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脳腫瘍

下垂体腺腫かすいたいせんしゅ

下垂体腫瘍とは

 下垂体はホルモン分泌の司令塔であり、様々な腫瘍が発生します。代表的腫瘍は下垂体腺腫であり、他に頭蓋咽頭腫やラトケ嚢胞などが挙げられます。これらの腫瘍は稀に悪性経過を辿るタイプもありますが、基本的には良性腫瘍に分類されます。症状は大きくは2つに分けられ、ホルモン関連の症状と視機能の障害があります。良性腫瘍ですので、脳ドックなどで偶然に発見されるケースも最近は増えてきましたが、症状があるケースでは治療が必要となります。治療は一部に薬物療法が第一選択のタイプもありますが、大部分は外科的治療が必要となります。下垂体は脳の正中部で最も深い部位に存在しており、外科的治療では開頭による腫瘍摘出術ではなく、鼻孔を経由した経鼻法による腫瘍摘出術が基本術式になります。頻度は少ないですが巨大な腫瘍や外側に拡大しているタイプに関しては開頭術を要する場合もあります。

当科での治療方針

 当科では2010年以降、内視鏡単独で経鼻法を行う内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術を施行しております。直径4mmの内視鏡を右鼻孔から挿入して約10cm奥の腫瘍を特殊な手術機器を用いて摘出します。手術中はニューロナビゲーションシステムを用いて正確に腫瘍の位置を把握して安全で確実性の高い手術を実践しております。特殊な手技(硬膜の縫合閉鎖など)が必要な場合は左右両方の鼻孔を利用する場合もあります。写真は手術で使用する内視鏡とモデルを用いたイメージです。脳神経外科担当医はこれまでに多数の手術、治療経験を有しており、日本神経内視鏡学会技術認定医、内分泌代謝科(脳神経外科)専門医でもあります。
治療例を以下に提示します。

40歳代男性、下垂体腺腫

 下垂体が分泌するホルモンの中で成長ホルモンが過剰に分泌されるタイプ(先端巨大症)であり、視野の障害があったため発見されました。腫瘍は全摘出され、視野障害は改善し、過剰な成長ホルモン値も完治基準を満たすことができました。

30歳代男性、下垂体腺腫

 このタイプはいわゆる下垂体卒中と呼ばれるものであり、下垂体腺腫が出血して急激に体積が増加したために発症しました。可及的速やかに手術を行い、腫瘍は全摘出し、視野障害も改善することができました。

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専門の担当医師
講師 奥田 武司