医療関係者へ

機能的脳神経外科疾患

正常圧水頭症せいじょうあつすいとうしょう

特発性正常圧水頭症(iNPH:アイ・エヌ・ピー・エイチ)

 高齢の方に、足元がふらつく(歩行障害)、物忘れが強くなった(認知症状)、尿漏れを起こしてしまう(尿失禁)症状がよく見られます。
 これらの症状なの中に特発性正常圧水頭症と呼ばれる病気があります。まず歩行障害が見られ(94-100%)、認知症(78-98%)や尿失禁(62-92%)が続く場合はiNPHの可能性が高くなり。放置すると次第に寝たきりにもなりかねません。
 iNPHの歩行は、小刻みですり足、両足を開きながら(開脚歩行)歩くのが特徴です。
 iNPHは、頭の中の脳脊髄液の流れがスムーズにいかなくなって起こると考えられています。

診断

 診断はまずCTおよびMRIの画像を用いて行います。iNPHの場合特徴的な画像所見で、くも膜下腔の不均衡な拡大を伴う水頭症(DESH:disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus)と呼ばれています。

  1. A) 脳室の拡大
  2. B) 高位円蓋部脳溝、大脳正中部くも膜下腔の狭小化
  3. C) シルビウス裂の拡大
  4. D) 脳溝の局所性拡大

MRI画像

 それ以外には、iNPHは高齢の方に多いために、いろいろな認知症との鑑別や合併しているかを事前に当院では検査をいたします。脳血流シンチ(脳血流の分布を計測)検査行い、この検査でもiNPHに特徴的な画像やアルツハイマー病、レビー小体型認知症に特徴的な画像を組み合わせて診断いたします。

iNPH患者の脳血流シンチグラフィー画像:相対的に高位円蓋部の血流が増加(矢印)

iNPH患者の脳血流シンチグラフィー画像:相対的にシルビウス裂の血流が低下(矢印)

 また、髄液排除試験(タップテスト):腰から脳脊髄液を30ml-40ml程度採取(腰椎穿刺法)を行う事により、一時的に脳脊髄液を減らすことで、歩行障害、認知症、排尿障害の症状が改善するかを確認し、患者様も実際手術効果を体験することができます。(2-3日の入院期間で検査をいたします)改善が認められれば最終的に、外科的な治療法を考慮いたします。

特発性正常圧水頭症診療ガイドラインより

治療

 治療は、髄液の流れを良くする治療で、髄液シャント手術と呼びます。髄液シャント手術において重要なものが、水頭症治療用シャントシステムであり、 過剰に溜まった脳脊髄液を流す管(カテーテル)がシャントシステムです。基本的には、一本の管ですが、患者さんの状態により脳脊髄液の流れを調節する弁(バルブ)が付いており、からだの外から機械で調節することができます。
 髄液シャント手術には、主に脳室-腹腔シャント(V-Pシャント)と腰椎-腹腔シャント(L-Pシャント)があり、脳室もしくは腰椎クモ膜下腔から脳髄液を導くカテーテル留置手術となります。特発性正常圧水頭症(iNPH)に対する手術では、一般的に、V-Pシャントの数が一番多いようですが、最近手術侵襲が軽減できるL-Pシャント手術が増えてきています。

手術後のレントゲン写真(矢印がシャントチューブと調圧バルブ)

手術後のCT写真

手術による効果

 一般的に、症状の改善率は歩行障害は60-77%、認知障害は56-69%、排尿障害は52%程度になると報告されています。
 手術後のiNPHの改善率は3-6ヵ月で39-81%、12ヵ月で63-84%、2年で69%、3-6年で60-74%程度に認められ、持続することが報告されています。