。

周産期コール

妊娠・出産は大変幸せなイベントである一方で、実は常に危険が隣りあわせです。妊娠中に何か危険が発生した場合に、それをできるだけ早く察知するため、定期的に妊婦健診を行い、母体と胎児の状態を毎回チェックしています。
妊婦健診では、これまで順調だった妊婦さんでも突然異常が見つかることがあります。また分娩の際には、大出血で母体の命が危険にさらされる緊急事態になる場合もあります。もしそのような状況が起こった場合、かかりつけのクリニック・病院で対応困難となれば、より高度な医療機関へ搬送・紹介を依頼することになります。一方で、依頼を受ける側の医療機関も、全国的な産婦人科医不足のためマンパワーが足りていないことが多く、搬送・紹介の依頼を断らざるを得ないことも少なくありません。
そのような厳しい状況の中、近畿大学病院産婦人科は「断らない産婦人科」を目指しています。受け入れ率は90%近くに達しており、特に分娩時の大量出血など高度の救命処置を要する場合は、全ての依頼を受けることができました。断らない産婦人科を支えている要因の一つが、「周産期コール」の存在です。周産期コールとは、近隣の医療機関から近畿大学病院の産婦人科当番医師への「直通の」搬送・紹介システム、いわゆるホットラインです。重症緊急にもスムーズに現場の医師同士で連絡が取れ、受け入れについて即決できるため、きわめて迅速な対応が可能であり、近隣の医療機関から非常に高い評価をいただいています。
周産期コールは、産婦人科だけでなく、小児科・救命救急科・麻酔科・放射線科などの医師や、助産師・看護師、救命救急センターや手術室のスタッフなど、近畿大学病院のあらゆるチームの協力を得て成り立っています。我々は、みなさまが安心してお産に臨めるよう、南大阪の周産期医療の最後の砦として大阪狭山の山の上から見守っています。

母体救命

医学が進歩した現代では、お産で死ぬことはないと思われがちですが、決してそうではありません。日本の妊産婦死亡率は10万分娩に3.4件(2016年度)と、諸外国と比較しても格段に低いものの、それまで元気だったお母さんが突如命の危険にさらされることがあります。
そして、その原因として最も重要と言えるのが分娩時の大量出血です。母体救命とは出血との戦いと言い換えることもできます。分娩前であれば、胎盤が子宮の中で剥がれてしまう常位胎盤早期剥離、前置胎盤・癒着胎盤などが大量出血の原因となりますし、分娩後であれば、子宮の収縮が悪いことによる弛緩出血、頸管裂傷・腟壁裂傷といった産道の損傷、胎盤遺残、子宮内反症、子宮破裂、羊水塞栓と多岐にわたります。
私たちは、「産科危機的出血への対応指針」というガイドラインに則って、日々診療にあたっています。初期治療でコントロールできないとき、お母さんの命を助けるために高度な医療を要することがあります。また、出来るだけ多くの人員の確保が必要です。
近畿大学病院では、24時間365日、常に複数の産婦人科医が対応できる体制を取っています。さらに、救命処置や全身状態の管理に長けた救命救急医や麻酔科医、カテーテルを用いて子宮への血流を遮断する子宮動脈塞栓術を行う放射線科医、その他多くのスタッフが24時間体制で対応します。これほどのマンパワーを持った病院施設は多くなく、非常に安心感があります。当院での分娩はもちろん、近隣の医療機関で発生した緊急事態にも、全力で対応します。
お母さんを待つ赤ちゃんや家族のため、なんとしてでも元気になって帰っていただくという強い気持ちで診療にあたっています。