再発リスクや進行度に適した方法
「乳房再建術」とは、一般的に乳がんなどの手術の後、変形を生じたり、ボリュームが失われた乳房を、できるだけ元の形に復元する手術です。乳がんの手術により乳房が失われることで、女性の象徴が失われ、つらい思いをする患者さまは少なくありません。乳房再建の希望がある、または考えてみたいと思われる患者さまは乳がん手術前に主治医と相談してください。乳房再建術は、乳がんの手術の内容や、術後の乳がん治療、それぞれの患者さまの状態によってタイミングや手術の方法が異なります。当院では患者さまの状況や希望に合わせて再建方法や時期を決めるように心がけています。
乳房再建には乳がん手術と同時に再建を行う一次再建と、乳がん手術後しばらく経ってから再建を行う二次再建があります。それぞれ利点と欠点がありますので、当院では乳がん手術前に患者さま、乳腺外科の先生とよく相談をした上で方針を決めております。
乳房再建にはご自身の組織を用いる方法（自家組織再建）と、シリコン乳房インプラントを用いる方法（人工物再建）があり、どちらも保険診療で行うことができます。
それぞれ利点と欠点があり、また患者さまの状況により向き不向きもあります。術前によく相談をして、ご自身に最適な再建方法を選択いただきます。
主な特徴は以下の通りです。
◎自家組織再建
利点：柔らかい、動きがあり自然、暖かい、メンテナンスの必要性が少ない
欠点：他の部位に瘢痕が残る（一部の方法を除く）、移植組織壊死のリスクがある（下腹部組織を用いた場合）
◎人工物再建
利点：他の部位に瘢痕が残らない、手術時間が短い
欠点：自然さは自家組織再建に劣る、メンテナンスが必要（人工物破損や被膜拘縮による変形）、下垂した乳房の再建は難しい
当院では主に下腹部の脂肪組織を移植する方法（遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁）と、背中の筋肉と脂肪を移植する方法（広背筋皮弁）を用いております。
主な特徴は以下の通りです。
◎遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁（図1）
大きな乳房の再建、放射線照射後の再建および両側乳房の再建に適しています。皮弁採取後の下腹部瘢痕は長いですが、ジーンズで隠れる位置です。当院では、脂肪吸引を併用することで、下腹部形態を整える工夫を行なっております。さらに、術前に撮影した3Dデータから目標とする乳房の3Dモデルを作成することで、より精度の高い再建を行っています。
◎広背筋皮弁（図2）
移植できるボリュームが少ないことが本法の難点でしたが、当院ではお腹や太ももからの脂肪吸引と移植を併用することで、小～中等度サイズの乳房再建に用いております。腹部に瘢痕を残したくない方、既に腹部皮弁を使用済の方に適しています。皮弁採取部は、背中の下着ラインに沿った11から15センチ程の瘢痕となります。日常生活における術後機能障害はほとんどありません。
さらに、皮膚の欠損が無い、または組織拡張器（ティッシュ・エキスパンダー）で
皮膚が十分に拡張されている場合、背部の切開無しでの再建も可能です。
図1 遊離深下腹壁動脈穿通枝皮弁
図2 広背筋皮弁しずく型（アナトミカル型）と丸型（ラウンド型）のシリコン乳房インプラントがあり、
患者さまの体格や希望に応じて使い分けることができます。当院では人工物再建においても、お腹や太ももからの脂肪吸引と移植を併用することで、術後成績の向上を目指しております。
乳輪乳頭の切除が必要であった患者さまでも、それらの再建が可能です。乳頭再建には胸の皮膚を立ち上げる方法や、反対側の乳頭の一部を移植する方法があります。乳輪再建にはアートメークを行う方法や、大腿内側基部から植皮を行う方法があります。
どのような状況下であっても乳房再建は可能です。まずは相談だけでも結構ですので、どうか気軽に受診して下さい。
