分子標的薬など新治療を実施
皮膚とは体の表面を覆っている層を指します。面積は約1.6㎡で畳一枚分に相当します。あまり知られていませんが、重さは10kg弱で、体の中で一番大きな器官になります。働きとしては、細菌やウイルスなどから体を守ったり、暑さ寒さなどを感じたり、体温の調節をしたり、そのほか吸収や
構造上、浅い部位にある表皮と深い部位にある真皮に分かれます。表皮には、主に皮膚自体を作る角化細胞と紫外線から皮膚を守る物質であるメラニンを作るメラニン細胞があります。真皮の大部分は主に線維成分で構成され、そのほか細胞成分や血管・リンパ管・神経・
図 皮膚の構造とそれぞれの位置関係
皮膚がんは主に皮膚を構成している細胞ががん化することで生じます。さまざまな
有棘細胞がんは皮膚を構成する角化細胞が悪性化したもので、見た目は赤くジュクジュクしたり、固く盛り上ってきて気付かれることが多いようです(写真1、2)。高齢者の顔や手など日光に当たる部分によくできるため、慢性的な日光(紫外線)の刺激が加わることでできやすいと考えられています。そのほか、火傷や放射線治療後なども原因といわれています。放置すると少しずつ大きくなり、内臓やリンパ節に転移を起こし治療が難しくなることがあります。
原則治療は外科的に病変部を取り除き、縫い合わせることが行われますが、周りの皮膚に十分余裕がない場合は皮膚を近くから移動させる手術(皮弁術)をしたり、鎖骨や
基底細胞がんは黒色のできもので、一見、大きなホクロのように見えます(写真3、4)。たまに固く盛り上がりイボ状になったり、傷のようにジュクジュクする場合もあります。主に高齢者の顔面にできやすいとされていますが、体や手足にも時々みられます。病変は局所で大きくなる傾向が強いものの、前述の有棘細胞がんのように内臓やリンパ節への転移はあまりみられません。
治療は腫瘍から十分な距離をとり外科的に取り除き、傷は縫い合わせますが、傷が大きく縫い合わせることができない場合は皮弁術や植皮術を行います。完全に取り切れれば問題がないため、原則、術後の抗がん剤による治療や放射線療法は行いません。
悪性黒色腫はいわゆるホクロのがんです(写真5、6)。中高年に多くみられ、性別によるできやすさは大きく変わることはありません。主に足・
また、小さいものであれば肉眼的に判断が困難ですので、拡大鏡にて色素の分布パターンを確認することで、おおよその良悪の判断ができます。悪性黒色腫は悪性度が高く内臓やリンパ節に転移を起こしやすいため、早期発見と外科的に取り除くことが大原則です。その進行度は腫瘍自体の厚み、内臓やリンパ節への転移の有無をもって決定されるため、原発巣の評価とともにX線検査やエコー検査、そして場合によってはPET検査を行い判断をします。
腫瘍を外科的に摘出する場合は、前述の進行度に基づいて腫瘍から離す距離が決められており、5mm~2cmの範囲となります。そのため、進行例では非常に大きな摘出創になりますので、皮弁術や植皮術が多くの症例で必要となります。
指先の進行例では病変部を含め指を切断しないといけないケースもあります。しかし非進行例で早期に治療が受けられた場合は良い経過をたどります。その一方で、進行している場合は術後に抗がん剤による治療を行いますが、治療効果は乏しいとされています。放射線による治療は残念ながらあまり効果はありません。また、病変が小さく非進行例と考えられていた病変の中にわずかながら小さなリンパ節への転移が見られる例があるとされています。
当科では潜在的に存在するリンパ節転移の有無を評価し、もし転移が発見された場合、早期に適切な治療を行うための検査(センチネルリンパ節生検術)を実施しています。従来のリンパ節を染色する色素を使用する方法に加え、リンパ節に集積する特殊な薬剤を使用する方法も合わせて行っていて、精度の高い検査ができます。
また手術中に検査を行い、必要なときには同時にリンパ節の治療を受けることができます。進行例の場合は、従来の抗がん剤治療に加え、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬などの新しい治療を受けることができます。
表 ABCDEルール。悪性黒色腫の診断の目安になります