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脳血管障害

硬膜動静脈瘻こうまく・どうじょうみゃくろう

硬膜動静脈瘻とは?

 動静脈奇形はこの毛細血管を介さずに動脈と静脈がつながってしまい,異常な血管の塊(ナイダスといいます)を作ってしまう病気です。それに対して動静脈瘻は,動静脈奇形と同様に毛細血管を介さずに動脈と静脈がつながってしまいますが,異常な血管の塊を形成しないものを言います。特に骨の内側で脳を包んでいる硬膜によく見られ,硬膜動静脈瘻と呼ばれます。
 本邦では、海綿静脈洞、横静脈洞、S状静脈洞と言われる場所にできることが多いです。静脈洞とは、脳に動脈で血液を送った後に、血液が心臓に戻るために最後に通る場所です。

硬膜動静脈瘻の症状

 硬膜動静脈瘻は、できる部位によって症状が異なります。海綿静脈洞と呼ばれる眼の奥の場所にできた場合は,眼の方に海綿静脈洞から血液が逆流して,充血や眼球突出をきたしたり、目を動かす神経に障害を与えると複視(ものが二つに見える)をきたしたりします。目の病気と思って眼科を受診される方が多いです。また、図のような頭の後ろの静脈洞にできた場合は,耳鳴り(心拍にあわせたような耳鳴り)で見つかることが多いです。耳の病気と思って耳科を受診される方もおられます。これだけでも日常生活に支障をきたしますが、さらに問題は、どの部位にこの病気ができても、静脈の流れが悪くなるため、脳に出血をきたしたり、出血にならなくても、脳の浮腫が起こることで、元気がなくなったり、辻褄の合わない話をしたりすることがあります。脳の出血を起こすと、重大な後遺症を起こしたり、命が失うことがあるため、治療が必要となります。無症状で、脳ドックなどにより見つかる場合もあります。

硬膜動静脈瘻の検査

 通常MRI検査で異常な血管が見つかり,この病気と診断されます。MRIで異常が見つかった場合は,造影CT検査やカテーテルによる血管造影検査を行い,診断が確定され,治療の方針が立てられます。脳ドックなどで、無症状で発見された場合は、直ちに治療の対象になることは少ないです。ただし、無症状でも、静脈の流れが悪い時は出血の危険があるため、詳しい検査が必要となります。

硬膜動静脈瘻の治療

 この病気は自然に消えることがあります。そのため無症状で,血液の逆流もなく,軽いものであれば,そのまま様子をみます。しかし、消失するまでは、経過観察のためMRI検査が必要です。見た目上は、無症状であっても、血液の流れが悪くなっていることがあるからです。目や耳鳴りといった症状があり,カテーテル検査などで脳や目への血液の逆流が確認されたものは、症状を改善するために治療が必要です。治療は原則としてカテーテルによる塞栓術が第1選択となります。特殊な例では、開頭手術やカテーテル治療を合わせた開頭術が選択されます。

カテーテルによる塞栓術

 カテーテル(1mm以下の小さな管)を動静脈瘻のある部分に、足の静脈から逆行するようにもっていき,動静脈瘻がある異常な静脈洞の部分を、金属のコイルで詰めてしまいます。動静脈瘻の異常な血管が簡単に見つければ、その点だけを詰めれば治癒できますが,動静脈瘻の異常な部分が複数ある場合などは、広い範囲を詰めなければ治癒できないことがあります。また異常な血管を動脈側から塞栓物質を用いて閉塞することを行うこともあります。それぞれの病気の状態によって、治療法が複雑になることがあるため、理解しにくいかもしれません。概ね、静脈から動静脈瘻がある異常な静脈洞のみを閉塞することにより、この病気は消失し、症状の改善や出血の予防が得られます。

治療成績

 当院での動静脈瘻の治療の成績は良好であり、ほぼ100%の確率でこの病気は治癒しています。これにより目の充血、眼球の突出、耳鳴りの症状や出血の危険はなくなります。ただ、複視の症状の改善が得られないことがあります。その原因に、長期的な神経障害が継続していたということがあげられます。従って、症状の改善する確率は、90%となっています。症状のある方は、早期に発見して、早期に治療することが必要であると考えています。

報道関係者の方へ(コメント可能な医師)

専門の担当医師
准教授 佐藤 徹