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機能的脳神経外科疾患

水頭症一般すいとうしょういっぱん

水頭症

 水頭症とは、脳と脊髄を循環する脳脊髄液が何らかの原因(脳腫瘍・脳出血・くも膜下出血・髄膜炎など)で循環障害を起こし、頭蓋内に脳脊髄液が貯留し、脳室が大きくなり様々な症状を出す病気です。

脳脊髄液の流れ(髄液循環)

 脳脊髄液は、脳室内の脈絡叢(みゃくらくそう)で作られ、①側脳室からモンロー孔を通過し、②第3脳室から③中脳水道を経て④第4脳室に至り、そこから⑤頭蓋内・脊髄腔内くも膜下腔へと流れ吸収されます。

水頭症の病因

 髄液の流れが障害されたり、髄液の吸収が低下し脳脊髄液が貯留することがほとんどですが、なかには脳腫瘍(脈絡叢乳頭腫)による髄液の過剰産生によるものもあります。

機能的な分類

 髄液の流れが障害(閉塞・狭窄)される事により起こる水頭症を閉塞性水頭症と呼び、 脳脊髄液の通過する経路に障害はなく、脳脊髄液の吸収障害で起こる水頭症を交通性水頭症と呼びます。

機能的な分類

 髄液の流れが障害(閉塞・狭窄)される事により起こる水頭症を閉塞性水頭症と呼び、 脳脊髄液の通過する経路に障害はなく、脳脊髄液の吸収障害で起こる水頭症を交通性水頭症と呼びます。

症状の発現期間の違いによる分類

 髄液の流れが急に障害を受け、脳脊髄液が急激に貯溜し(脳室拡大)、頭蓋内圧が急激に上昇し、頭蓋内圧亢進症状(頭痛や嘔吐)、意識障害を来すものを急性水頭症と呼びます。一方、髄液の流れが緩やかに障害を受け、脳脊髄液がゆっくりと貯溜し(脳室拡大)、頭蓋内圧亢進は来たさず、頭痛や嘔吐、意識障害はなく、脳室の拡大により脳が圧迫され、脳の機能が徐々に低下するものを慢性水頭症(正常圧水頭症)と呼びます。

くも膜下出血に伴う急性水頭症のCT画像:右側の脳室が急速に拡大している

水頭症の治療

1)脳室ドレナージ術

 急性水頭症に対して頭蓋内圧をコントロールする目的で行う一時的な手術で、脳室内にドレナージチューブを挿入し、体外に脳脊髄液を排出させます。
 頭蓋内圧亢進により意識障害を来しているような場合に救命目的で行います。
くも膜下出血や脳室内出血後、重症の髄膜炎、脳腫瘍による急性閉塞性水頭症などで行われます。

くも膜下出血後の水頭症に対する脳室ドレナージ術

2)髄液短絡(シャント)手術

 水頭症は、髄液の流れを良くする治療によって、症状が改善します。この手術を髄液シャント手術といいカテーテルを体内に植込みます。髄液シャント手術において重要なものが、水頭症治療用シャントシステムであり、過剰に溜まった脳脊髄液を流す管(カテーテル)がシャントシステムです。基本的には、一本の管ですが、患者さんの状態により脳脊髄液の流れを調節する弁(バルブ)が付いており、からだの外から機械で調節することができます。 
 髄液シャント手術には、主に脳室-腹腔シャント(V-Pシャント)と腰椎-腹腔シャント(L-Pシャント)があり、脳室もしくは腰椎クモ膜下腔から脳髄液を導くカテーテル留置手術となります。

左図)脳室-腹腔シャント(V-Pシャント)
右図)腰椎-腹腔シャント(L-Pシャント)

3)神経内視鏡を用いた水頭症手術

 水頭症の中には、髄液の流れる経路に狭窄や閉塞が起こった場合に起こる閉塞性水頭症と呼ばれる病態があります。従来より、この様な場合にも髄液シャント手術(脳室-腹腔シャント)により治療はできるのですが、神経内視鏡を用い髄液の別の経路である第3脳室底に開窓術(穴を開ける)を行うことにより、水頭症を改善する事ができます。この手術の場合は、からだの中にシャントチューブを留置することなく治療ができるという利点があります。

神経内視鏡

脳腫瘍が原因の中脳水道閉塞による急性水頭症(MRI)
赤:側脳室の拡大、黄:脳腫瘍、青:中脳水道の閉塞

神経内視鏡による第3脳室底開窓術

神経内視鏡による第3脳室開窓術(術中画像)