耳疾患
めまいは様々な原因で起こる症状です。内耳(半規管、耳石器)の障害による内耳性(末梢性)めまいと脳から生じる中枢性めまいに大きく分けられます。前者は、メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、外リンパ瘻などが代表的な疾患で、後者には、椎骨脳底動脈循環不全や脳卒中、脳変性疾患などが該当します。その他、不整脈などの循環器疾患や自律神経(起立性)調節障害、更年期障害、血圧異常(高血圧、低血圧、血圧変動)、貧血など全身的な原因で生じるめまいもあります。また、社会の複雑化に伴い、ストレスや不安など精神的な要因からも起こるめまいも最近増えてきています。
平衡機能検査や画像検査など最新の検査により、的確な診断を行います。なかには原因が確定できないめまいもあり、経過をみることも必要となります。
治療は、生活指導や薬物療法、運動療法、前庭リハビリテーション、手術療法などさまざまな治療手段を駆使して集学的に行います。
疾患により治療方針は異なりますが、基本的には、①まず薬物治療から始めます。②同時に、食事や運動、睡眠、ストレス、心理状況などの生活習慣を整えることも重要で、生活・社会活動指導を行います。③めまいが慢性化する場合には、前庭リハビリテーションや運動療法を行うことがあります。診察時に行った後に、自宅で行うホームトレーニングを継続していただきます。重症化した場合には、当科で開発したバランストレーニングを行うこともあります。④それでも治らない難治性めまいには処置や手術が適用されることがあります。メニエール病には中耳加圧療法や内リンパ嚢開放術、迷路部分(全半規管)破壊術、良性発作性頭位めまいには耳石置換法や半規管遮断術、外リンパ瘻には内耳窓閉鎖術などを行っています。疾患に応じて最適な治療法を選択します。
難聴は、音の伝わりが不良な伝音難聴と音の感じ方が悪くなる感音難聴に分類されます。前者は外耳道や鼓膜、中耳での音の伝達障害で起こり、外耳・中耳疾患が該当します。後者は内耳から聴神経、聴覚中枢に至るまでの神経障害で起こり、疾患として突然の難聴や耳鳴りが生じる突発性難聴やその他の急性感音難聴、加齢性難聴、騒音性難聴、若年発症型両側感音難聴に加え、先天性難聴、ウィルス感染性難聴などが該当します。
外耳・中耳疾患などによる伝音難聴は処置や手術治療(耳科疾患の項に記載)により聴力が改善する可能性があります。原因不明の伝音難聴に対しても、原因を確かめるために試験的な開放術を行って、必要なら聴力改善手術を行います。
急性感音難聴に対してはステロイド薬を主体とした薬物治療が行われます。重症度や合併症に応じて経口や点滴、鼓室内など投与法を選択します。小児難聴に対してはさまざまな聴力検査を行い、慎重に診断して治療方法を判断します。補聴器の導入や人工内耳による手術治療なども検討します。難治性の中等度~高度な難聴には、精密に聴力を評価したうえで、補聴器装用や人工聴覚器(骨固定型補聴器、人工中耳、人工内耳)手術を検討します。
慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎、耳硬化症、耳小骨奇形、顔面神経麻痺など難治性の耳科疾患を主に診療しています。
慢性中耳炎に対しては、薬物による内服や点耳療法が主体になりますが、それでも治らない場合には、鼓膜穿孔の閉鎖や耳漏・感染予防、聴力改善を目的にして手術治療(鼓室形成術)を行います。
真珠腫性中耳炎は、真珠腫という塊が耳の周囲に広がって骨を破壊していく疾患です。放置しておくと、顔面神経麻痺や髄膜炎、味覚障害、めまい、難聴などの重篤な合併症を引き起こす危険性があるので、基本的に手術治療が勧められます。真珠腫を完全に摘出して、新しい鼓膜や骨を再建する手術(鼓室形成術、乳突削開術)を行っています。真珠腫には再発する特徴があるので、その可能性が高い場合には2回に分けて手術が行われることがあります。再発を繰り返す再形成型の真珠腫には再発予防を工夫する手法を用いています。
耳硬化症は、耳小骨のひとつ(アブミ骨)が硬くなる病気で、音が伝わらなくなり難聴を進行させます。硬く動かなくなったアブミ骨の代わりに人工代用材料を用いて音が伝わるようにして聴力を改善させる手術を行っています。
顔面神経麻痺に対しては、まずステロイド薬や抗ウィルス薬を主体とした薬物治療が行われますが、治らない場合には病気の進み具合からよいタイミングを考えて手術治療(顔面神経減荷術)を行っています。
このように病気によっていろいろな治療方法があります。手術をしなくても治るのか、それとも手術をした方がよいのか最新の検査を行って正確に診断します。そして、手術が必要な場合には、どのような方式がよいのか最善の手術法を考えます。通常7-10日の入院期間が必要になりますが、病気によっては短い期間でも対応できますのでご相談下さい。
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